【連載】インタヴュー:時代を紡ぐ人々(前田朗)

第6回 カブール・プレートランチを食べませんか―アフガニスタン女性との連帯活動をする尾崎真理子さんに聞く―

前田朗

・ようこそ、おどもカフェへ

――カブール・プレートランチって何ですか。

尾崎――レーズンやニンジンと炒めたピラフに、コリアンダー、ターメリック、クミンなどの香辛料で煮込んだ赤インゲン豆を添えました。蒸しギョーザ「マントゥ」も皿に盛り込みました。マントゥはアフガニスタンだけでなく中央アジア一帯で食べられるギョーザです。レモンと塩で味付けしたヨーグルトソースで食べます。

 

――カブールはアフガンの首都ですね。

尾崎――アフガン料理をプレートランチで出すなら、首都の名前を付けようと思いました。現地ではカーブルと発音するようですが、日本ではカブールで知られています。

――喫茶店「おどもカフェ」のランチですね。

尾崎――長野県の阿南町御供(おども)地区で喫茶店をしています。お店ではもともと各種のプレートランチを提供してきたので、同じラインで、1食800円にしました。

――なぜアフガン料理を出すことにしたのですか。

尾崎――「RAWAと連帯する会(以下「RAWA連」)」メンバーとして「アフガニスタン女性革命協会(RAWA)」との連帯活動をしてきました。RAWAは1970年代にアフガンで作られた女性団体で、女性の地位向上や学校教育の充実などに取り組んできました。

――アフガンは極端なイスラーム原理主義勢力が強くて、女性の地位が著しく低いですね。

尾崎――少女が人身売買されたり、学校に通わせてもらえなかったり、ブルカを着用しないと外出できないことは日本でもよく知られています。ターリバーンは特にひどいですが、ターリバーンだけでなく、どの党派も女性差別的です。そんな中でRAWAは教育や医療の支援活動をしてきました。政権からは目の敵にされて、自由に活動できない面もあります。世界各地からの支援を得て活動しているので、日本からもRAWA連がRAWA支援のカンパを送ってきました。

Varanasi, Uttar Pradesh, India – 24 March 2019: Portrait of an Islam lady.

 

RAWA連は主要メンバーが関西にいて頑張っていますが、私は長野県にいるため、普段からRAWA連の活動に出るわけにはいきません。
信州の田舎で何をどうしたら良いのかと考えると難しくなってしまいます。やるのは大変だと身構えると動きにくいので、やらなければ何も変わらない、自分でできることをやれば良いのではないかと思いました。

それで私なりにできることは何かを考えたんです。飲食店をやっているので、メニューにアフガン料理を入れることができると思い、今年の初めから準備しました。

――お客さんの反応はどうですか。

尾崎――清末愛砂さん(RAWA連共同代表)がアフガンの写真を使ったカレンダーを制作したので、カレンダーをお店にかけて、アフガンの説明もしているので、関心を持ってランチを食べてくれる人もいます。

メニューに「売り上げの半分をアフガンに送ります」と書いてあるので、アフガン女性への支援ということも理解してくれて協力してくれます。

――RAWAとは何かも説明するのですか。

尾崎――信州ですから、外のことに興味はあっても、普通はなかなか外国の話にはなりません。シリアに行ってきた人に喫茶店で話をしてもらったり、私がフィリピンに行った時のことを話したりしたことはあります。でも、いきなり外国の話をしても、とっかかりがないので、食べ物が入口の方が良いかなと思います。

・アフガン難民キャンプを訪問する

――アフガンに関心を持ったのはいつからですか。

尾崎――2001年の9.11の後、米軍がアフガンの旧ターリバーン政権を攻撃しました。多くの人が隣国パキスタンに逃れました。当時、学生でしたが、「アフガニスタン国際民衆法廷」という運動があって、そのお手伝いをしました。

The national flag of the Islamic Emirate of Afghanistan at Wazir Akbar khan Hill. this flag was adopted on 15 August 2021 with the victory of the Taliban in the 2001–2021 war.

 

――2001年10月7日に始まったアフガン戦争は、アメリカによる侵略であり、空爆によって町が破壊され、人々が難民となったのは人道に対する罪であるという考えから、日本の平和運動を中心に「アフガニスタン国際民衆法廷」を開催しました。判事は新倉修(青山学院大学教授)、水島朝穂(早稲田大学教授)、R.アクロイド(アストン大学教授)、ニルーファ・バグワット(ボンベイ大学教授)、ピーター・アーリンダー(アメリカ法律家ギルド元会長)です。

尾崎――戦争は違法だと言って、民衆法廷で裁くという発想が新鮮でした。こんなことができるんだと。法廷で裁くために、アフガンに調査に行って証拠を集めて来るなんて、それまで考えたこともありません。

――民衆法廷実行委員会は2002年から04年にかけて9次にわたる調査団を派遣して、証拠を集め、証人を日本に招きました。検事団長は土屋公献(元日弁連会長)、検事団事務局長は猿田佐世(弁護士)で、中堅若手の弁護士が多数ボランティアで取り組みました。アフガン調査にも行っています。

尾崎――現地へ行けるんだと知りました。私も2年後、パキスタンの難民キャンプを訪問しました。

――イスラマバードやペシャワールへ行った。

尾崎――アフガン難民キャンプを訪問するため、仲間と一緒に行きました。それ以前はアフガンに関心があったわけではなく、名前を知っているだけでした。ただ、こんなことが起きるんだというショックがあって、とにかく何か動きたい、知りたいという思いはありました。民衆法廷にかかわって、現地へ行けることを知ったので、ぜひ行きたいと思いました。

――難民キャンプでアフガンの子どもたちに出会った。

尾崎――キャンプの学校で子どもたちに会いました。貧しい、困難な状況の中でも子どもたちはいきいきしていました。狭い教室で、子どもたちはボロボロの教科書を持っていました。本当に勉強したいんだなと感じました。ターリバーンは女子教育に否定的なので、難民キャンプで一生懸命に勉強する少女たちに会って、何とかしなければと思いました。

 

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前田朗 前田朗

(一社)独立言論フォーラム・理事。東京造形大学名誉教授、日本民主法律家協会理事、救援連絡センター運営委員。著書『メディアと市民』『旅する平和学』(以上彩流社)『軍隊のない国家』(日本評論社)非国民シリーズ『非国民がやってきた!』『国民を殺す国家』『パロディのパロディ――井上ひさし再入門』(以上耕文社)『ヘイト・スピーチ法研究要綱』『憲法9条再入門』(以上三一書房)『500冊の死刑』(インパクト出版会)等。

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