岡口基一判事「罷免」はスターリン時代の茶番判決だ 階猛主任裁判員(立民)起案の判決文は駄文(下)

浅野健一

岡口基一判事「罷免」はスターリン時代の茶番判決だ 階猛主任裁判員(立民)起案の判決文は駄文(上)はこちら

ここで、それまで精緻に展開されてきた判決のトーンが突然変わり、「別人が書いたようだった」(野間弁護士)。殺人事件投稿について、「遺族を傷つける意図」を否定しながら、民事の東京地裁判決を引用して「不法行為が成立する違法なもの」と指摘。犬事件投稿についても、「社会的評価を不当におとしめたとも言えない」としながら、全体的に見れば当事者を傷つけたことや、他の表現を選び得たとして、非行に当たると認定した。

判決はさらに、「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」のいう「著しい」の定義について、「国民の信託に対する背反」が認められるかどうかであると判示。その上で、刑事事件投稿の行為群について、「少数者の基本的人権を保障する『憲法の番人』の役割からはかけ離れたもの」だとして、国民の信託に反すると認定した。

判決は、「国民の尊敬、信頼に足る品位を辱める行為」が国民の信託に背く程度になった場合、殺人事件に関する投稿などの一部がそれにあたると認定した。

判決は、犯罪被害者支援法を引いて、「(岡口氏が)傷つけるつもりはなかったとしても、結果として感情を傷つけた」と繰り返し述べて、遺族らの心情に重きを置く結果となった。
判決では、このほか弁護側から出た主張をことごとく退けた。

判決は「結論」で、「裁判員による評議等を慎重に行ったところ、様々な観点から真摯な議論や意見提出がなされ、例えば、特定の学説に依拠した上で、事実関係の一体性を認めるべきではない、被訴追者の心療的特徴やその反省に基づく再任辞退を考慮すれば、罷免には一定の疑問が残る等の少数意見があった」と述べた。その上で「裁判員の3分の2以上の多数意見により、罷免とすることとし、主文のとおり判決する」と宣告した。

裁判所事務局は記者団に判決要旨(44頁)を配布した。判決に関与した裁判員のメンバーは次の12人(欠員2)だった。敬称略。

<裁判員:船田元(裁判長、衆・自民)、松山政司(第一代理裁判長、参・自民)、階猛(第二代理裁判長、衆・立憲)、山本有二(衆・自民)、葉梨康弘 (衆・自民)、杉本和巳(維教)、北側一雄(公明)、福岡資麿(参・自民)森まさこ(参・自民)、小西洋之(参・立憲)、伊藤孝江(参・公明)、片山大介(参・維教)>

田中和徳(衆・自民)と福岡資麿(参・自民)が欠席した。
https://www.dangai.go.jp/info/info2.html
https://www.sotsui.go.jp/composition/index.html

判決時の訴追委員会委員長は田村憲久氏(衆院、自民)だった。

 

【写真16 弾劾裁判所が記者団に交付した判決要旨・スキャン10枚】

船田裁判長と階猛(しな たけし)主任裁判員(第二代理裁判長=衆・立憲)は裁判長室で記者会見した。船田氏は「SNSという新しい手段で裁判官が発信し、遺族にダメージを与えた特殊なケースだ。問われたのが刑事罰を科される行為ではないことなどから議論が難航したとしたものの、結論はどこに出しても問題がない、自信がある結論だと理解している」と言い切った。

階氏は「裁判官は憲法の番人で、権力の暴走を止めるための表現の自由は守らねばならない」と述べた上で、「SNSの中傷では自殺する人もいる。被害者を傷つけ、悪質性が高いと認定した」と述べた。

私は➀賛否の票数、少数意見の内容を教えてほしい②司法に対する国民の信頼を害したかの認定は、「その時々の国会議員の裁判員の良識に依存する」「時の弾劾裁判所の裁量に属する」とし、制度はそれを想定しているというが本当か③国民の信頼を害したかを判断する一定の基準を示すべきではないか―を聞いた。

