【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第23回 アゾフスタル製鉄所の完全解放!!

寺島隆吉

ドイツの一流週刊誌『シュピーゲル』が、解放され始めた市民の証言をオンラインに載せた直後にそれを削除するという事件が起きました(第6章参照)。

自分たちがいままで書いてきたこととあまりに違うので慌てて削除したのだと思われますが、Newsweek誌には、まだ良心が残っていたようです。

以上の事実をふまえると、オンライン署名(段落5~6)が次のように訴えていたことが、いかに事実に反していたかが分かるはずです。

(5) ロシア連邦軍は戦争規定に違反し続けています…彼らは交戦規則に違反し、非伝統的な武器を使用し、 民間人や負傷した兵士を攻撃し、倒れた兵士の遺体に毎回、意図的に暴行を加えています。

(6) 非人道的な状況下にあるにもかかわらず、 ウクライナ軍は、 アゾフスターリ工場の領域だけは統制しています。アゾフスターリ工場は、 特に民間人や負傷者の避難所となっています。 このような状況は、 ロシア連邦が人為的に作り出した、 真の人道的な大惨事です。

上の(6)では、 「アゾフスターリ(ママ)工場は、特に民間人や負傷者の避難所となっています。このような状況は、ロシア連邦が人為的に作り出した、 真の人道的な大惨事です」と書いています。

が、民間人は製鉄所を避難所として使っていたわけではありません。かれらは強制的に連れ込まれて拉致状態になっていたにすぎません。キエフ軍が民間人を「人間の盾」として使うためでした。

これは、 週刊誌 『シュピーゲル』が削除した証言を、幸いにも別の日刊紙 『ユンゲ・ヴェルト』(2022年5月9日)が保存し乗せていた記事からも明らかです。それは次のようになっていました(翻訳は寺島)

Mariupol : Halbe Wahrheit im Spiegel「マリウポリ: 『鏡 (シュピーゲル) 』 の中の半分の真実」
https://www.jungewelt.de/artikel/425938.mariupol-halbe-wahrheit-im-spiegel.html

「製鉄所から解放された喜び」と「アゾフ大隊に対する怒り」を語るナタリア・ウスマノワ

 

ハンブルク5月9日 (日)

シュピーゲル誌はマリウポルの 「アゾフスタル」製鉄所から民間人を避難させる様子を3分間のビデオで掲載した。その中で、 ウクライナ戦争前に工場に勤務し、子どもや夫と一緒に避難していたナタリア・ウスマノワが発言している。

アゾフ大隊は、恐ろしい2ヵ月の間に何度も彼女の避難を妨げた、と彼女はシュピーゲルのビデオで説明した。

「人道的回廊や避難地の選択について知っていたので何度も脱出を試みたが、不可能でした」

また、このインタビューが抜粋された長い動画が、水曜日にYoutube に載った。 「彼らは私たちを地下室に閉じ込めたんです」とウスマノワは、そのビデオで、より明確に言った。

「ロシア軍は私たちの安全を心配しているはずなのに、その事実を隠していました。何度も何度も『地下室に戻れ!』 と怒鳴られました。脱出した後の避難地については、私の一家はウクライナに帰らないことを決めていました。なぜなら、私にとってウクライナは『国家として死んでいる』からです」

一方、Der Spiegel(シュピーゲル) は、 ロイター通信社から映像素材を入手したが、 「その後、発見された内容の矛盾のため」 、このビデオをサイトから一時的に削除した、としている。

完全解放されたアゾフスタル製鉄所の広大な地下室から出てきたネオナチ「アゾフ大隊」、ウクライナ軍、外国人傭兵

 

このように、ウスマノワさんは、地下室から解放された後の行き先について、 「ウクライナに帰らない」と決めているのです。

大手メディアは脱出した後の行き先はロシア軍が勝手に決めているように報道していますが、ご覧の通り行き先は自分で選択できるのです。キエフに行ってもよいし、ドンバスに残ってもよいし、ロシアに行くことも許されているのです。

