
日航123便墜落事故:「NHKの第一報はテロップだった」とする新聞記事について(市民記者記事・小幡瞭介)
社会・経済今回の記事では「NHKの第一報はテロップだった」とする新聞記事を紹介する。
私の第三弾目の記事「日航123便墜落事故とさまざまな矛盾」では、池上彰氏の証言と塚田祐之氏の証言の矛盾について紹介した。
再度解説すると、事故当時NHK社会部記者だった池上彰氏は『文藝春秋』2013年2月特大号で「NHKが放送した事故の第一報は、松平定知アナウンサーによる原稿読み上げだった」という旨を述べているのだが、当時NHKに勤めていた塚田祐之氏は著書『その情報、本当ですか?―ネット時代のニュースの読み解き方』で「NHKの第一報はテロップだった」という旨を述べている。
池上氏の証言と塚田氏の証言は、どちらが正確なのだろうか。実は「NHKの第一報はテロップだった」とする新聞記事があるので、以下に紹介する。
まず、1985年8月13日付『スポーツニッポン』(大阪本社版)12面には、以下の通り記載されている。
≪全面的に事故報道 テレビ各局の対応
日航ジャンボ機事故の一報はNHKが午後七時二十六分にテロップで流した。≫
次に、1985年8月16日付『新聞展望』には以下の通り記載されている。(『新聞展望』は、マスコミ業界の専門紙である。)
≪日航ジャンボ機墜落でテレビ各局は夜の番組を大幅に変更、緊急の報道体制を敷いた。
一報を流したのはNHKで午後七時二十六分にテロップで。≫
上記の通り、「NHKは第一報をテロップで流した」とする新聞記事が複数存在するのである。
特に『スポーツニッポン』の記事は事故翌日のものである。≪日航ジャンボ機事故の一報はNHKが午後七時二十六分にテロップで流した。≫と事故翌日に報道した新聞がある、という事実は注目に値するだろう。
また、私が調べた限りでは「NHKの第一報はアナウンサーによる原稿読み上げだった」と事故翌日に報じた新聞は見つけられなかった。
なお、新聞記事ではないが、雑誌『ろうさい』1985年10月号掲載の小池廣治氏による記事「労災保険の業務上外──会社所有の自動車に同乗中の災害──」には、以下の通り記載されている。
≪昭和六〇年八月一二日午後七時二〇分頃、NHKのニュースの途中でテレビ画面にテロップが流れ始めた。職業柄とでもいうのか何か災害が発生したのではないかと一瞬身体が引締り画面に注目した。その内容は、まだ我々の記憶にも生々しい日航一二三便ジャンボ機の墜落事故の第一報であった。≫
また、時事通信社の社史『時事通信社50年史』には、以下の通り記載されている。
≪ぷろむなーど
日航ジャンボ機墜落―その時のデスク その時、社会部は比較的ヒマだった。すでに59本を出稿、デスク勤務者はテレビのニュースを見ていたように思う。
昭和60年8月12日午後7時12分。帰る直前のデスクの天野岩男が羽田担当の清水喜由の電話をとった。清水「ハッハッハッ(激しい息遣い)、JALがレーダーから消えました」天野「何便だ」清水「羽田発大阪行き123便」。
かくて世紀のフラッシュが同7時13分に流れた。続いて20分には「横田から36マイルの地点で墜落を確認」のフラッシュ。NHKのテロップは26分だった。
(中略)
(社会部長〈当時〉・岡本利男「ひびや」昭和60年9月10日号より)≫
NHKの第一報は「テロップ」と「アナウンサーによる原稿読み上げ」のどちらだったのか。NHKの第一報に関する事実が明らかになれば、123便に関するほかの疑問点についても、芋蔓式に事実が明らかになっていく可能性が高いと私は考えている。池上彰氏が事故当日の記憶を再発信してくださることを願っている。
・付記:『中日新聞』も事故翌日の朝刊で「墜落地点は御巣鷹山付近」と報じていた
『読売新聞』が事故翌日の朝刊で≪524人乗り日航機墜落 航空史上空前の大惨事 御巣鷹山(群馬・長野県境)付近に≫と報じたことは、多くの方がご存知だろう。
実は『中日新聞』も事故翌日の朝刊で「墜落地点は御巣鷹山付近」と報じているので紹介する。
1985年8月13日付『中日新聞』朝刊1面に、以下の通り記載されている。
≪【前橋】群馬県警は十二日、自衛隊機が確認(午後十時五十分)した東経一三八度四一分、北緯三六度の墜落地点は群馬県多野郡上野村、御巣鷹山(みすたかやま)(一六三九㍍)付近とみている。このため上野村消防団員ら約四百五十人が同夜、御巣鷹山に向かった。≫
上記の通り、『読売新聞』だけでなく『中日新聞』も「御巣鷹山付近」という正確な情報を事故翌日の朝刊で報道していたのである。この事実はより広く周知されるべきだろう。
今年の夏、『中日新聞』が123便墜落事故の特集記事を組むことがあれば、その際には上記の事実についても取り上げていただきたい。
【参考文献】
- 小幡瞭介. “日航123便墜落事故とさまざまな矛盾(市民記者記事・小幡瞭介)”. ISF独立言論フォーラム. 2024年5月5日公開. https://isfweb.org/post-36982/(参照 2025-03-20)
- 池上彰. 日航機墜落事故 NHKの第一報を報じた. 文藝春秋. 2013, 2月特大号, p.274-275.
- 塚田祐之. その情報、本当ですか?―ネット時代のニュースの読み解き方. 岩波書店, 2018, p.61-62.
- 全面的に事故報道 テレビ各局の対応. スポーツニッポン(大阪本社版). 1985-08-13, p.12.
- 株式会社新聞展望車. “メディア業界の最新情報「新聞展望」ご案内”. 創刊60年のマスコミ業界専門紙|新聞展望. https://www.tenbou.com/%E5%AA%92%E4%BD%93%E6%A1%88%E5%86%85/(参照 2025-03-20)
- 全局が特番体制で報道 日航ジャンボ機墜落 マスコミ関係者が搭乗. 新聞展望. 1985-08-16, p.1.
- 小池廣治. 労災保険の業務上外──会社所有の自動車に同乗中の災害──. ろうさい : 労災保険と安全衛生. 1985, 10月号, p.22-25. 国立国会図書館デジタルコレクション. https://dl.ndl.go.jp/pid/2861571/(参照 2025-03-20)
- 時事通信社社史刊行部会. 時事通信社50年史. 時事通信社, 1995, p.221.
- 524人乗り日航機墜落 航空史上空前の大惨事 御巣鷹山(群馬・長野県境)付近に. 読売新聞. 1985-08-13, 朝刊, p.1.
- 524人乗り日航機墜落 羽田発大阪行きジャンボ機 長野・群馬県境 山に激突、炎上 『ドア壊れた』と急降下. 中日新聞. 1985-08-13, 朝刊, p.1.
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