この年末も「財務=献金」に邁進 旧統一教会解散命令請求で揺らぐ創価学会

大山友樹

10月13日、文部科学省がようやく世界平和統一家庭連合(以下・統一教会)に対する宗教法人の解散命令を東京地裁に請求した。

2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに表面化した統一教会と自民党との癒着関係や、高額献金・霊感商法などの反社会的・反人権的行為の数々。厳しい社会的批判を受けた岸田文雄首相(自民党総裁)は、蜜月関係にあった統一教会との関係を絶つことや、オウム真理教事件を契機に宗教法人法に加えられた「報告徴収・質問権」を初めて行使することを表明したことから、宗教法人を所管する文科省・文化庁は、昨年11月から今年7月にかけて7回にわたって質問権を行使。約5千点の証拠を集めるとともに、高額献金した元信者や、親が信者だったいわゆる「宗教2世」ら170人余からの聞き取り調査を実施した。

その結果、統一教会は自由な意思を阻害して不安や困惑に陥れる勧誘活動を、遅くとも1980年頃から続けており、被害者は約1550人、被害額も204億円にのぼるとして、文科省は宗教法人法81条の解散事由の要件である「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」を続けてきたことの、「組織性・悪質性・継続性」が立証できると判断し、解散命令請求に踏み切った。

これに対して統一教会側は、文科省が解散命令請求を行なうことを決めた10月12日、教団のホームページに「偏った情報に基づいて、政府がこのような重大な決断を下したことは痛恨の極み」との見解を発表。16日に教団本部で開いた記者会見でも今後は裁判で争っていく姿勢を明らかにした。

法令違反を理由にして裁判所が宗教法人の解散命令を決定した事例は、過去に地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教と、霊視商法詐欺事件で幹部らが摘発され、有罪となった明覚寺(和歌山県)の2例のみであり、刑事訴追のない民法の違法行為や不法行為に基づく解散命令請求は統一教会が初めてとなる。

解散命令を裁判所が認めれば、統一教会の宗教法人格は取り消しとなり、税制上の優遇措置もなくなる。だが、統一教会側が強く反発し、裁判所で徹底的に争う姿勢を見せていることから、審議の長期化が予想されている。

岸田政権が、物価高と円安に象徴される経済失政や軍拡、マイナ保険証やインボイス制度導入の混乱などへの国民の反発は強く、支持率低下に悩まされていただけに、統一教会に対する解散命令請求を政権浮揚カードとして利用したかったのは明らかだ。ところが、マスコミの10月内閣支持率では毎日が前月と同じ25%、政権寄りの読売・産経でも過去最低を記録したように、解散命令請求は岸田政権の切り札とはなりえなかった。

それは、とりもなおさずこのことが、さして社会的注目を集めなかったということも意味する。それだけに、岸田首相の思惑とは裏腹に、政権内にはこれに胸をなでおろし安堵している宗教的政治勢力が内在する。

「公明党・創価学会バンザイ国家」

そのことを示唆するのが、解散命令当日夜に放送されたABEMAの「Abema Prime」での、2ちゃんねる創設者でユーチューバーのひろゆき(西村博之)氏のコメントだ。

同番組でひろゆき氏は、「統一教会がいろいろ問題になった後に、名前を変えるのを許可したりとか、選挙運動に対して統一教会がずっと自民党を助けてたよね、みたいなのは多分うやむやになったまま、何事もなかったかのように自民党政治がそのまま続くんだろうな…という気もしてる」と、統一教会への解散命令請求がなされたものの、宗教と政治の癒着追及がなおざりになっていることを指摘した後に、次のように発言した。

「ちょっと気になるのは、選挙に強い統一教会というところが消滅したとする。でも選挙運動って使える金額も決まってるので、そうなると無償で働いてくれる信者を大量に抱えてる方が強いっていうのは明確じゃないですか」