ただ彼女は「キエフには行かない。ウクライナは『国家として死んでいる』から」と言っています。この一言だけで、一般市民が、このたびの戦争をどう見ているのかがわかるのではないでしょうか。

また先のオンライン署名では、 「(5)ロシア軍は戦争規定に違反し、非伝統的な武器を使用し、民間人や負傷した兵士を攻撃し、倒れた兵士の遺体に毎回、意図的に暴行を加えています」と書かれていました。

しかし、これが事実に反することは以上の説明から、もう明らかなはずです。それどころか、 「民間人や負傷した兵士を攻撃し、倒れた兵士の遺体に毎回、意図的に暴行を加えています」というのは、むしろウクライナ軍、とりわけアゾフ大隊の日常的行動でした。

というのは、彼らは「ロシア兵を捕虜にすることはない」と言って、むしろ戦争犯罪を誇示していたからです。次の記事は、そのことをよく示しています。

“We will never take Russian soldiers prisoner”: Ukraine’s military flaunts its war crimes「『ロシア兵を捕虜にすることはない』 。ウクライナ軍、戦争犯罪を誇示」( 『翻訳NEWS』2022/04/28)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-893.html

つまり、捉えた捕虜はすぐ殺すことにしていたわけですが、その殺し方も残酷です。ロシア軍の方は、国際法の「戦争法規」に従って捕虜を丁重に扱いますが、キエフ側はそんな配慮はしません。

同じウクライナ人であっても、少しでも「ロシア寄り」だと見れば平気で拷問したり暗殺したりするのですから、ロシア兵捕虜を丁重に扱うはずがありません。次の記事は、そのことを赤裸々に暴露したものでした。

“One Less Traitor”: Zelensky Oversees Campaign of Assassination, Kidnapping and Torture of Political Opposition「『裏切り者を一人でも減らせ」:ゼレンスキーは、政敵の暗殺、誘拐、拷問といった作戦を指揮・監督していた」( 『翻訳NEWS』2022/04/28)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-893.html

事実、ロシア兵捕虜に対するキエフ側の扱いは実に冷酷・残酷なものです。その典型例が、「拷問で目玉をくりぬかれたあと殺されたロシア人捕虜」です。

この兵士は、拷問として右目をくり抜かれたあと殺されています。しかも、それを誇示するかのように、その映像を彼らはTelegramで配信するという冷酷さなのです。

この具体的な写真も、第3章に載せてありますから、ぜひ自分の眼で確認していただきたいと思います。

欧米10のメディアも日本のメディアも、 一貫して、 「ウクライナは被害者」 「ロシアは侵略者」として描いてきました。そしてゼレンスキー大統領を、プーチン大統領という悪魔からウ
クライナ民衆を救う「救国の英雄」として、もてはやしてきました。

しかし、これが大手メディアによって作られてきた虚像であったことは、今までの説明で明らかになったはずです。

とはいえ、ゼレンスキー政権の残虐性は、まだまだ十分に明らかにされたとは言えません。私はその事例をできる限り紹介してきたつもりですが、私の気力・体力が続かず取りこぼしも少なくありません。

しかし最後のダメ押しとして、次にひとつだけ紹介しておきたい事実があります。

それはアゾフ大隊と言われるネオナチの武装集団が、今やウクライナ軍の正規兵として認められ(その結果、今は「アゾフ連隊」と呼ばれている)、キエフ軍の重要な一翼になっているという問題です。

ところがこのアゾフ大隊は、第2次大戦中にソ連に侵攻したドイツナチス軍と共に行動し、 「リヴィウのポグロム」といわれるユダヤ人大虐殺をおこなったウクライナ人部隊の思想を受け継いでいることはあまり知られていません。

