マッド・アマノ 裏から世界を見てみよう 第116回 台湾有事と沖縄「大テーマパーク」
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天と地の「17」
「裏金」「キックバック」に検察のメスが入り、自民党安倍派(清和会)の議員が次々と“無役”を余儀なくされ、自民党に大きなダメージを与えている。
昨年5月の広島サミットをピークに急落した岸田文雄政権の支持率は年末に17%(時事通信)を記録した。だが、軽々に「17」という数字を使わないでいただきたい。大谷選手の背番号なのだから。
まっ、これは冗談だが、低支持率でも岸田首相が気落ちしているように見えないことと関係があるかもしれない。おそらく、昨年12月8日のそれは、岸田首相にとって一筋の光明だったのだろう。「大谷選手、ドジャース移籍」のニュースだ。報奨金の97%を10年後に先延ばしして受領するという契約だそうだ。
大谷選手は記者会見でその理由について、ドジャースがほかの選手を獲得するための資金に充当して、優勝を勝ち取れる強いチーム作りに寄与したい、と語っている。同時に、球団オーナーをはじめ全ての選手が結束、ファンが一丸となってドジャースを支援し、ワールドシリーズ優勝を勝ち取るのだ、と発信した。
岸田首相は大谷選手のメッセージをどう捉えただろうか? 我が国の政界は泥舟状態、希望も期待もない。そんな中で大谷選手のメッセージは、日本のみならず世界中の人々に「一致団結」の尊さを知らしめたことになる。といっても、岸田首相の下での団結など、誰もが「ノー」だろう。
さて、今年3月20日・21日のドジャースとパドレスの開幕戦(MLBワールド・ツアー)は、韓国・ソウルのドーム球場で行なわれる。ドジャースは巨額の移籍料も支払って大谷選手を獲得したのだから、本拠地のドジャースタジアムでお披露目した方がよかったのでは? 来年は大谷選手の古巣・日本ハムファイターズの「エスコンフィールド」でやるつもりかも。
韓国人初のメジャーリーガーが活躍したことで、韓国ではドジャース人気が高いという。それでも、なぜよりによって今年なのか。昨年7月に発表された「ソウル開幕戦」には、政治的な思惑も絡んでいるのでは? 8月18日、ホワイトハウス近郊のバイデン大統領公式別荘キャンプ・デービッドで開催された「米日韓」首脳会談だ。
中国の東アジアに対する強硬姿勢で、アメリカ政府のアジアへの関心は高まっている。ついこの間まで、日本と韓国は“戦後最悪”の関係といわれていた。第2次世界大戦の敗戦国である日本が、韓国と軍事産業で力を合わせたなら、アメリカの脅威となることは自明の理だ。だからアメリカは両国を“付かず離れず”に仕向けてきた。
ところが2年前に韓国で尹錫悦政権が誕生してからは、日韓関係が急激に改善しているとされる。これがアメリカの主導であることを疑う人はいないだろう。
さらに背後には、DS(ディープステート)の姿が見てとれる。イスラエルとハマスの紛争の次は、台湾有事や朝鮮半島有事が取りざたされる。昔から言われている「戦争ほど儲かる商売はない」ということだ。
「台湾有事」は現実化するか?