「要するに公明党のライバルの宗教がどんどん減ってきました、結果として公明党が与党のままどんどん肥え太ります、っていう公明党・創価学会バンザイ国家に向かっちゃってるのも、それはそれでどうなの?と思う」

この発言は、一般的な日本の国民・有権者の多くが持っている「統一教会が悪いのは当然として、では創価学会はどうなのか?」という認識、宗教と政治の歪んだ関係が放置されていることへの根強い不信感を表象している。

この点に関して興味深いやり取りが2022年9月3日放送のテレビ朝日系「朝まで生テレビ~政界激震!旧統一教会と日本の政治~」であった。司会の田原総一朗氏が、創価大学OBで弁護士の公明党・國重徹衆院議員に、「統一教会と創価学会はどこが違うんだ? 証明してください」と質問したくだりである。

これに対して国重氏は、「政治と宗教一般の問題ではなく、社会的トラブルを多く繰り返している団体と政党政治家との関係の問題。ここはしっかりしておかないとミスリードする」と答えたが、論点のずれた回答に田原氏が「具体的に統一教会と創価学会はどこが違うのか説明して」と再質問。すると國重氏は「統一教会は霊感商法とか法外な寄付を要求したりとか、不法行為・違法行為を繰り返していますけど、創価学会はいっさいありません」と明言した。

國重氏の主張に基づくならば、統一教会と創価学会の違いは、違法行為・不法行為を繰り返す反社会的宗教団体と、違法行為・不法行為のいっさいないまともな宗教団体ということであり、創価学会の集金・集票活動は許容されるということなのだろうが、この主張で国民・有権者が納得するとはとうてい思えない。というのも、過去に創価学会は、言論出版妨害に盗聴事件、名誉棄損・選挙違反とさまざまな違法行為・不法行為・反社会的行為を繰り返してきた“実績”があるからだ。

特に日本共産党・宮本委員長宅盗聴事件の損害賠償請求訴訟(刑事事件としては時効だったため共産党が民事で提訴)の高裁判決では、創価学会の北条浩4代会長が関与した組織的犯行であることが認定され、確定している。また日蓮正宗僧侶に対する名誉棄損事件では、秋谷栄之助5代会長と、現在の原田稔6代会長の不法行為責任が東京地裁判決で認定され、同判決は確定している。

4代・5代・6代会長がいずれも違法行為・不法行為を裁判所で認定されていることを弁護士でもある國重氏は知らないのだろうか。知っていながら創価学会には違法行為・不法行為は「いっさいない」と発言したのであれば、これは食言ということになる。

さらに創価学会には暴力団との密接な関係に加え、ルノワール疑惑(1989年)や株式の損失補填(1991年)、国税庁の税務調査妨害(1990~92年)などのさまざまな金がらみのスキャンダル、そして任意とはいうものの高額献金批判もある。にもかかわらず創価学会は、2023年も12月に納金期間を迎える「財務」という集金活動に組織を挙げて取り組んでいる。

統一教会が高額献金を問題視されて宗教法人の解散命令が請求されるまさにその時に、創価学会は、「いよいよ財務の申し込みが始まりました。丁寧な推進を何とぞ、よろしくお願いいたします。(中略)世界広布を進める創価学会を守り支える真心の財務に、大福徳が積まれることは間違いありません」(聖教新聞9月2日付の長谷川重夫理事長発言)と、宗教的アピールを繰り返して財務納金を煽りに煽っているのだ。

 

かたや高額献金を根拠に解散命令請求、かたや大手を振って金集めと、その落差はあまりに大きい。「ガン」と揶揄されても抗議できない学会の内情とはいうものの、創価学会の内情も決して平穏無事、一枚岩というわけではない。2022年12月に成立した献金規制新法に、いわゆる「マインドコントロール」に基づく献金強要が要件として含まれなかったことや、旧ジャニーズ事務所ならぬ創価学会に忖度する大手メディアのおかげで、統一教会への批判の矛先が自らに向かなかったことに胸をなでおろしているのが偽らざる実態といえよう。

