【連載】百々峰だより(寺島隆吉)

腐敗・堕落したアメリカ民主主義: ヒラリー・クリントンの名門コロンビア大学教授就任が意味するもの

寺島隆吉

ところが、ヒラリー・クリントンとは,このような人物なのに、名門コロンビア大学は彼女を教授として就任させたのです。
このことを報道した先述の記事は、これについて次のように述べていました。

同大学のリー・C・ボリンジャー学長は木曜日(1月5日)、この決定を発表し、元政治家は2月からコロンビア大学国際・公共問題学部の「実務担当教授」に任命されると述べた。
ボリンジャー学長は、「特にグローバルな政治や政策、女性リーダーの支援に焦点を当てたさまざまな主要な取り組み」を担当するとし、「民主主義の刷新、女性や若者の効果的な関与のための取り組みの推進」に焦点を当て、コロンビア・ワールド・プロジェクトの学長補佐を務めることも明らかにした。

クリントン自身は、この人事についてソーシャルメディアの投稿で、「世界の最も差し迫った課題の解決に貢献する」ことと、「次世代の政策指導者を育成することに尽力する」コロンビア大学を称賛した。
「このような大学に教授として参画できることにワクワクしている」とも述べた。

コルンビア大学と言えば、ハーバード大学やプリンストン大学などと並んでアメリカの私立名門大学として世界のその名を馳せています。
慶応大学法学部を卒業しNHK国際局などを経て、コルンビア大学大学院ジャーナリスト学科で修士号を得た写真家・吉田ルイ子が在籍した大学としても有名です。
私は彼女のルポルタージュ『ハーレムの暑い日々』(講談社)を読み、感激したので、客員教授として短期留学する機会があったとき、コロンビア大学テーチャーズ・カレッジを選びました。
そしてコロンビア大学のそばで黒人街として知られていたハーレムにも、しばしば出かけました。知人や友人が危険だから近寄るなと言われていたにも関わらず、そこに出かけたのは、『ハーレムの暑い日々』を読んでいたからでした。
(ちなみに、コロンビア大学はニューヨーク「セントラルパーク」の北端に位置しています。)
しかし、その名門大学が、ポール・クレイグ・ロバーツ元財務次官が「戦争犯罪人」「殺人ばばあ(婆)killer bitch」と名指ししている人物を教授として採用することになったとは、驚きの一語でした。これでは「名門大学の名が廃(すた)る」と思ったのです。

とはいえ、現在のアメリカの左翼・リベラルは死滅しています。
というのは、「初の黒人大統領」としてもてはやされたにもかかわらず世界で初めて無人爆撃機爆撃機ドローンを使い、アフガンニスタンで大量の民間人を殺したのが、ノーベル平和賞を受けたバラク・オバマ大統領(当時)でしたから。
そして、2014年のウクライナのクーデター政権を是としたのも、オバマ大統領でした。
しかも、そのオバマ大統領の下で国務長官を務めたのが、ヒラリー・クリントンでしたから、コロンビア大学の学長の頭が狂ってしまったのも無理はないのかも知れません。

とはいえ、2016年の大統領選でドナルド・トランプに敗れた後、ヒラリー・クリントンは、「プーチン大統領がトランプと共謀してアメリカの大統領選挙に介入した」とする、いわゆる「ロシアゲート」陰謀論の最も有力な支持者の一人になりました。
彼女としては、「初の黒人大統領」として名を馳せたオバマ大統領のあとを引き継いで、自分も「初の女性大統領」としてアメリカ史にその名を残したいと思っていたでしょうし、大手メディアも間違いなく彼女が次の大統領になると書きたてていましたから、トロンプ大統領には「恨み骨髄」だったことでしょう。

しかし、FBIその他を使ってどれだけ調べても、トランプ大統領が裏でプーチンとつるんでアメリカ大統領選挙に介入したとする証拠は何一つ出てきませんでした。
彼女が政界を去って,コロンビア大学教授として転身を図ったのも、このような結果だったのではないかと私には思われます。

現在のアメリカはバイデン大統領がウクライナを「CannonFodder(大砲の餌食)」として使い、ウクライナ人の最後の一人までもロシアと戦わせるつもりのようです。ロシアを弱体化し、あわよくば政権転覆までもっていくのがバイデン政権の狙いですから。
その証拠に、今のウクライナにおける戦争は、ペンタゴン(国防総省)からの調査分析を請け負うことを目的として設立された総合シンクタンク「ランド研究所」が、2019年に立案した計画通りに進行しています。

*Ukraine, It Was All Written in the Rand Corp Plan
「いまウクライナで起こっていることは、すべて3年前のランド研究所のプランに書かれていた」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-836.html(『翻訳NEWS』2022/03/20)

このマンリオ・ディヌッチ氏(受賞歴のある作家、地政学的アナリスト、地理学者、イタリア・ピサ在住)の書いた上記の記事は、次のような言葉で締めくくられていました。

3年前にランド研究所の計画を報じた論文は、次のような言葉で締めくくられている。
「計画のいくつかの選択肢は、実際には同じ戦争戦略の別の形態に過ぎず、その犠牲とリスクの代償は我々全員が支払うことになる」。
私たちヨーロッパ人は、今それを支払っており、もし私たちがアメリカとNATOの戦略の使い捨ての駒であり続けるなら、ますます高価な代償を支払うことになるだろう。

