【特集】沖縄PFAS問題とは何か

横田基地周辺の有機フッ素化合物(PFAS)による地下水汚染

根木山幸夫

0.はじめに

米軍基地周辺の有機フッ素化合物(PFAS。以下に出てくるPFOSとPFOAはその一種)による地下水・土壌汚染について、沖縄の米軍基地での汚染が大きな問題となっている。本土の米軍基地については、これまでジョン・ミッチェルさんが米軍内部文書をもとに、海兵隊岩国航空基地、三沢空軍基地、横田空軍基地、厚木海軍飛行場などで汚染があった事実を明らかにしてきた。

最近、陸軍キャンプ座間や海軍横須賀基地周辺の汚染、愛知県の小牧飛行場のある豊山町での井戸水汚染が明らかになっている(小牧飛行場は航空自衛隊、民間空港とともに、米軍の戦闘機等の保守整備を行っている三菱重工が使用する共用空港である)。

本稿では、2020年に多摩地域の東京都の水道水の汚染が明るみに出た横田基地の問題にしぼって、住民運動の取り組みとともに述べたいと思います。(引用が多いですが、ご容赦ください。)

1.多摩地域のおいしい地下水

多摩地域の地下水について、例えば、東京都産業労働局のTOKYOイチオシナビ(地域資源紹介)は、2004年、小金井市中央商店街協同組合が地域活性化の一環として地下約100mの深井戸を掘ってつくった「六地蔵のめぐみ黄金の水」が登録利用者3000人を超え、「小金井の黄金の名水を求めて、毎日大勢の地元の住民や飲食店の経営者がボトルやポリタンクに水を汲んでいる」と紹介している。

現在、多摩地域の東京都の水道は、多くの浄水所で地下水を汲み上げて水道水に使っている。地下水100%のところもあり、多摩川の水とブレンドしているところもある。

2.横田基地周辺の汚染

横田基地では基地内北東部につくられた消火訓練場(模擬飛行機様の物体の写真、グーグルマップが捉えた消火訓練場の円形写真)で、

横田基地の消火訓練場の模擬機体

 

横田基地の消火訓練場

 

数十年にわたって泡消火剤を使った消火訓練を定期的に実施している(最近、米軍当局は2018年、2021年、2022年と訓練の一環としての消火訓練の動画・写真を公開している。写真は2021年の消火訓練)。

Staff Sgt. Larry Kyles, left, and Airman 1st Class Garrett Cook, 374th Civil Engineer Squadron firefighters, participate in a simulated aircraft fire and egress training scenario during a Samurai Readiness Inspection exercise, Oct. 27, 2021, at Yokota Air Base, Japan. Live-fire training scenarios ensure 374th CES firefighters are proficient and prepared to properly handle real-world events. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Juan Torres)

 

放出された泡消火剤は、空気中に拡散するとともに周辺土壌中に浸み込んでいき、長年にわたって土壌から地下水にしみ出していくと推定される。基地内には河川がないので基地周囲の側溝から下水道管を通じて東京都の多摩川上流水再生センター(昭島市)にも流れ込んでいる。

① 横田基地で2010~17年に消火剤が漏出
「沖縄タイムス」2018年12月10日付でジャーナリストのジョン・ミッチェル氏は、米国情報公開法により入手した米軍文書をもとに次のように報じた。

〈米軍横田基地では10~17年に有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤が計3161リットル漏出し、12年には泡消火剤3028リットルが貯蔵タンクから土壌に漏出した。しかし、漏出は日本側に通報されなかった。同年は95リットルが漏れる別の事故があったほか、10年にも38リットルの同剤が漏出する事故もあった。……同基地の内部文書によると、基地内11の井戸から16年に採取した水を検査した結果、PFOSとPFOAを合わせた汚染物質の量は最大35ナノグラム/リットル(ng/L)だった。泡消火剤の偶発的な漏出に加え、同基地にある消火訓練区域では数十年にわたりPFOSに汚染された泡消火剤が散布されてきたとみられる。〉

