前代未聞、“異様な”小池知事の三選出馬表明

横田一

 東京都知事選(7月7日投開票)への蓮舫参院議員の電撃的出馬表明(5月27日)で後れを取った小池百合子知事が6月12日、都議会本会議で三選出馬表明をした後、囲み取材に応じたが、学歴詐称関連質問がテレビ朝日のS記者に遮られて質疑応答が打ち切られるという前代未聞の異様な事態となった。

本会議終了後、都議会各派への挨拶を終えた小池知事が本庁舎との連絡通路に現れて囲み取材がスタート。
ただし質疑応答に入る前に小池知事は立ち並ぶテレビカメラを指差して「いまリアル(生中継)でやっているのはどこ?」と確認した後、幹事社役(代表質問役)のテレ朝のS記者が政策発表の時期などについて連続質問。

続いてフリーの佐藤章氏が「昨日、朝堂院大覚さんが、お世話になられた朝堂院大覚さんが──」と学歴詐称問題について質問し始めた途端、再びS記者が「すいません、代表(質問)で。知事、まずお願いします」と割り込んで佐藤氏の質問権を奪取したうえで「いつも勝負服のカラーで緑色の服を着られるが、本日はそういった服を着られていませんが、何か服に対する思いは?」と聞いたのだ。

すると、小池知事は笑顔を浮かべながら「今は公務をしっかりしておりますので、それはそれでメリハリをつけた対応をしていきたいと思っています」とまで答えて囲み取材を打ち切り、立ち去り始めたのだ。

記者団から抗議の声が挙がるなか、追いかけながら私は「カイロ大卒と書くのですか。自民党の支援を受けるのですか。萩生田さんと相談したのですか、確認団体(方式での支援)。(出生率)0.99の責任を取らないのか」などと大声を張り上げたが、小池知事は無言のまま立ち去った。

この後、質問を遮ったテレ朝のS記者への抗議が殺到。「知事と口裏を合わせて代表(質問をする記者)だけ質問させようとしていたのではないか。相談していたのではないか」「もう一回、囲み取材をやり直してください。テレ朝で質問を独占したのだから」などと問い質し、再度の囲み取材開催を求めた。

これに対してS記者は「私ももっと質問できるものだと思っていた。幹事社と相談する」と回答。そこで「今すぐ知事と交渉して、ここに連れてきてください。滅茶苦茶な会見をした責任を取ってください」と囲み取材の再設定を要望したが、実現することはなかった。小池知事が都庁を退出するときに囲み取材に応じることがよくあるが、この日は退出時会見が開かれることもなかった。
複数の報道関係者とともに午後5時から午後7時すぎまで都庁二階で出待ちをしたが、小池知事が現れることはなかったのだ。

なお囲み取材とS記者への抗議の様子は、動画配信サイトの「フランス10」で見ることができる。

また「朝堂院大覚さん」と切り出す質問に小池知事が答えなかったのも、前日(11日)の会見内容を紹介した写真週刊誌「FLASH」のネット記事を読むとよく分かる。タイトルは「『小池さんはカイロ大を卒業していない』 都知事の父を支えてきた“最後のフィクサー”都庁で『緊急会見』で語った中身」。
大阪の空調設備工事会社・ナミレイの元会長・朝堂院氏は、小池一家が破綻状態にあったときに資金援助をした大恩人。父・勇二郎氏が国政選挙に出て借金を抱えて、経営する会社も倒産して借金取りに追われているときに、家族をエジプトに逃がすのに尽力。
そのお蔭で小池知事はカイロ大学に編入、父親は料理店を始めることができたのだ(なお石井妙子著『女帝』にも朝堂院氏は登場)。

朝堂院大覚氏の会見(6月11日、都庁)の写真

そんなカイロ大学時代の小池知事をよく知る朝堂院氏が11日の会見で、カイロ大中退を断言。
学業に行き詰まって空手雑誌創刊をしたいと申し出た小池知事に400万円を用立てたことを暴露していたのだ。

そして学歴詐称疑惑について朝堂院氏が「真実を述べて、嘘を取り消し、出直してくれ」と会見で締め括るように語ったのはこのためだ。

小池一家を窮地から救った大恩人でカイロ大学当時のことをよく知る朝堂院氏の名前が出た途端、小池知事が質疑応答を打ち切った心情が透けて見える。「代表質問だけで囲み取材が終了」という前代未聞の異様な事態となっても、朝堂院氏関連の質疑応答はしたくないという拒絶反応の現れにみえるのだ。

そんな小池知事に助け舟を出したテレ朝には“前科”がある。6月5日の本サイトの記事「小池都知事が税金を使って事前選挙活動」にもテレ朝は登場。東京スカイツリーがイエローグリーンに点灯された世界禁煙デー関連イベントを取材、囲み取材で東京都医師会の尾崎治夫会長から以下のような“小池知事三選支援宣言”を引き出していたのだ。

「医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、そうした医療関係団体すべて、あるいは介護の団体、私は小池知事に引き続きやってもらいたいと皆さんそう思っていると思う」

先の本サイト記事で「小池知事の広報宣伝役を買って出たのがテレビ朝日」と指摘したのはこのためだが、出馬表明後の囲み取材でもテレ朝は、朝堂院氏関連質問を遮って小池知事をアシストしたのだ。

都知事選の奇妙な構図が浮き彫りになっていく。小池知事が都庁記者クラブを“下僕化”、都合の良い情報しか発信させないメディアコントロール(世論操作)をしながら選挙戦に臨むというものだ。小池知事をアシストする都庁記者クラブの異常さがどこまで知れ渡り、是正されるのか否かも、都知事選の結果を左右する要因といえるのだ。

【ジャーナリスト/横田一】

本記事は2024/6/17、NetIB-NEWSの転載原稿です。

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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