そして実際、アメリカの要求に従ってロシアに経済制裁を仕掛けたEUは、その「そのブーメンラン効果」で苦しんでいます。石油や天然ガスがロシアから入ってこないので多くの企業は倒産の危機にあるからです。
まさに「ハラキリ(腹切り)」の言葉どおりの自殺行為です。
しかも、この自殺行為をEU諸国に強いているバイデン政権は、現職だったトランプ大統領を、ツイッターなどのソーシャルネットワークを使って「悪魔化」して、大統領選挙を勝ちとったのでした。
昨年11月の中間選挙でも、出口調査では圧倒的に共和党が勝利すると思われていたのに、そして共和党が勝てばアメリカによるウクライナ援助はストップすると思われていたのに、この逆転劇が実現しなかったのも、バイデン大統領親子のウクライナにおける不正事件を報道するメディアを、バイデン政権が徹底的に抑圧したからだと言われています。

しかし大富豪イーロン・マスクがツイッターを買い取り、「ツイッター社の幹部がバイデン政権からどのような圧力を受けていたか」を、ツイッターに保存されていた資料を使って暴露し始めましたから、ようやくその実態が知られるようになってきました。次の記事は、そのような実態の一角を示すものです。

New Twitter bombshell: How American spies used false claims of Russian election interference to bring the tech giant to heel(ツイッター・ファイルの新たな爆弾:ロシアの選挙干渉という虚偽の主張を利用して、アメリカの連邦捜査局FBIが巨大なハイテク企業を屈服させた方法)
https://www.rt.com/news/569389-politicized-xenophobic-witch-hunt/
RT 2023年1月4日

上記の記事の冒頭は次のように始まっていました。

今週、ジャーナリストのマット・タイビは、#TwitterFilesの2つのスレッドで、巨大メディアとアメリカの国家安全保障機関との共謀について、今までよりもさらに大きな暴露をおこなった。
元ローリングストーン誌のライターである彼は、民主党からの政治的圧力により、ツイッター社の会社幹部が、「同社のウェブサイトがロシアによって広範囲に利用されている」という嘘を、無理やり受け入れさせられていたことを暴露した。
これは世論に非常に大きな衝撃を与えた。

これが世界の民主主義を主導すると豪語し、その旗の下にゼレンスキー大統領に武器を提供してきたバイデン政権の実態なのです。
だからこそ、ゼレンスキー政権が国内の反体制勢力を徹底的に弾圧し、これに抵抗する人物を「暗殺リスト」(Mirotvorets)に載せて殺してきたことに、バイデン大統領が何も異を唱えなかったのも当然と言えます。
このような実態では、将来はウクライナの地にウクライナ兵が誰もいなくなりが、この地で戦っているのは、NATO軍とアメリカ兵士だけということになりかねません。なぜならEU幹部も「すでにウクライナ軍の死者は10万人を越えたと言っているくらいなのですから。

それに引き換え、ロシア兵の死者はその10分の1と言われています。このままではウクライナの敗北は眼に見えています。
元民主党政権幹部が、「ウクライナにはもう時間がない」と言って、緊急にEU諸国にウクライナへの更なる武器援助を求めたのは、このような彼らの焦りを示しているものでしょう。次の記事を見てください。

*Ukraine running out of time – former US officials (ウクライナには時間がない、と元政府高官)
https://www.rt.com/news/569537-rice-gates-ukraine-time/
RT 7 Jan, 2023

この記事の冒頭は次のように始まっていました。

コンドリーザ・ライス元米国務長官とロバート・ゲイツ元国防長官は、ウクライナの経済と軍がほぼ完全に西側からの救済に依存しており、劇的な好転がない限り、勝利のチャンスは失われつつあることを認めている。

ロシア軍による冬の大攻勢はまだ始まっていませんが、それが始まるとウクライナ軍の敗北は決定的になると思ったからこそ、ライス元米国務長官とゲイツ元国防長官は、重い腰を上げてEU諸国に訴え始めたのでしょう。

しかしEU諸国の民衆は逆に、「一刻も早く戦争を終わらせるためにウクライナへの援助を止めろ」という声をあげ始めています。
「ウクライナに武器援助を続けているかぎり、ゼレンスキー大統領はロシアとの和平交渉のテーブルにつくことはないからだ」
ところが日本の大手メディアは、このようなEU民衆の声を、私たちに伝えたことはありません。

それどころか、いまバイデン大統領は、ウクライナと同じ役割を台湾にやらせ、中国との戦争をもくろんでいます。
そして同時に、NATO軍と同じ役割を日本の自衛隊にやらせようとして、岸田政権に圧力をかけています。
それが、岸田政権に高価な武器を買わせ、日本政府による「沖縄諸島への自衛隊基地拡張」と「国民への増税」となってあらわれています。

私たちは、アメリカの圧力の結果、EU諸国がウクライナ戦争で疲弊しつつあるのを目の前にしながら、このような事態から何も学ぶ力がないのでしょうか。

 

百々峰だより(寺島隆吉)2023/01/9 http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-584.html  からの転載記事

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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