②多摩の河川水や地下水が高濃度に汚染

2002年、京都大学の小泉昭夫教授(当時)らは、横田基地から5キロ下流にある東京都の多摩川上流処理場(現:多摩川上流水再生センター)の放流口で採取した水から最大440 ng/LのPFOSを検出した。

多摩川および多摩地区での地下水汚染について、小泉氏は『永遠の化学物質―水のPFAS汚染』第4章で、次のように述べている。

〈我々は03年に、多摩川水系で表層水のPFOS汚染および世田谷区での水道水汚染が生じていることを報告したが、それを受け、都は調査に乗り出した。

まず都は08年に多摩川での汚染の実態を調査し、汚染源を三つに絞り込んだ。それらは、電子部品・デバイス製造業、輸送機械器具製造業および横田基地であった。いずれも主としてPFOSを放出しており、排液調査では、電子部品・デバイス製造業からの排水の濃度は5万8000ng/L、輸送機械器具製造業からの排液では240ng/L、横田基地からの排液では最高410ng/Lであった。

PFOSの汚染は多摩川の表層水に留まらなかった。西野ら(東京都環境科学研究所)は10年に65地点、11年には57地点で地下水の調査を行った。東京都は多くの地下水のモニタリング点を有しており、大きく多摩地区および都区部に分けられる。調査は、多摩地区の地下水の一部が高度にPFOS(以下単位はng/L)に汚染されていることを証明した。立川市のサンプリングポイントでは230、府中市では140、国立市では160の汚染を観察した。湧水でも国立市では180の汚染を観察した。

これらの結果から、多摩地区に存在する三つの想定される汚染源の一部あるいは全てが、多摩川の表層水汚染と同時に同地の地下水汚染も引き起こしている可能性が示唆された。他の研究も同様の結果を支持している。

しかし、東京都環境科学研究所のPFASの組成の詳細やそれに基づいた統計的な解析によっても、複雑な地下水の流れと土壌の性質から、汚染源の特定は困難をきわめている。その後の報告は、東京湾へのPFOS、PFOAの流入量について、2005年を境に顕著な減少傾向を示している〉。

③汚染は継続している

〈環境省は、20年5月の規制値の決定に合わせて全国171地点の河川水と地下水の汚染の実態調査の結果を公表した。調査は19年に行われた。それによると日本で最も汚染が深刻だったのは大阪府摂津市の地下水で1855.6、次いで沖縄県の嘉手納基地および普天間基地周辺の河川水・地下水で、1000超の値を記録した。

次いで東京都調布市の地下水が556.0であった(いずれもPFOS+PFOA:ng/L)。このように東京、大阪、沖縄で深刻な汚染が継続している。……

東京都の多摩地区の汚染源と思われる事業体は、二つの企業と米軍横田基地である。行政による汚染源の特定は、科学的に未解明な問題も含めて難渋をきわめている。しかし、見方を変えれば、企業や米軍は、自ら調査に協力し積極的に汚染除去に寄与する程度を解明することに協力すべきであろう。関与が疑われる企業と米軍が、汚染の実態を隠蔽することにより汚染源の特定は困難となる。

多摩地区の汚染は確実に存在し、地下水からPFOSの除去のために活性炭によるフィルタリングが必要となる。沖縄県での濾過費用が年間1億円であることを考慮すれば、給水量からするとその費用は莫大となる。その意味で、関与が疑われる企業と米軍は社会的責任を果たすべきである。〉

④基地周辺の井戸・水道水が汚染

横田基地周辺の井戸と都水道局の浄水所の汲み上げ井戸・浄水(水道水)が高濃度に汚染されている事実が、朝日新聞2020年1月6日、8日付で報じられました。

〈東京都の情報開示資料から、19年1月、都の横田基地周辺の有害物質の漏出の有無を調べるための監視地点に定めた4カ所の井戸を調査した。そのうち立川市にある井戸でPFOS+PFOAの合計値1340ng/L、武蔵村山市にある井戸で143 ng/Lを検出した。……両物質が検出された二つの井戸は、国際的な規制を受けて国内でPFOS規制が始まった10年度に都が濃度を調べた際、それぞれ両物質の合計で1130ng/Lと、同340 ng/Lだったことも明らかになった。〉(20年1月6日付)

