【連載】横田一の直撃取材レポート

東京15区補選 “裏金自民”アシストの小池知事(データマックス2024.4.8)

横田一

写真:玉木雄一郎国民民主党代表

 

岸田政権の命運を左右する衆院3補選の1つ、「東京15区補選(4月16日告示・28日投開票)」の構図がほぼ固まった。自民党が独自候補擁立を断念、小池百合子都知事が顧問の都民ファーストの会擁立の乙武洋匡氏に相乗り、裏金問題追及の野党系候補と対決するというものだ。

小池知事が窮地の自民党に助け舟を出すのは、昨年12月の江東区長選や1月の八王子市長選と瓜2つ。いずれも小池知事は自民支援候補を応援、自民敗北回避に貢献した。八王子が地盤なのに裏金問題で陣頭指揮ができなかった萩生田光一・前政調会長は小池知事に感謝、自民への復党を後押しする考えも示したことが報じられた。

「3匹目のどじょう」を画策する小池知事の魂胆は見え見えだ。さらに自民党に恩を売って、国政転身と復党もはたして女性初の総理を目指す道筋を模索。「不人気な岸田首相では選挙は戦えない」という与党議員心理をくすぐり、「古い自民党をぶっ壊す!」と叫ぶ自民再生の救世主役として名乗り出るシナリオが透けてみえるのだ。

そんな“小池劇場再来”の踏み台になると見られるのが東京15区補選だ。自民の相乗り可能な乙武氏を擁立、自民の支援も受けて野党系候補に競り勝れば、自民党に恩を売ることになるのはいうまでもない。

すでに小池知事は、野党分断にも着手。国民民主党の玉木雄一郎代表に直接、「ぜひ乙武氏の応援をお願いしたい」と要請、同党内で支援の方向で最終調整をすることになったのだ。これも自民に追い風となる。

トリガー条項実現困難で自民と距離を取り始めた国民民主党は当初、独自に女性候補を擁立して立民に支援を呼び掛けていた。島根1区と長崎4区の両補選で立民予定候補への支援を表明する一方、東京15区補選ではいち早く候補を擁立、支援を立民にもちかけていたのだ。

しかし“身体検査不十分”で候補の取り下げとなった後、国民民主党は小池知事の働きかけで乙武氏支援の方向に転換、補選で自民と相乗りする可能性が急浮上したのだ。

国会で裏金問題を追及しながら補選では自民と相乗りするのは、支離滅裂な対応にしか見えない。そこで4月2日の玉木代表会見で東京15区補選について聞いてみた。

──東京15区補選ですけれども、自民党が相乗りする乙武さんを応援することは結果的に裏金自民党をアシストすることにはならないのか。あと、小池さんからどういうふうに(乙武氏支援を)頼まれたのかも合わせて聞かせください。

国民民主党代表・玉木雄一郎氏(以下、玉木) 横田さん、小池さんが好きですね。

──(小池知事から)直接、電話があったのでしょう。

玉木 はい。まず、自民党との関係については我々がいまいう立場にはありませんし、どうするのかはこれからなのでしょうが、自民党の支援を受けると選挙は不利だと思いますね、仰る通り。やはり大きな1つの争点は「政治とカネの問題」ですから、その自民党が応援する候補になってしまうと、なかなか選挙としては厳しくなってしまうのではないかとは客観的には思います。ただ、まだどのような判断を他党がするのかは決まっていないので、現時点ではコメントは差し控えたいと思います。

──自民党が(乙武予定候補を)応援したら(立民が擁立予定の)酒井さんに乗り換えるということはあるのか。(そのまま乙武氏支援で)自民党と一緒にやるのか。

玉木 仮定の質問には答えられませんが、ただ乙武氏にとっても、自民党の応援が前面に出てしまうと、プラスよりもマイナスになってしまうのではないかというのは、横田さんのおっしゃる通りだと思いますね。