創立100周年の2030年を目標として、組織の拡大・強化を図る創価学会でも、少子高齢化の波は容赦なく押し寄せており、唯一のカリスマといえる池田大作名誉会長の死による求心力の低下と相俟って組織力は右肩下がりを続けている。加えて統一教会問題を契機に創価学会に対する世間の目は厳しさを増しており、上がり目はない。

具体的には2005年の郵政選挙といわれた衆院選で、898万票を獲得した公明党の国政選挙比例区票は、2022年参院選では618万票まで減少している。また、地方議会の公明党議席数も、2003年統一地方選では2121だったのに対し、2023年4月の統一地方選の獲得議席は1543と激減している。

そうした組織実態に関し、昨今、自身の体験した問題点について情報発信を続けているのが、失脚した正木正明前理事長の子息である正木伸城氏だ。彼は次のように指摘している。〈私がリーダーだったある地域では、布教に熱心な信者は青年世代で1割を切っていた。若い世代に限らず学会全体で見たとしても、実は、熱心に活動する学会員の方がマイノリティーなのである。学会に所属していても、無関心だったり、ネガティブな考えを持っていたりという理由から、つかず離れずの関係を維持している層の方がはるかに多い。その傾向は、特に学会2世、3世、4世になるにつれて、顕著にみられるのだ〉(週刊新潮2022年11月24日号)

その創価学会を統率する原田会長は2023年11月に任期切れを迎えた。82歳の原田氏は前年7月の参院選後には体調を崩したと伝えられ、9月にはコロナに罹患するなど、池田大作名誉会長同様、後期高齢者の原田氏の健康状態にも不安が付きまとう。2006年、会長に就任した原田氏は、すでに在職17年。同25年の秋谷5代会長には及ばないものの、池田3代会長の19年に迫らんとしているだけに、高齢と健康不安、そして長期にわたる在職期間を考慮するならば、今期で退任する可能性も否定できなかった。

「その場合の後継会長候補としては、谷川佳樹主任副会長が有力視され、対抗馬として北条4代会長の女婿である萩本直樹総東京長、池田名誉会長の長男である池田博正主任副会長の名前などが挙げられていますが、一番若い谷川氏でも67歳で、萩本・池田両氏は70歳といずれも高齢。一方、抜本的な若返り、世代交代を図る上でのダークホースとして、原田会長の長男で51歳の原田星一郎教学部長の名前も挙がっています。しかし、大作氏が世襲を否定し子息を会長にしなかったにもかかわらず、弟子筋の原田家で世襲を図ることには、創価学会内部でも抵抗が大きいものと見られています」(創価学会に詳しいジャーナリスト)

そうした諸般の事情から、衆院解散総選挙も近い中での新会長は、組織運営上、不安も大きいことから、結局は原田会長の続投に落ち着いている。政治的には自民党の「下駄の雪」路線を継続することとなろう。

もっともそうであるからこそ、昨年末に閣議決定された敵基地攻撃能力の保有を含む安保関連3文書への対応で、「平和の党」を標榜する専守防衛の立場から慎重姿勢を見せたことについて、9月に麻生太郎自民党副総裁が「公明党・創価学会はガン」と、その存立の理念を否定する暴言を吐いても、抗議も反論もしないのである。

抜本的な世代交代もできず、反戦・平和の宗教的・政治的理念の失墜に晒されるままに会員数や組織力を減少させている創価学会の将来は暗い。来る衆院選でも創価学会・公明党の敗北は確実視されている。統一教会の解散命令請求の渦中に金集めに勤しむのは、集められる時にとの危機感の裏返しなのだ。宗教的・政治的に漂流する創価学会が、池田氏の死去とともに衰退への道をたどることは火を見るよりも明らかだろう。

(月刊「紙の爆弾」2023年12月号より)

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大山友樹 大山友樹

ジャーナリスト。世界の宗教に精通し、政治とカルト問題にも踏み込む。

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