第1回 世界軍人オリンピックのナゾその(一)―コロナ禍の起源―
社会・経済もう一つの可能性は、軍人オリンピックは解放軍担当事項であり、民間病院・民間人には発言の自由が与えられていないのかもしれない。要するに十分な確証は得られないが、武漢軍人オリンピックのなかから「患者零号」が現れた可能性を趙立堅副報道局長は想定し、米国側に真相発表を迫っていると思われる。
しかしながら、日本では、軍人五輪というイベントについてのメデイア報道は皆無であり、その存在さえ知らないので、中国側の「責任転嫁」にしか見えない。これは日中間に横たわる「壮大な誤解」と呼ぶべきではないか。
日本の政治の安全保障に関わる分野で、このようなメデイア報道をめぐる倒錯現象は少なくない。日本は韓国聞慶の世界軍人五輪を無視し、武漢の軍人五輪を無視し、東京2020五輪だけを突出させてきた。それがいま1年延期を余儀なくされ、21年に辛うじて観客なしで開かれたのはなんたる皮肉か。これは誤った安全保障論に対するウイルスの反撃と見てよいのではないか。
要するに、日本はすでに「世界の孤児、アジアの孤児」になりつつあるが、それを自覚できず「世界第二の経済大国」なる失われた夢に酔っている。ウイルスはその迷夢を撃つ。
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1938年生まれ。東大経済学部卒業。在学中、駒場寮総代会議長を務め、ブントには中国革命の評価をめぐる対立から参加しなかったものの、西部邁らは親友。安保闘争で亡くなった樺美智子とその盟友林紘義とは終生不即不離の関係を保つ。東洋経済新報記者、アジア経済研究所研究員、横浜市大教授などを歴任。著書に『文化大革命』、『毛沢東と周恩来』(以上、講談社現代新書)、『鄧小平』(講談社学術文庫)など。著作選『チャイナウオッチ(全5巻)』を年内に刊行予定。