【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/2024年2月16日 (金)  異様な攻撃はいつも正義の証明

植草一秀

静岡県の川勝平太知事に対する不自然な攻撃が続いている。

背景は言うまでもない。

川勝平太知事がリニア新幹線の工事進捗にブレーキをかけていること。

リニアは巨大利権。

工事そのものも巨大利権である。

しかし、それだけではない。

リニアは巨大な電力を消費する。

リニアを実現することは電力消費量の激増を意味し、そのことは原発の稼働推進を意味する。

原発を推進することとリニア建設を強行することとが表裏の関係にあると見なすべきである。

安倍内閣はリニア建設に財政投融資資金を3兆円投下することを決めた。

安倍首相とJR東海の葛西敬之氏の個人的関係がもたらした政治の私物化事案と捉えることができる。

リニアは仮に建設するとしても、私企業であるJR東海の責任において遂行されるべきもの。

国民の税金を投下するべきものでない。

財投資金を活用するなら、国会で徹底的な論議が必要だった。

問題は、リニア建設に対する反対論が極めて強いこと。

リニア建設の妥当性を判定する基準は、

1.経済性
2.技術への信頼性
3.環境適合性

の三つ。

三つの基準に照らしたとき、リニア建設に合理性がないとの見解が有力である。

日本は人口減少時代に移行している。

リモートワークの発達で、遠隔地でも会議や面談が十分に行えるようになった。

東京と名古屋の移動時間を多少短縮することにどれだけの意味があるのか。

経済成長がなくなった時代、新たなライフスタイルの確立が求められている。

リニアの利用が増えれば在来新幹線の利用が減る。

リニア開通で新たな需要が生まれる余地は極めて小さい。

巨大な債務の返済に不安が生じることになる。

財投資金を利用しているということは、市場金利との差に当たる部分を国民の税金で負担することを意味する。

最大の問題は日本が世界最大の地震国であること。

世界で発生する規模の大きな地震の2割近くが日本で発生している。

日本は世界一の地震大国である。

1995年に阪神淡路大震災、2011年に東日本大震災、2024年に能登半島地震が発生している。

日本列島は4つのプレートが接する地震の巣の上に立地している。

本州の中央部を分断するフォッサマグナと呼ばれる巨大断層が南北に走る。

リニア経路の86%が地中を通過するトンネルである。

現行新幹線のトンネルの比率は17%。

暗闇のなかを通過するリニアは景観を楽しむこともできない。

巨大地震が発生して断層のズレが生じれば壊滅的な事故を引き起こすことが懸念される。

技術に対する信頼性が明らかに不足している。

環境への負荷も極めて大きい。

トンネル掘削による水への影響は深刻だ。

昼閒たかし氏による論考
「リニア工事見通し立たず
地元民が懸念する「丹那トンネルの二の舞」という現実、
水源枯渇の歴史と川勝知事の正当性とは」

がネットに掲載されたが、現在は削除されている。

東海道本線の熱海駅と函南駅の間にある丹那トンネルの建設が、地域の水源を枯渇させ、産業を破壊するという弊害ももたらしたという事実があることを明らかにしている。
リニア建設においても同じ排水方法が使われる可能性が高いため、「大井川の水がなくなる」ことが深刻に懸念されている。

リニア建設は中止が妥当。

リニア建設にブレーキをかける川勝知事を日本の主権者国民が支援する必要がある。

※なお、本記事は、植草一秀の『知られざる真実』2024年2月16日 (金)

異様な攻撃はいつも正義の証明:からの転載であることをお断りします。

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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