「文通費問題」はただの〝ブーメラン〞ではない 維新の会は嘘だらけ

西谷文和

・言うだけ吉村・松井

「首相には聞く力がある」

「大阪の知事、市長は発信力がある」

テレビに連日出演している御用評論家や吉本興業のタレントたちが、岸田文雄首相、吉村洋文大阪府知事、松井一郎大阪市長をさかんに持ち上げるので、なんとなく「アベやスガよりマシなのかな」と誤解している人が増えているようだ。

冗談ではない。もし岸田に聞く力があるのなら、まずは森友事件被害者の赤木雅子さんの話を聞くべきだ。夫である俊夫さんがなぜ自殺しなければならなかったのか?公文書を改ざんしてまで隠したかったこととは何だったのか? あろうことか雅子さん側の請求を「認諾」し、1億円超もの賠償金を支払って事件の真相を闇に葬ろうとしている。

国有地をタダ同然で「売却」し、その記録(公文書)を税金で改ざんしたうえに、その真相を税金で覆い隠したわけだ。アベや麻生太郎、石原伸晃や公明党山口那津男の言うことは聞いても、赤木雅子さんや福島原発事故の被災者、沖縄辺野古新基地建設に悩まされている人たちの声は聞かない。

たしかに岸田には国会で必ず「はい」と答えて、与野党議員に答弁するように、ソフトなイメージがある。また日本共産党の田村智子参議院議員によると、NHKの日曜討論で同席した際、何を質問しても「うーん、そうですね。あーそうですか」。誰かのように気色ばんで「何を言ってるんですか!」など逆上こそしないものの、全然議論にならないという。

そう、岸田は「聞くだけの男」。今回の「認諾」は、「総理、アベ元首相が早くあの裁判を終わらせてくれ、と言ってますよ」とせっつかれて「まぁアベちゃんが言うんだから仕方ないな」。この程度の「決断」だったのではなかったか、と想像する。

こうして日本の東で「聞くだけの岸田」が国民の期待を裏切り続けているわけだが、西には「言うだけの吉村・松井」がいる。

昨年10月分の文書通信交通滞在費(文通費)が、新たに当選した衆院議員に在職1日で100万円支給されていた問題に、吉村はいち早く「100万円の札束、満額支給らしい。領収書不要、非課税。これが国会の常識、おかしいよ」とツイートしたが、これが見事なブーメランとなって自身に刺さってしまった。

時は2015年の大阪都構想住民投票。僅差で敗れた橋下徹が市長を辞任、後継者として立候補を表明したのが当時衆院議員だった吉村だった。9月26日の時点で議員辞職を表明したにもかかわらず、なぜかすぐには辞職せず、10月1日に辞めたので、「100万円の札束、満額支給」されたのだ。

これはブーメランどころではなく、吉村の方がより悪質だ。いま問題になっている文通費は、たしかに1日で満額支給されたのだが、岸田が選挙を一週間早めて10月31日に実施したために、たまたま「1日で満額」となったものだ。吉村の場合は9月末でも辞職できたのに10月1日まで引っ張って辞職。これは「確信犯」である。

受領直後、15年10月6日に行なわれた「ニコニコ生放送」での橋下・松井・吉村鼎談でこの文通費を指摘された吉村は「もうちょっと内緒にしてもらったら(笑)」「あれは第二の財布ですから」と答えている。

吉村にはさらに同様の疑惑がある。昨年末の週刊文春12月23日号に「吉村知事 市議の時も在職2日で316万!」の見出しが躍った。記事によれば、大阪市議となっていた吉村が14年11月25日に維新の党から衆院選への公認を受ける。吉村はこの時もすぐには辞職せず、12月2日に辞職して、12月分の報酬と冬のボーナスを満額受給している。ボーナスは12月1日が基準日なので、2日に辞職すれば満額支給されるのだ。

Tsutenkaku

 

・塩野義イソジンとアンジェスワクチン

振り返ってみれば20年8月4日の「イソジン会見」が「言うだけ吉村」の典型だった。もともとあの記者会見は二部構成で、一部はミナミの飲食店に対して「8月6日から20日まで休業を要請する。これに対して協力金を出しますよ」という内容。

そして2部に移る。松井と吉村が、わざわざ机にイソジンを並べて、吉村は「ポピドンヨードのうがい薬を使うと、陽性者がウソみたいに減っていく。コロナにある意味打ち勝てるんじゃないかと思っている」と大見得を切る。ご丁寧にも「1日4回、8月20日まで集中的にうがいを励行してもらいたい」と念を押した。

このあと街は大パニックになり、薬局からイソジンが消える。そしてイソジンを販売する塩野義製薬の株価が上がった。会見を生中継した読売テレビの「ミヤネ屋」に出演していたテリー伊藤が「インサイダー取引をやろうと思えばできた」と発言。実際に「ミヤネ屋」は一時間前に記者会見の内容を知っていた。科学的根拠が全くないことがすぐにバレて、騒動が収束したのはご存じのとおり。

「言うだけ吉村」は20年4月に突如として「大阪大学と創薬ベンチャーのアンジェスがワクチンを共同開発している。早ければ半年後の9月には実用化する」とぶち上げた。このあと、アンジェスの株価は急騰。しかしワクチンはできず株価は急落。アンジェスの森下竜一阪大教授は東京・麻布十番に会員制のワインバーを所有し、アベ&維新と昵懇の仲で、アベとアッキー、そしてあの加計孝太郎が参加するゴルフコンペに参加、16年には「日本万博基本構想」の委員に就任している。吉村ができもしないワクチンを宣伝→アンジェス株が急騰。これが記者会見後に起きた事実である。

「言うだけ松井」も色々とやらかしている。直近では「30人の大宴会」。これをすっぱ抜いた写真週刊誌フライデー(12月24日号)によれば、松井の地元で八尾市や羽曳野市などを地盤とする大阪十四区で当選した青柳仁士議員の祝勝会で、八尾・羽曳野・柏原の3市長にそれぞれの市議など総勢30名の大宴会。会場となった焼鳥屋を予約したのは松井自身、幹事は柏原市選出の中谷恭典大阪府議だった。

この中谷は21年4月にコロナに罹患すると、大阪府下の自宅療養者が1万4000人を超えるなか、すぐに入院して「議員特権ではないか」と批判された人物である。

午後6時半に始まった宴会が終わったのは3時間がたっぷり過ぎたあと。この記事には店からポケットに手を突っ込んで出てくる松井を、奥田信宏八尾市議が深々と頭を下げて出迎える写真が添えられている。まるで「その筋の人々」のようだ。

吉村と松井は「同一テーブル4名以内、2時間以内」と要請していた張本人である。大阪府・市は「少人数会食などの要請に反して会食していた」と昨年7月に1474人の職員を処分している。松井は定例の記者会見で「祝勝会ではなく反省会」「人数の制限、アッパーないよ」「何か問題あります?」と開き直っていたという。ついでに言うと、心斎橋にあるこの店に、松井は公用車でやってきた。市長動静には当日は「公務なし」。部下は処分するが、自分には大甘なのである。

 

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西谷文和 西谷文和

大阪府吹田市役所勤務を経て、フリージャーナリスト。NGOイラクの子どもを救う会代表。新刊『自公の罪 維新の毒』(日本機関紙出版センター)。

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