実を言うと、私もゼレンスキー大統領とアゾフ大隊の関連を調べているうちに、この「リヴィウのポグロム」について知ることになったのでした。

これは、ポーランド(現在のウクライナ)の都市リヴィウで1941年に起きた大虐殺でした。

この「ポグロム」はロシア語で「破滅、暴力的破壊」という意味だそうですが、この事件で殺されたユダヤ人は約4,000人と言われています。

これについて(最近では権力に迎合する記事を書くようになった)ウィキペディアでさえ、次のように説明しています。(太字は寺島)

事件は、1941年「6月30日から7月2日」 「7月25日から29日」の期間に起き、主にユダヤ系住民が殺害された。ポグロムに関与したのは、 主にドイツ人、 ウクライナ人ナショナリスト、そして市民の自主的な関与であるとされる。

ステパーン・バンデーラの率いた熱心な反ユダヤ主義ウクライナ系ナショナリストグループであるウクライナ民族主義者組織が、6月30日から短期政権を樹立すると、彼らは一斉に民族浄化を訴えるポスターを配布。

民兵団を作り、ポグロムを主導、ユダヤ人の処刑をおこなった。また、市民は、集団で強盗、
性的暴行、暴行、殺人に及んだとされる。

下に書かれている「ステパン・バンデーラ」は、今やウクライナの「国民的英雄」として正式に認められている人物です。そしてバンデーラの率いた「ウクライナ民族主義者組織」の直系を自負しているのが、アゾフ大隊なのです。

ユダヤ人大虐殺「リヴィウのポグロム」。ナチスに協力したウクライナ民族主義武装集団の指導者がステパン・バンデーラだった。

 

ポグロムの特徴の1つは、ユダヤ人女性の虐待と屈辱であった。

 

ですから、今やウクライナ軍の重要な一翼を占めるようになったアゾフ大隊が、ロシア軍捕虜どころかキエフ政権に少しでも異を唱える人物とあれば、 一般市民でも暗殺・誘拐・拷問を日常的に実行して恥じないのは、ある意味で当然とも言えるわけです。

そして「ユダヤ人」を自称しているゼレンスキー大統領が、そのような行為を黙認どころか指揮・監督すらしている、というのは皮肉の極みというべきでしょう。

*「裏切り者を一人でも減らせ」 :ゼレンスキーは、政敵の暗殺、誘拐、拷問といった作戦を指揮・監督していた( 『翻訳NEWS』2022/04/28)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-893.html

しかし、あのユダヤ人虐殺で有名なアウシュビッツにも、 「ゾンダーコマンド」と呼ばれる「ユダヤ人のナチス協力者」がいたのですから、ゼレンスキーのような人物が現れても不思議はないとも言えます。

それはともかく、以上のような経歴を持つアゾフ大隊が、 一般市民を虐殺しても恥じないどころかそれを自慢しているという事例を最後にひとつだけ紹介して、今回の連載をひとまず閉じたいと思います。それを示しているのが次の記事です。

*Azov commander boasts about gruesome photos of executed civilians「アゾフの司令官、処刑した野党活動家たちの陰惨な写真を自慢げに投稿」( 『翻訳NEWS』2025/05/25)
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-927.html

この記事の原文の副題は次のようになっていました。

Ukrainian neo-Nazi gloats over brutally killed opposition activists, wishes their fate on all “traitors”(ウクライナのネオナチは、残酷に殺された野党活動家たちの死体を満足げに眺め、彼らの運命がすべての 「裏切り者」 の運命になることを願っている)

この副題を読んだだけで、その内容が目に浮かぶようです。

が、恐ろしいことに、この指揮官マキシム・ゾーリン(Maksim Zhorin)は、自分たちが処刑した野党活動家の生々しい写真をソーシャルメディアで公開し、笑んでいるのです。

アゾフ大隊指揮官が投稿した「野党活動家の惨殺死体」の顔写真

 

ゾーリンの投稿には、遺体袋に入れられた3人の男性と1人の女性の、ひどく醜く潰された顔の写真が載っていました。これを見ていただければ、ゼレンスキー大統領の本当の姿が見えてくるのではないでしょうか。

(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体2—ゼレンスキーの闇を撃つ—』の第8章から転載)

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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