船田氏は「問題が百出した。投票数の内訳は公表できないが、最終的に罷免に賛同したのは(罷免に必要な)3分の2(裁判官弾劾法31条2項)のギリギリだったということは申し上げられる」と答えた。また、「全員一致が望ましいが、著しい非行には当たらないとする見解などがあり、意見がまとまらず、評決に委ねた」と答えた。

今回は裁判員12人での評議だったため、8人以上が賛成したことになる。「ギリギリ」での可決ということは、反対票が4人だったと思われる。弾劾裁判では党議拘束はないが、12人のうち、自民6人、公明2人で計8人を占めている。

私は「最高裁は少数意見を表明した裁判官名を明らかにして、少数意見を公表している。弾劾裁判でもそうあるべきではないか」と質問したが、船田氏は「そうする規定がない」と拒否した。船田氏は、弁護士でもある主任裁判員の階氏が判決文を主に起案したと明かした。

その階氏は「著しい非行」「国民の信託に背反」とした基準、理由が判決に書かれていないことについて、「理由は判決文に書いてある、きちんと判決文を読んだ上で質問してほしい」「判決理由のどこに問題があるのか」と私に逆質問した。

私は「法廷で判決読み上げを聞いた上で聞いている。国民の裁判官への信頼を害したという判断に論理の飛躍がある。判断のガイドラインも示されていなから聞いている」と言い返した。それでも、階氏は「根拠が不明とあなたが判断する根拠を示してほしい。後で質問してほしい」と繰り返した。階氏に質問書を送ろうと思う。

階氏は会見後「14人裁判員がいるが、結局、船田さんと私で判決を書いた」と話した。他の12人の裁判員は怒るべきだ。

岡口氏の弁護団の5人が3日夜、司法記者クラブで会見した。野間弁護士は「何となくの感情や感情に強く引っ張られている。理由らしい理由がない。悪意がなくても、相手の感情を害すれば罷免という前例ができてしまったので、裁判官がSNSなどで発信することについての萎縮効果は大きくなるだろう」とコメントした。

野間弁護士は5日私の取材に、「『著しく失うべき非行』と結論づけたが、その基準を明確に示していない。動機や目的に悪質性がないことが認定されたにも関わらず、『著しい』とした理由がほとんど書かれていない。弁護士会の除名処分との均衡を考えるべきだ。『先例との均衡を考えるべき』という弁護側からの問いかけは実質的に無視され検討されていない。不利益処分における適正手続のための基本的なルールを無視した判決理由は1930年代の『スターリン時代のようだ』と言わざるを得ない」と述べた。


【写真17 司法記者クラブで会見する弁護団】


【写真18 記者会見で不当判決と指摘する野間弁護士】

児玉晃一弁護士(マイルストーン総合法律事務所)は会見で、「この弾劾裁判では、不公正な行為をしたとして忌避申立をされた山下貴司裁判員が、裁判員職を辞任したが、議員辞職まではしていない。それで責任を果たしたとされているのだ。裁判官としての職を続けないこととした岡口さんとどこが違うのか」と強調した。

また、「裁判員と訴追委員の中には、裏金を受け取ったとされる方々もいるが、せいぜい、離党勧告がされる程度と思われる。岡口さんがしたことに比べても、遙かに国民の信頼を裏切る行為をした議員たちは、議員辞職をすることもなければ、まして、5年間の立候補ができないという措置を取られることはない」と話した。


【写真19 会見で裁判員に裏金議員がいると述べた児玉弁護士】

児玉氏が言及した山下裁判員(衆・自民、元法相)の問題発言は、松宮孝明・立命館大学大学院法務研究科特任教授が証言した第10回 公判(23年10月25日)であった。山下氏は証拠請求されていない書籍の一部を読み上げて、弁護側の主尋問でその部分に触れないのはなぜか、などと問いただした。弁護側が「今の質問は証拠にもなっていない記述を取り上げている」と異議を申し立て、裁判長が質問を変えるよう指示した。

