森友事件高裁裁判長のメディアコントロール、籠池夫妻実刑判決「一人署名」の違法

青木泰

2022年4月18日、補助金を詐取したとして詐欺罪に問われた森友学園理事長・籠池泰典夫妻を被告とする刑事裁判(森友本丸=違法値引き事件の別件)の控訴審判決は、一審判決での籠池諄子氏の執行猶予5年、および一部無罪を取り消して泰典氏懲役5年、諄子氏2年6月とする実刑判決となった。

Court

 

大阪高裁の判決は、被告側の訴えを1ミリも認めず、検察側の控訴理由のみに従う、検察のために裁判があるかのような、いびつな内容だった。

訴訟の経緯を見ると、一審弁護人はあえて罪を認め執行猶予を勝ち取る方式をとったが、控訴審では被告側は全面無罪を主張した。そして諄子氏の「ぼったくる」発言の録音反訳が偽造されたものであることや、補助金申請のために工事事業者が水増し作成した23億円契約書の原本不在など、籠池夫妻の無実を示す事実が示されていた。

ところが高裁判決をめぐる報道は、公判中に泰典氏が裁判長に抗議の声を上げたといった内容に終始し、なぜ被告側の主張がことごとく却下されたのかについての言及はなかった。

実は、それには理由がある。判決当日、被告側に判決書が渡されなかったのである。メディアには三ページの要約文のみが渡された。正確に報道できる条件が奪われていたのだ。これは、西田眞基裁判長によるメディアコントロールといえる。

しかも、判決書は関与した裁判官が署名押印するきまりだが、本件では西田裁判長一人が他の裁判長の代理署名をしていたことがわかった(写真)。

五十嵐常之裁判官は退官したため、武田義徳裁判官は「差支え」があって署名押印できないと書かれていた。裁判所法第18条1項は、高裁以上の裁判所は、合議で判決を下す必要があると定めている。

もし判決当日に判決書を被告側に渡し、記者会見で「一人署名」がメディアに伝わっていれば、司法記者たちも大きく問題にしたに違いない。西田裁判長が当日に判決書を渡さなかったのは、それが問題となることを避けたのだろう。その一方で、西田裁判長は100ページにわたる判決書を、早口で3時間半かけて読み上げ、当日の判決宣告の体裁だけは整えた。公正・公平の使命を忘れ、真実追及の報道を遠ざけメディアコントロールを狙う“国策判決”といえる。

・南出弁護士に国策判決の要点を聞く

控訴審は1月17日に結審。公判では、丸山輝久弁護士から代わった南出喜久治弁護士が改めて弁論要旨を提出した。丸山弁護士は、籠池夫妻首謀説の最大根拠であった「ぼったくる」発言が反訳時に改ざんされていた点を指摘し(「紙の爆弾」2021年7月号参照)、1審の裁判長が求めていた本件のもう一つの証拠である23億円契約書の原本がないことも指摘していた。

南出弁護士は、それに加え、本件が補助金詐取容疑をめぐる事件であるのに詐欺罪で逮捕した点を大きな矛盾と指摘している。

Japanese lawyers’ badge

 

詐欺罪は個人に課せられるものであり、故意性だけでなく「不法領得の意思」を立証することが要件となる。森友学園が補助金を不正に詐取したのが事実だとしても、その分は全額返済しているため、逮捕の必要性はなかった。

また詐欺罪では、法人(森友学園)に振り込まれた金を個人として不正流用した事実が必要となるが、籠池氏らが流用した事実はないため、そもそも適用は無理だとの指摘だ。高裁判決では一顧だにされなかった本件刑事裁判の冤罪性を探るために、南出弁護士にお聞きした(質疑は文書で行なった)。

―南出弁護士は、森友学園の塚本幼稚園の民事訴訟も担当し、森友事件の全体像をとらえたうえで弁論を展開されています。一言で言えば、籠池刑事裁判とは?

南出:1審判決で共謀者と認定された(施工業者の)藤原工業に民事再生手続において不法の利益を与へる待遇を約束する利益誘導がなされて、籠池夫婦を有罪に追ひ込むやうに、民事事件(民事再生手続)と連動して仕組まれた事件である。

―控訴にあたり棄却判決を求めていますが、その理由として、本件のサスティナブル補助金事件で、検察自身が共謀者として指名した事業者(キアラ建築研究機関〔以下、キアラ〕と藤原工業両代表)を不起訴としながら籠池夫妻だけを立件する差別的起訴だと主張されました。

南出:そのとおり。 刑事事件では、(藤原工業には)適正化法違反について身柄を拘束もせず不起訴にし、民事事件では、不法原因給付(民法第708条)により森友学園の再生債権者にはなれないのに筆頭債権者にさせて違法な利益を与へる一方で、籠池夫婦を逮捕勾留して詐欺罪で起訴して実刑にし、森友学園を破産に追ひ込むといふ典型的な公訴権の濫用がなされた。

