【特集】ウクライナ危機の本質と背景

『コンソーシアム・ニュース』より:元米海兵隊将校・国連大量破壊兵器査察官スコット・リター氏の記事翻訳(3)米国の核戦略の行方

乗松聡子スコット・リッター(Scott.Ritter)

軍備管理における新しいアメリカンスタンダード

今日の厳しい現実は、2024年の選挙で有力な大統領候補を擁立する2つの可能性、民主党全国委員会とMAGA共和党のいずれも、米国の核態勢や基本的な軍備管理政策のいずれについても、有意義で前向きな変化をもたらす立場にないことである。

その結果、アメリカ国民、そして世界全体が、軍備管理条約で定められた意味のある制限に縛られることなく展開される、米ロ間の大規模な核軍拡競争を避けられなくなるのである。

これは災害のレシピに他ならない。無知に基づく恐怖の魔女の酒は、意味のある対話をする気がもはやない2つの国がもたらすそれぞれの核の脅威に対する懸念を和らげるために設計された査察の欠如によって拡大し、その結果、黙示録的な奈落の淵に立たされることになるのだ。

要するに、バイデン/民主党のエスタブリッシュメントとトランプ/MAGA共和党のいずれかに投票することは、核武装したロシアンルーレットを続けることに賛成する投票であり、そこにはただ一つの確信が存在する-最終的にピストルは作動するのである。しかし、この場合、それはピストルではなく、核戦争につながる核兵器であり、私たちが現在知り、理解している地球上の生命の終焉をもたらすものである。

2月19日にワシントンD.C.で開催された集会は、独立候補として、あるいは各政党組織内の異端児として、大統領候補となりうる正気の声のプラットフォームを提供した。タルシ・ガバード、デニス・クシニッチ、ロン・ポール、ジミー・ドーアらは、核兵器がもたらす脅威と、意味のある軍備管理を通じて核兵器を制御する必要性を訴えた。

しかし、バイデンやトランプ、あるいはその代理人と表舞台で競い合えるような軍備管理の「基準」となるようなものを文書にした者はいない。さらに、コメディアンであるドーア以外、これらの人物は誰も出馬の意思を表明しておらず、少なくとも当面は、軍備管理およびアメリカの核態勢に関する第3の選択肢という考え方は無意味なものとなっている。

ジョン・F・ケネディ元大統領の甥であるロバート・F・ケネディ・ジュニアが、民主党候補としてバイデンに挑戦する意向を表明した。現時点ではケネディ氏は望み薄のようですが、今から2024年11月までの間にバイデン氏が心身ともに衰え、再起不能になる可能性が高いことに加え、カマラ・ハリス副大統領の大統領候補としての力不足もあり、民主党の土俵は開かれる可能性があります。

ケネディの発表により、ケネディ自身が候補者となるか、あるいは民主党が選ぶどのような既成の人物に挑戦するかという立場になる。

問題は、ケネディが軍備管理に関する新しいアメリカン・スタンダード、つまりトランプがもたらす強引な傲慢さなしにトランプ・スタンダードの長所を取り入れたものを明示する意思や能力があるかどうかということだ。

ケネディは、軍備管理や米国の核態勢に関する詳細な立場を公表していない。しかし、最近の私との会話の中で、彼は叔父であるジャック・ケネディの遺産と、その遺産からどのように指導を受けたかについて話した。

それが誰であったとしても、ケネディ大統領がキューバ危機を解決するために示した知恵と忍耐を引き出せる人間は、軍備管理に関しても正しい道を歩むことができるだろう。

スコット・リッターは、元米海兵隊の情報将校で、旧ソビエト連邦で軍備管理条約の実施、ペルシャ湾での砂漠の嵐作戦、イラクでの大量破壊兵器の武装解除の監督に従事した。近著に『Disarmament in the Time of Perestroika』(クラリティ・プレス刊)がある。

記載された見解はあくまでも著者のものであり、コンソーシアム・ニュースの見解を反映したものとは限りません。

元記事リンクはこちらです

 

★3本の翻訳記事のリンク

『コンソーシアム・ニュース』より:元米海兵隊将校・国連大量破壊兵器査察官スコット・リター氏の記事3本連続翻訳

(1)軍備管理かウクライナか?
http://peacephilosophy.blogspot.com/2023/04/scott-ritter-arms-control-or-ukraine.html

(2)ウクライナ後の軍備管理を再考する
http://peacephilosophy.blogspot.com/2023/04/scott-ritter-reimagining-arms-control.html

(3)米国の核戦略の行方
http://peacephilosophy.blogspot.com/2023/04/scott-ritter-future-of-us-nuclear.html

 

※この記事はカナダ・バンクーバー在住のジャーナリスト・乗松聡子さんが運営するPeacePhilosophy Centreの記事(『コンソーシアム・ニュース』より:元米海兵隊将校・国連大量破壊兵器査察官スコット・リター氏の記事3本連続翻訳(3)米国の核戦略の行方 Scott Ritter: The Future of US Nuclear Strategy – From Consortium News (Japanese Translation with permission)からの転載です。

 

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乗松聡子 乗松聡子

東京出身、1997年以来カナダ・バンクーバー在住。戦争記憶・歴史的正義・脱植 民地化・反レイシズム等の分野で執筆・講演・教育活動をする「ピース・フィロ ソフィーセンター」(peacephilosophy.com)主宰。「アジア太平洋ジャーナル :ジャパンフォーカス」(apjjf.com)エディター、「平和のための博物館国際ネッ トワーク」(museumsforpeace.org)共同代表。編著書は『沖縄は孤立していない  世界から沖縄への声、声、声』(金曜日、2018年)、Resistant Islands: Okinawa Confronts Japan and the United States (Rowman & Littlefield, 2012/2018)など。

スコット・リッター(Scott.Ritter) スコット・リッター(Scott.Ritter)

元米海兵隊の情報将校で、旧ソビエト連邦で軍備管理条約の実施、ペルシャ湾での砂漠の嵐作戦、イラクでの大量破壊兵器の武装解除の監督に従事した。近著に『Disarmament in the Time of Perestroika』(クラリティ・プレス刊)がある。

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