中国から日本に帰化した政治評論家の石平氏は、中国の台湾侵攻は当面延期されたと推測している。それでも、中国と台湾の情報収集作戦は、1月13日の台湾総統選を前に、さらに熾烈を極めた。台湾の軍事機密を密かに中国に売り渡して私腹を肥やす退役軍人や、中国の空母に軍用ヘリコプターを使用して亡命しようとした現役の陸軍大佐が台湾当局に逮捕され、6カ月から20年の刑を言い渡されたなど、驚くべき事件が続発。
一方の中国では、経済崩壊の危険が高まるとともに、習近平国家主席がますます独裁を強めている。GDPの3割が不動産関連業だというから、昨今表面化しつつあるバブル崩壊は一大事だ。
大学を出ても就職がままならないということで、海外に脱出する若者が急増しているといわれる。さらに、一時帰国した若者が、入国の際にパスポートを取り上げられるケースが多発しており、再出国ができず困惑しているらしい。
中国でビジネスを展開する台湾人経営者は約100万人。彼らの立場は微妙だ。「台湾有事」の煽りに乗るのは危険でも、中国の動向から目を離すわけにはいかないだろう。
大テーマパーク「ジャングリア」
日本において、「台湾有事」の最前線に立たされるのが沖縄だ。その本島北部の今帰仁村に新たなテーマパークが来年夏に開業する。その名は「JUNGRIA(ジャングリア)」。
企画・運営会社は「株式会社刀」と地元企業が出資した「ジャパンエンターテイメント」。「刀」の森岡毅社長は大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の経営立て直しを主導し、数々のテーマパークを手掛けてきた。
「ジャングリア」のコンセプトは「パワーバカンス」。大自然を活用し、都会では味わえない「興奮と贅沢」を提供するという。入口ではやんばるの生命力を象徴する巨大樹が出迎える。パーク内の数十のアトラクションは、たとえば気球で広大なジャングルやエメラルドグリーンの海などの大自然を360度で体感できる遊覧体験。大型の装甲車に乗り込んで、本物のジャングルに冒険に出るサファリライドは、あたかもスピルバーグ監督の映画「ジュラシック・パーク」そのものだ。
開業時のメインターゲットは日本人観光客だというものの、広くアジア圏から訪れる観光客を呼び込めるかが、カギとならざるをえないだろう。
言うまでもなく沖縄といえば、在日米軍基地の存在を抜きにしては考えられない。その位置は中央から南部が主であるものの、北部にもヘリポート訓練場や保養地のオクマビーチがある。
沖縄には31の米軍施設があり、その広さは県の総面積の約8%、沖縄本島に限定すれば約15%を占有している。沖縄に70%も集中している米軍基地は、他県に分散すべきだと思うが、日米両政府がそれを許さないのだ。
軍用機の騒音や墜落事故などの大きな問題を県が抱えていることは言うまでもない。嘉手納基地や普天間基地のように、ほとんど1日中離着陸がなされるところでは特に深刻だ。戦闘機やヘリコプターによる事故も多く、誤って照明弾や燃料補助タンクを落とすこともある。住民が「沖縄の空は雨ではなく物が降ってくる」と揶揄するほど。
さらに、米兵による事故や犯罪も深刻だ。沖縄復帰後50年間で、在沖米軍関係者の検挙件数は、殺人・婦女暴行など凶悪犯罪も含め6000件を超えている。しかも、日米地位協定があるため、容疑者が裁判を逃れ、密かに本国に送還されてしまうケースもある。
加えて問題なのは、米軍基地に起因する土壌汚染。有害物質を含む汚泥や廃油の投棄、埋設されたドラム缶等だ。これまでに検出された汚染物質にはPCB・カドミウム・六価クロム等がある。沖縄県が水質調査を実施しているものの、基地内への立ち入り制限のため阻害される状況にある。
米軍基地で周辺集落の交通が遮断されているため、開発も無秩序になりやすい、との指摘もある。「ジャングリア」がそんな状況を変えられるのか、注目したい。
さて、琉球王国が琉球藩として日本に組み込まれたのは1872年。その後、明治政府の「琉球処分」で沖縄県となった。北は奄美大島から南は八重山列島までの琉球諸島には、約3万2千年前から人類が生活していたことがわかっている。
中国をはじめ日本・朝鮮・東南アジア諸国との外交・貿易を通して海洋王国へと発展してきた。首里城はまさにその中心だったが、1609年に薩摩藩が占拠。それ以降は、薩摩と徳川幕府の実質的な従属国だった。
太平洋戦争で破壊された琉球王国のグスク(防災施設)と関連遺産群が世界遺産に登録されたのは2000年。首里城は2019年の火災により焼失したものの、再来年の復元を目指している。地下遺構が残されているため、世界遺産の価値は以前と変わらない。「ジャングリア」を見たついでに、琉球の歴史に触れるべきだ。
(月刊「紙の爆弾」2024年2月号より)
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日本では数少ないパロディスト(風刺アーティスト)の一人。小泉政権の自民党(2005年参議院選)ポスターを茶化したことに対して安倍晋三幹事長(当時)から内容証明付きの「通告書」が送付され、恫喝を受けた。以後、安倍政権の言論弾圧は目に余るものがあることは周知の通り。風刺による権力批判の手を緩めずパロディの毒饅頭を作り続ける意志は固い。