・「ぼったくる」発言の偽装

―キアラと森友学園の打ち合わせ内容の録音を聞くと、検察が有罪の最大根拠である「ぼったくる」発言の前後を改ざんして反訳を行なっていました。検察側の虚偽公文書の作成・使用罪に当たるとも主張されました。

南出:会話の連続性、一体性からして、一部分の反訳の省略は、脈絡を破壊させすり替へさせる効果がある。裁判所は、事実認定を行ふ際には、録音テープ自体を一々再生して心証を得るのではなく、反訳書の記載で心証をうることが常態化してゐることを見越して、省略した反訳書の記載で誤解させるために、反訳書を作成したことは、虚偽公文書作成行使に該当する。

―前任の弁護団は、キアラが録音した内容と検察官が反訳した内容を比較。諄子氏の「ぼったくる」発言が、本件補助金を指したものではないことを明らかにしました。実際には、工事にあたり埋設ごみを撤去せねばならず、その間も賃貸料を支払わなければならない不合理を学園の顧問税理士が「ぼったくられる」と表現、それを念頭に、国からその分を有益費として取り返すという意味での諄子氏の発言でした。

南出:そのとおり。

―さらに南出弁護士は、2015年6月10日の会議に諄子氏が途中から遅れて参加したことや、その際大きな声であいさつした部分を検察が削除していた点も指摘されています。

南出:それ以前の会議には参加してをらずそれ以前の会議の内容を知らないことが証明されるのです。

―この発言改ざんは、厚労省の「村木事件」と全く同じだと思います。今回の事件では、キアラが建設費を過大に偽装した請求書を国交省に提出したのが2015年7月17日。籠池夫妻の指示で補助金詐取を働いたというのなら、それ以前に指示が行なわれなければならず、唯一の会合が6月10日であり、検察はそこでの「ぼったくる」発言を拠り所とせざるを得なかった。
南出 そのとほりです。

・「不法領得の意思」は事業者にある

―南出弁護士の主張で特徴的なのは、「不法領得の意思」の指摘ですね。詐欺罪には罰金刑はなく懲役刑だけで、補助金適正化法には罰金刑もある。適正化法は法人も対象になるが、詐欺罪は個人が対象。これは目からうろこでした。詐欺罪の場合、学園が不正・過大に入手した補助金を籠池夫妻(個人)が不正に流用したという点が問題となり、被告に「不法領得の意思」が必要だということですね。

南出:一審判決も控訴審判決も、情状として「私的流用の目的はなかつた」と認定してゐますが、これは「不法領得の意思」がなかつたことを認めてゐるのであつて、仮に、故意が認められても無罪なのです。

―泰典氏が理事長である以上、学園の金が水増しされることに利害関係があるとの意見もありますが。

南出:だから適正化法違反として、法人の森友学園が起訴されるべきことが問題となる事案であつて、籠池夫婦には不法領得の意思がないのです。個人と法人は別であり、個人=法人といふ図式は成り立ちません。

―しかし1審判決では、補助金は施主である森友学園に振り込まれ、森友学園と籠池夫妻に利害関係があるとしています。平行して進められていた建設費用の交渉は、補助金が入るとして7.5億円から倍増する方向で進められ、詐取した金額は建設費用として上積みされる構造でした。

南出:詐欺罪と適正化法違反とは、犯罪構成要件が異なります。適正化法違反は、補助金を受けた者(法人=森友学園)が犯罪の行為主体となります。詐欺罪の場合は、被害者に財物を交付させた者が犯罪の行為主体になります。だからこそ、その行為主体には故意の他に不法領得の意思といふ主観的要素の有無が特に重要になるのです。

―本件を振り返ると、建設費7.5億円の相談の段階で、キアラ側は建設費「23億円」の申請書を出していました。そして施主(籠池氏)には「10億円以上かかるものの、1億2000万円くらいの補助金を2つ入手するから大丈夫」と説明しました。その一つが防音対策の補助金であり、もう一つが本件の木質系サスティナブル補助金です。その時点で、23億円という当初の金額を書き換えることができなくなりました。したがってサスティナブル補助金詐取はキアラに、そして、建設費の値上げによって利益を得る藤原工業に犯行の利害得失があったといえます。

南出:キアラや藤原工業は、森友学園に補助金を受領させ、そこから自らの利益を得ることの認識があるので、故意と不法領得の意思が認められるのであつて、キアラと藤原工業が詐欺罪の主犯(首謀者)です。
―補助金詐取は、キアラによる書類作成や、藤原工業による23億円の偽の契約書、工事費用算出がなければ不可能です。事件の再発を防ぐためには、両事業者の立件は不可避です。
南出 手続的な専門知識のあり、それによつて利得を得る地位にある者が首謀者であることは経験則上肯定されることです。

 

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青木泰 青木泰

環境ジャーナリスト。NPOごみ問題5市連絡会幹事。環境行政改革フォーラム、廃棄物資源循環学会会員。著書『引き裂かれた絆』(鹿砦社)など。

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