【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

土地規制法と自衛隊の反戦デモ敵視 土地規制法廃止アクションネットワーク事務局   谷山博史さん

谷山博史

明らかになった市民デモ敵視 

3月31日、自衛隊の記者向け資料「予想される新たな戦いの様相」に対処すべき対象にテロ活動などと並んで「反戦デモ」が取り上げられていたことが新聞各紙の報道で明らかになった。市民運動に関わる者なら誰しも「やはりそうか」と思ったに違いない。

イラク戦争後の2004年、復興支援活動及び安全確保活動のためとして自衛隊のイラク派遣が決まった際、自衛隊の情報保全隊が反対運動に関わる市民を監視し個人情報を収集していたことがあったからである。

記者向け勉強会では記者からその記述は不適当ではないかとの指摘をうけたため、自衛隊は資料をその場で回収した。その後「暴徒化したデモ」と修正されたという。

今回このことが新聞報道で明らかになって多くの批判が上がった。しかし鬼木誠防衛副大臣は「表現が不適切であった」とは釈明したものの、内容そのものは否定していない。つまり反戦デモを潜在的な脅威ととらえていることに変わりはない。

否定できないのには理由がある。

 

陸上自衛隊「教範」にみる市民運動への対処

政府が隠そうとする軍事関連情報を発掘し公表している軍事問題研究会は、防衛省に対する情報公開請求によって平成30年度作成の「情報科運用(試行案)」を入手した。

これは陸上自衛隊の「部隊の指揮運用、隊員の動作等に関する教育訓練の準拠」を示した教範である。そこには「国内の反戦運動をも対象とした探知・無力化を図るマニュアル」に相当する内容が示されていることが明らかになった。

同教範によれば、敵の情報活動を無力化する分野を「保全」といい、 保全は、「探知活動」と「無力化活動」に大別される。「探知活動」は「敵の情報・謀略組織とその活動(情報・謀略活動)の解明を目標とする収集活動、及び我の保全対象への敵のその活動の兆候を発見・解明する活動」とあり、「無力化活動」は「秘匿の強化等により敵の情報・謀略活動の無効化するものと、敵部隊等の撃滅、施設・器材等の破壊によりその達成を図るもの」とある。

では「敵」とはだれか。同研究会が別途入手した海上自衛隊の「情報課程」(2006年度)テキストの「保全活動-保全活動の内容スタディーガイド」には「敵国の軍隊またはその他の外国の軍隊による国の独立、平和または安全を害する行為を行う」ものと並列して「国内勢力」が取り上げられている。

そして国内勢力とは「部隊所在地周辺及び行動が予想される地域において、我が使命の達成を阻害し、またはその恐れのある中核となる勢力及びこれに同調する勢力」と定義づけられている。

文書の作成者に陸自と海自の違いはあるが「保全活動」、「国内勢力」といった用語の解釈に基本的な違いはないであろう。

ここから分かることは、反戦運動や反基地運動、基地監視活動を初めとした自衛隊の部隊活動及び施設の運用に支障をきたすような活動、土地規制法で言うところの「阻害行為」を行うものは「敵に準ずるもの」、あるいは潜在的な敵として扱われているということである。

さらに同研究会は「自衛隊が敵と見なす活動は、何も犯罪行為に該当するものにとどまらない」として「保全活動」の教育課目の教務運営指針に「各種運動及び大衆活動等の裏に隠された本音について理解させる」とあることに注目している。そして「市民による合法的な平和運動であっても、その裏に「隠された本音」があると疑うのが保全活動なのである」と結論づけている。

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谷山博史 谷山博史

土地規制法廃止アクションネットワーク事務局、日本国際ボランティアセンター (JVC)前代表/現顧問、市民社会スペースNGOアクションネットワーク(NANCiS)コーディネーター)、日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-Net)顧問著書に「『積極的平和主義』は紛争地に何をもたらすか?!」(編著、合同出版、2015年)、「非戦・対話・NGO」(編著、新評論、2017年)、「平和学から世界を見る」(共著、成文堂、2020年)など多数。

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