弁護側は、中立公平であるべき裁判員として不適切だとして忌避を申し立てた。裁判所が忌避申し立てを審理中の12月14日に裁判員を辞職した。野間弁護士は「忌避が認められる前に辞めたということだろう」と話した。

児玉氏が指摘するように、弾劾裁判所の裁判員・訴追委員(予備員を含む)に自民党の裏金疑獄議員が6人(森、柴山、越智各氏ら)もいる。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/318704


【写真19 自民党が39人処分と報じる5日の新聞各紙に裏金議員リスト】

新藤・元訴追委員会委員長(茂木派)も茂木派の280万の裏金疑惑で、1月、茂木敏光自民幹事長と共に、上脇博之神戸学院大学教授から東京地検特捜部に刑事告発されている。

私はこの裁判のカギを握っているのが元郵政・総務官僚の小西洋之裁判員(参・立憲)だと見ていた。3日の判決が「結論」で述べた「罷免には一定の疑問が残る」という少数意見を出したのは小西氏ではないかと思っていた。その小西氏が4日、自ら「X」で少数意見を提出したと明らかにした。

[熟考の末、階主任裁判員が担当の多数意見の法解釈等の深刻な過ちなどを指摘しそれらを論駁する反対意見を提出しました。弾劾裁判は、被訴追者に刑罰にも相当するような過酷な制裁を課す制度であるとともに、三権分立の究極の例外として、司法権の萎縮の防止や政治家(国会議員)による濫用の危険の徹底排除の運用が必須とされるものです。
今回の裁判がこれらに足りるものなのかどうか、判決文の分析評価を始めとして、国民の皆さんの厳しい批判と監視が求められます。](抜粋)
https://twitter.com/konishihir…/status/1775782019785794000

階氏が書いたとされる多数意見の判決文は、憲法、刑法の専門家が証言した「罷免は不当」との主張にまったく答えていない。東京新聞は「岡口判事を罷免 制裁が苛烈に過ぎる」と題した社説で、「岡口氏の人格を裁いていなかったか」「差別発言さえ不問に付す政治の世界の人々が、一裁判官の表現の過ちを容赦なく叩き、法曹の資格まで奪う。裁判官がより政治の力に萎縮し、及び腰になっては三権分立さえも危うくなる」と論じた。

また、琉球新報は5日の社説で、「審理が十分であったかも含め、検証を進める必要がある」と主張した。小西氏や新聞社説が提言するように、「階主任裁判員が担当の多数意見の法解釈多数意見の法解釈」について社会的議論が必要だ。弾劾裁判所の罷免判決を弾劾、糾弾する人民裁判、民衆法廷を開くべきだ。

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

★ISF(独立言論フォーラム)「市民記者」募集のお知らせ:来たれ!真実探究&戦争廃絶の志のある仲間たち

☆ISF公開シンポジウム:小沢事件とは何であったのか ~司法とメディアの共犯関係を問う~

☆ISF主催トーク茶話会:孫崎享さんを囲んでのトーク茶話会のご案内

☆ISF主催トーク茶話会:吉田敏浩さんを囲んでのトーク茶話会のご案内

 

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」

 

浅野健一 浅野健一

1948年、香川県高松市に生まれる。1972年、慶應義塾大学経済学部を卒業、共同通信社入社。1984年『犯罪報道の犯罪』を出版。89~92年、ジャカルタ支局長、スハルト政権を批判したため国外追放された。94年退社し、同年から同志社大学大学院メディア学専攻博士課程教授。2014年3月に定年退職。「人権と報道・連絡会」代表世話人。主著として、『犯罪報道の犯罪』(学陽書房、講談社文庫)、『客観報道』(筑摩書房)、『出国命令』(日本評論社)、『天皇の記者たち』、『戦争報道の犯罪』、『記者クラブ解体新書』、『冤罪とジャーナリズムの危機 浅野健一ゼミin西宮』、『安倍政権・言論弾圧の犯罪』がある。

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