「文通費問題」はただの〝ブーメラン〞ではない 維新の会は嘘だらけ
政治・問題の根本をあえて報じない在阪マスコミ
「言うだけ吉村・松井」がどんどん独裁化していった最大の理由に、在阪マスコミの責任がある。この久保校長の至極まっとうな「提言」も、ほとんど中身を議論せず、「市長vs校長」の戦いとして面白おかしく報道した。
問題の根本は、コロナ禍で子どもたちの学ぶ権利をどう保障するか、なぜ他市は通常授業なのに大阪市だけが突出して目立つことをさせられたのか、果たして市長がこれほど露骨に教育に介入してもいいのか、などのはず。しかし、維新への批判はほとんど封殺されてしまう。それはなぜなのか?
その答えはカジノと大阪万博。「吉本興業と維新、関西財界がカジノ利権で結託しているから」だ。IR は統合型リゾートなので、カジノ以外に大規模ホテル・国際会議場・劇場などが建設される。吉本興業はこの劇場の運営権を手に入れる予定なのだ。
万博とカジノ予定地の夢洲に地下鉄を通すとなれば、ゼネコンは巨額の公共工事を受注することになる。ギャンブル中毒者が増えれば、サラ金業界は「太い客」をつかむことができる。そしてゼネコン・サラ金・そこに融資するメガバンクはテレビの最大のスポンサーの一つである。
実は大阪都構想も利権まみれだ。大阪市を解体すれば区役所の整備・統廃合が必要になるし、国民健康保険などのシステム統合、はたまた道路標識の書き換えや、職員の名刺・ハンコに至るまで様々な経費が必要になる。
今、吉村と松井は22校ある大阪市立の高校を大阪府へ移管しようとしている。「市から府へ移動するだけ」に見えるが、実はここにも利権が存在する。橋下知事の時代に府では教育基本条例が定められていて、「3年連続定員割れの府立高校は廃校」にされてしまう。
すでに相当数が廃校になり、その跡地にはマンションが建設されたりしているが、大阪市立の高校は地価の高い大阪市内に建っていて、多くが定員割れ寸前だ。府に移管されれば早晩廃校になってしまいかねない。大阪の不登校数はダントツで全国ワースト。進学校生徒や中間校も必要だが、困難校と呼ばれる高校もその地域にとってはかけがえのない存在で、一度廃校にしたらおそらく2度と復活しないのである。こうしたことをほとんど報道してこなかった在阪メディアの罪は深い。
1年半後に迫る大阪市長選・知事選までに「吉村、松井の毒」をどれだけ消毒できるか、これが大阪の命運を握っている。
(文中・敬称略)
(月刊「紙の爆弾」2022年2月号より)
大阪府吹田市役所勤務を経て、フリージャーナリスト。NGOイラクの子どもを救う会代表。新刊『自公の罪 維新の毒』(日本機関紙出版センター)。