鳥越俊太郎氏の「あめりか記者修業」に想う異文化(宗教)論

浜地道雄

ISF(独立言論フォーラム)の編集長、木村朗氏(鹿児島大学名誉教授)の知己を得たのは2018年、「平和学の父」ガルトゥング教授の来日講演だった。 

【第190回】ノーベル平和賞(日本被団協と九条の会に)考(7) – 浜地道雄の「異目異耳」

氏の「平和教育」に感服し、以来厚誼を頂いている。氏は「新しい形のメディア」を目指すISFの普及に努めておられる。

そのISF主催イベント「鳥越俊太郎さんとの茶話会」に出席した。2月26日。

ISF主催トーク茶話会③:鳥越俊太郎さんを囲んでのトーク茶話会のご案内 | ISF独立言論フォーラム

82歳という鳥越さんは意気軒高。それこそ生い立ちから、学生生活、そして毎日新聞社就職、休職しての米国での「修業」。さらに、イラン(テヘラン)駐在と種々経歴を語り、勿論現下の「国際社会における日本の立ち位置」を解説してくれた。

さて、終わってからの記念写真。

茶話会のあと、記念写真

 

鳥越さんが手にしてるのは、自著『あめりか記者修業』(中央文庫)だ。

あめりか記者修業 改版 | Librize

同書には、筆者(浜地)が「グローバル時代にあっての挑戦」を最重要と思う諸点が、詳細に記されている。それは48歳にして初めて「憧れのアメリカ(NYC)」に駐在した筆者の実体験、思い、感慨と合致する。(そのアメリカもトランプ登場あたりからずいぶん変貌してしまった。嗚呼)

難しい研究論文ではない。

日常生活おける苦労話(英語力=ペラペラ度ではないが)や生活の楽しさ、はたまた「異文化ショック」、悲喜こもごもが胸を打つ。そこよりして、筆者が学生や若いビジネスマンに勧めてきた生きた参考書だ。

「あとがき」でもこの「42歳にしての修業」を振り返って「人生の節目」としておられる。(自己都合よる)一年間の休職、それに当たっての苦労話。

丁度サンデー毎日が間もなく始める澤地久枝さんの連載「滄海(うみ)よ眠れ」について、ミッドウエイ戦で戦死したアメリカ軍将兵の遺族取材を現地で手伝うことが条件だったとのこと(p.29)。

なるほど、澤地さん(九条の会発起人)との長く深い縁。

澤地久枝さんの『わが人生の案内人』⇒ 遠藤三郎翁 | ISF独立言論フォーラム

 

さて、「修業地」は米国東海岸、ペンシルバニア州のクエーカ・タウンだ。その名の通り、欧州から移住してきたキリスト教プロテスタントの一派、Quaker クエーカ教徒(Friends派)が1862年に建設した町だ。

酒も煙草も嗜まないクエーカ教徒は信仰心熱くcultとも評されることもある。明仁皇太子(現上皇)の家庭教師だったバイニング夫人や「武士道」を著した新渡戸稲造にその例をみることができる。今でもその「信心深さ」「平和主義」は受け継がれている。

そして、1年間の「修業」が終わり、毎日新聞社に帰任した鳥越さんは希望(米国への駐在)かなわず、イラン、テヘラン支局駐在となる(1984年)。

そこでは思いもよらなかった「異文化(宗教)」に接し、グローバルの実態を肌で痛感する。

例えば、イスラム教で定められている「(成人)男女は席を同じくせず」。某日、市内で(運転手付き)車にのっていた時、突然(宗教)警察の検問にあった。何事かと思ったら(長髪であったところから)女性と見られたわけだ。当時(イラン革命(1978)後)の「掟」では女性は、体は勿論、顔をも男性の目に晒してはならない。しかるに、男(運転手)とベール(=ヒジャーブ)をせずに同乗してる姿が掟に反すると咎められたのだ。

事程左様に「文化(宗教)」は異なる。これに文句をつけてもどうにもならない「犯罪」なのだ。

テヘラン駐在石油担当商社マンであった筆者(浜地)は革命(1978)前は、同地でオペラを楽しんだこともあった。が、革命後の出張で訪れた時、テヘラン空港で引っかかったのが携帯してたFluteだ。「え!(西洋)音楽はだめなのか?」と食い下がる筆者にvery badと英語で見べなく拒絶したのはベール姿の若い女性官吏だった。

さて、突如発生した現下「統一教会」問題の紛糾を見るにつけ、つくづく思う。グローバル化時代にあっての必須項は「異文化(宗教)の理解と共生」だと。

Cultに遭った明治期のグローバル志士たち | ISF独立言論フォーラム

極めて難しくデリケートな課題ではあるがーー。

 

重要付記:ロシア・ウクライナ紛争は「宗教紛争」

J. バイデン米大統領は、ペンシルバニア州出身のカトリック教徒。その教義よりすれば本来同性婚は許されない。

が、2月20日、キエフを電撃訪問。ゼレンスキー大統領とともに、ウクライナ正教会の前に立ち、「援助(武器供与を含む)」を約束し励ました。

ウクライナ正教会にて(AFP)

 

ウクライナ正教は同性婚を許しており(在イスタンブール、コンスタンチノープル総主教の許可)、これがロシア(正教)との紛争の一因であるにも拘わらずー。

松本道弘氏とConstantinopleで語りあった「言葉と文化(宗教)」~ロシア・ウクライナ紛争に想う | ISF独立言論フォーラム

日本(人)には中々分かりにくい宗教教義上の大問題。「妊娠中絶(の可否)」を巡るPro-Choice(選択)かPro-Life(生命)かが、次期大統領選を巡って、米国を二分する大論争ではある。

 

※この記事は、「浜地道雄の『異目異耳』」(2023年2月28日)からの転載です。

原文はコチラ→【第292回】 鳥越俊太郎氏の「あめりか記者修業」に想う異文化(宗教)論 

 

ISF主催トーク茶話会:元山仁士郎さんを囲んでのトーク茶話会のご案内 

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浜地道雄 浜地道雄

国際ビジネスコンサルタント。1965年、慶応義塾大学経済学部卒業。同年、ニチメン(現・双日)入社。石油部員としてテヘラン、リヤド駐在。1988年、帝国データバンクに転職。同社米国社長としてNYCに赴任、2002年ビジネスコンサルタントとして独立。現在、(一財)グローバル人材開発顧問。「月刊グルーバル経営」誌にGlobal Business English Fileを長期連載中。

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