──小池さんからはどういう話があったのか。「自民党に復党して女性初の総理を目指したいから(東京15区補選を)そのステップにしたい」とか、そんな意欲を感じたのか。

玉木 横田さん、小池さんが好きですね。2匹目のどじょうはないと思いますので。

──どういう内容だったのか。小池さんの(乙武氏支援要請は)。

玉木 また大きな動きがあったら横田さん、質問をされたらまた一本取れるのではないですか。

──もう報道されているではないか。維新も(小池知事を)共同代表にして(次期総選挙で自公過半数割れのときには連立入りして)首班指名で小池さんを指名すると。週刊新潮に出ていますよ。

玉木 週刊新潮は読まないので。横田さんがね、言葉を引き出して大騒ぎになるかも知れませんので、また横田さんの活躍を期待したいと思います。以上です。

玉木代表は結局、小池知事からの要請内容を詳しく語らなかったので、続いて行われた古川元久・国対委員長会見でも同じ質問をぶつけてみた。

──国会内で自民の政治とカネ、裏金問題を追及するなかで、東京15区の補選では、自民党が恐らく相乗りするであろう乙武さんを国民民主は応援すると。このちぐはぐさは問題があると感じていないのか。

古川元久氏(以下、古川) うちが党として決めているわけではないと思います。そういう話があれば、検討するという段階ですので。別に党として決めているとは承知していない。

──小池知事から直接玉木代表に連絡があって、支援依頼があって、乙武さんを推薦する可能性が高いという報道があるのですが。

古川 党のなかで別に議論はしていませんので。

──自民党と相乗りするのは問題があるという考えなのか。

古川 そもそも我が党がどうするのか決まっていないですし、それと自民党と相乗りすることはないと思います。

──小池さんが江東区長選でも八王子市長選でも自民党と同じ候補を応援して、結果的に自民党をアシストしているが、この小池さんから直接依頼を受けて玉木代表が支援の方向を検討していると。これも、「国民民主党はどっちを向いているのだ」ということで問題があるように見えるが、考えをうかがいたい。

古川 きちんと党のなかで議論をしたいと思います。

3日後の4月5日、榛葉賀津也幹事長は会見で「乙武氏を自民党が推薦した場合、国民民主党は支援しない」と明言した。自民相乗りを否定する方針を明らかにしたのだ。

同じ質問を、4月3日に東京15区補選に出馬表明をした須藤元気参院議員にも投げかけてみた。

須藤元気参院議員

──小池百合子知事についてどうご覧になっているのかと。自民党を今回アシストして江東区長選、八王子市長選と同じように裏金自民党を隠す、同じようなキーマンとして名乗り出ているかたちだと思うが、小池百合子知事についてはどう見ているのか。

須藤元気氏(以下、須藤) 小池さんはやはり影響力がある方だと感じています。しかし戦うのは小池さんではありません。やはり私は候補者として、候補者だけを見て、そして自分ができることを、ベストを尽くしたいと考えています。

──「(小池知事主導による自民相乗りの)裏金自民党隠し選挙」にもなると、見ているのか。

須藤 裏金を隠すうんぬんというよりも、それは言わなくても国民のほうが気づいていることですし、私としては裏金が逆にある意味、きっかけだったのです。これは、日本の政治を変える大きなチャンスだと思う。これは自民党にとってもチャンスだと感じているのです。「このままだとダメだ」と。無所属の僕が他党のことを「ああだ」「こうだ」というつもりはないが、それはサポーターの方も議員の方も「このままではダメだよね」とみんな思っているはずです。ですから、「これで変えていこう」というかたちになっていけばいいというふうに感じています。

酒井菜摘元区議(立民推薦)

立民は江東区長選で次点だった酒井菜摘元区議の推薦を決定。すでに候補を擁立している共産党との一本化が進むのか。江東区長選で共産党とともに酒井氏を支援したれいわ新選組の対応が注目される。小池知事の“裏金自民アシスト作戦”が成功するのか否か──候補乱立の東京15区補選から目が離せない。

【ジャーナリスト/横田 一】

 

本記事は「東京15区補選 “裏金自民”アシストの小池知事(データマックス2024.4.8)」の転載になります。

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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