続いて1月8日付の記事で、府中、国分寺、国立3市の浄水所で、汲み上げ井戸の高濃度汚染により、汲み上げを中止したと報じました。

〈東京・多摩地区にある一部の浄水所で、水道水から有機フッ素化合物が高濃度で検出されたとして、東京都が19年6月、水源の井戸からのくみ上げを止めたことがわかった。水源を川の水などに切り替えて濃度を下げたという。専門家は「(検出された値は)すぐ健康に影響が出るものではないが、体内に長く残る」として実態把握の必要性を指摘している。

都への情報開示請求で公開された文書をもとに取材して判明した。……

都は、23区を除いた多摩地区(30市町村、一部除く)などで地下水を飲用に使っている。同地区にある浄水所は停止中を含め71カ所で、都は19年5月以降、過去に濃度が比較的高かった6浄水所で臨時調査を実施。国分寺市にある東恋ケ窪浄水所で両物質合計で101 ng/Lを検出した。

都は、米国勧告値の半分(35 ng/L)を超えないよう管理する方針を独自に決め、府中市にある府中武蔵台浄水所(昨年の臨時調査で60 ng/L)と、国立市にある国立中浄水所(一昨年の調査で38 ng/L)を加えた3浄水所の水源井戸の一部からくみ上げを止めた。

3浄水所から配水されているのは数万件。都水道局の担当者は「都民の安心を考え、より慎重に対応している」と話す。

都は05年ごろから多摩地区で両物質の濃度を調査。記録が残る11~18年度、東恋ケ窪、府中武蔵台の両浄水所では濃度に応じて年に1~12回計測し、各年度の最大値は79~150 ng/Lだった。都は、過去に使われたものが分解されず地下水に残っているとみている。発生源について担当者は「わからない」と話す。〉(20年1月8日付)

⑤都水道局ホームページでは

東京都は、2020年に水道局のホームページのトップに掲載された「有機フッ素化合物 関連物質」のサイトで、11年以来、各浄水所でのPFOS・PFOA調査を実施し、長く高濃度に汚染されてきた事実を明らかにした(府中武蔵台浄水所の浄水と東恋ヶ窪浄水所の浄水の11年~19年の値はグラフ参照)。

二つの浄水所PFOS&PFOA汚染グラフ

 

21年2月の同サイトでは、「2020年2月~3月に……給水栓における測定値が暫定目標値を超過した浄水所については、井戸水源の一部又は全部を停止する対策を実施した。これにより、都内全ての給水栓において、PFOS及びPFOAの値が暫定目標値を下回っていることを確認しております」とし、22年7月現在でも、「水道局では、定期的に検査を行い、給水栓(蛇口)における濃度が暫定目標値を下回るよう管理しています。給水栓(蛇口)において暫定目標値を超過した場合は、PFOS及びPFOAの濃度が高い井戸の運用を停止する等の対応を行っている。今後も継続してPFOS及びPFOAの検査を行い、水道水で安定的に目標値を下回るよう管理を徹底するとともに、検査結果を定期的にホームページに掲載していきます」としている。

都水道局は、現在の水道水は国の暫定目標値以下だから飲んでも問題がないという立場です。しかし、長年にわたって高濃度に汚染された浄水所の水道水を飲用してきた住民の体内にどれだけ汚染が蓄積しているかという健康問題については、まったく触れていない。

⑥2カ所の浄水所地域で高い血中濃度

多摩地域の浄水場の中でも汚染が高濃度であったことが明らかにされた府中市の府中武蔵台浄水所と国分寺市の東恋ヶ窪浄水所の給水地域の住民22名を対象にして、NPOダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議が2020年8月に実施した血液検査の調査報告では、PFOSは日本人の平均の1.5倍~2倍という高い値でした。PFOSの代替物質として使用されているPFHxSについては27~29倍という高い値を示していた。

 

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根木山幸夫 根木山幸夫

1947年生、石川県出身、日野市在住。月刊雑誌の編集を経て、現在フリーの出版企画編集コーディネータ、<科学と人間シリーズ>14点を刊行(リーダーズノート出版で発売)

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