中国を挑発「アジア人同士」を戦わせる ―「台湾有事」煽るバイデン大統領の狙い―   

岡田充

米国が台湾海峡で軍事的に中国を挑発し、台湾へ武力行使させる。米国はウクライナ同様、米軍を投入しない「代理戦争」をし、日本の参戦でアジア人同士を戦わせる。

China and Taiwan

 

ロシアのウクライナ侵攻から4か月。アメリカのバイデン大統領は5月末、韓国と日本を歴訪し、このような狙いで岸田政権と共に「台湾海峡危機」を煽り続けている。ウクライナ戦争と台湾危機を重ね合わせた「宣伝戦」は、日本世論で軍拡路線への支持を高める「成果」を挙げている。しかし、台湾有事を煽るバイデン政権の狙いを冷静に分析しないと、日本は「ハシゴ外し」に遭う。

冒頭に書いたシナリオを、「陰謀論」と受け止める向きもあるだろう。しかし8%を超えるインフレの高進、支持率が40%を割りこんでいるバイデン政権にとり、深まる内政分裂にもかかわらず、超党派で一致するのは対中国・ロシア強硬路線だ。内政危機を外交へ転嫁するのは、古今東西の伝統的な政治手法。それは民衆の不安を駆り立て国内を団結させる効果があるから、バイデン大統領が台湾をめぐり対中挑発を止める理由などない。

そこで冒頭のシナリオの(1)中国を挑発して台湾に武力行使させる。(2)台湾有事では、日米共同作戦計画に基づき日本を参戦させる。
(3)ウクライナ同様、米軍を投入せず代理戦争する。という三つの論点を、米側資料や識者の見解、バイデン発言などから拾って検証したい。

・過剰反応を引き出し孤立させる

まず(1)については、米保守系シンクタンク「ランド研究所」が2019年に発表した「ウクライナ戦争に関するリポート」(注1)が参考になる。それは、「米国が優位に立つ領域や地域でロシアが競争するように仕向け、ロシアに軍事的・経済的に過剰な拡張をさせ、ロシアが国内外での威信や影響力を失うように仕向ける作戦」と書く。

台湾有事に直接向けた記述ではないが、米国政府が中ロなど「敵対的勢力」に対応する行動パターンをクリアーに説明しているのがミソ。まず米側が挑発して「(相手を)競争するよう仕向け」、軍事的、経済的に「過剰な対応」を引き出し、「国内外での威信や影響力を失うように仕向ける」というパターンだ。

トランプ前政権の2019年から始まった台湾海峡をめぐる米国の挑発が、中国の台湾防空識別圏(ADIZ)への頻繁な進入や軍事演習という「軍事的対応」を引き出し、日本で中国脅威論や台湾有事切迫論が拡散・浸透してゆくプロセスと同じ構図だ。

military competition ARMY 2018, Chinese army soldier in a chemical protection suit against the background of the flag of the people’s army of China Кostroma Region the town of Pesochnoye June 2018

 

このパターンを裏書きするもう一つの例を挙げよう。中国経済が専門のキャノングローバル戦略研究所の瀬口清之・研究主幹は、最近のリポート「中国を挑発する米国は台湾有事に日本参戦が前提」(注2)で、台湾への米軍艦派遣や米台軍事演習を行うべきだと主張する米議員らが、次のようなシナリオを描いていると書いている。

「米国が台湾独立を支持することにより、中国を挑発して台湾武力侵攻に踏み切らせ、ウクライナ侵攻後のロシア同様、中国を世界の中で孤立させる」。

「そうなれば、多くの外資企業が中国市場からの撤退または中国市場への投資縮小に踏み切るため、中国経済が決定的なダメージを受け、中国経済の成長率が大幅に低下する。それにより米国の経済的優位が保たれ、一国覇権体制が安泰となる」。

OLYMPUS DIGITAL CAMERANews headline with “Hegemony”

 

前述の「ランド研究所」の「敵対勢力に対する行動パターン」が、ここにも再現されている。

・外交努力を放棄して戦争準備

第二論点の「台湾有事では、日米共同作戦計画に基づき日本を参戦させる」は、2021年からの日米両国の動きを見れば分かりやすい。21年4月の菅義偉首相(当時)・バイデン大統領の日米首脳会談は、日米安保の性格を「地域の安定装置」から「対中同盟」に変質させた。

さらに台湾有事に対応するため、米海兵隊が自衛隊とともに南西諸島や奄美に至る約40の有人島を「機動基地」にし、中国艦船の航行を阻止する「共同作戦計画」の推進にゴーサインを出す。台湾有事が、自衛隊の参戦を前提に組まれていることを立証している。

この「共同作戦計画」の米側の狙いについて、国際政治学者で米ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ准教授が、私に語ってくれた話は興味深い。彼によれば、ワシントンで2020年春、国際政治学者と軍事専門家が参加する台湾有事の「机上演習」(ウォーゲーム)が何度か行われた。

その結果、①米軍による在日米軍の自由アクセス、及び②日本の後方支援がなければ、「米軍は中国軍に勝てない」という結論が出た。モチヅキ准教授は、この2条件を盛り込んだ対日要求シナリオの一つとして、「南西諸島での中国艦船の通過阻止とミサイル配備」を挙げる。「日米共同作戦計画」のシナリオとぴたりと重なるのが分かる。

台湾有事を煽るのは、日本の大軍拡と南西諸島のミサイル要塞化を図ることに主要な狙いがある。安倍晋三元首相は「台湾有事は日本有事」として「有事対応」の必要を強調してきた。戦争シナリオの起動は、即「外交敗北」を意味する。だが、戦争準備に進む前に対話と相互理解を重ね、戦争を回避するのが外交の仕事。岸田文雄首相は有事危機を煽るだけで、対中国外交はほぼ白紙状態だ。

第三の「ウクライナ同様、米軍を投入せず代理戦争する」に移ろう。

バイデン大統領は5月23日、日米首脳会談後の記者会見で、台湾有事で米国は「台湾防衛のため軍事的に関与する」と明言した。メディアは、中国の武力行使への対応を一切明らかにしない「あいまい戦略の転換」と大騒ぎした。米国務省は政策変更を否定したが、バイデン発言の真意はどこにあるのか。

 

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岡田充 岡田充

共同通信客員論説委員。1972年共同通信社入社、香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員などを経て、拓殖大客員教授、桜美林大非常勤講師などを歴任。専門は東アジア国際政治。著書に「中国と台湾 対立と共存の両岸関係」「尖閣諸島問題 領土ナショナリズムの魔力」「米中冷戦の落とし穴」など。「21世紀中国総研」で「海峡両岸論」http://www.21ccs.jp/ryougan_okada/index.html を連載中。

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