アメリカによる〝戦争犯罪〞の傷跡、タリバン制圧後のアフガンの現実

西谷文和

2022年2月、1週間の滞在予定でタリバン政権下の首都・カブールに入った。アフガニスタン入国はこれで12度目だが、人々は今までで一番苦しんでいるように見えた。タリバンの圧政で?

いや、アメリカの経済制裁と援助物資の未配で、だ。この事態を招いたのはアメリカだ。勝手に戦争を仕掛け、勝手に撤退し、勝手に経済制裁。ウクライナ問題もあって、アフガンはどんどん忘れられていく。

もちろんロシアによる侵略戦争は暴挙であり、すぐに停戦させるべきだ。その一方でアメリカによるアフガン戦争も決して曖昧にしてはならない。米ロの2大国はどちらも侵略戦争をした。ロシア同様、アメリカの戦争犯罪も追及されるべきなのだ。

・中村哲さんは今でもアフガンのヒーロー

2月12日、ドバイからカブールに飛ぶ。空港の入国審査官は女性だった。タリバン政権になっても、一定数の女性は公職に就いているようだ。空港を出ると、誰もマスクをしていない。43年間戦争が続くこの国では貧困と戦争が一番の問題で、コロナなどに構っていられないということだろうか。

通訳のアブドラと1年半ぶりに再会。以前はジーンズにジャケット姿だったが、今やアフガン民族衣装に身を包み、傍らにはタリバン政権の護衛と運転手。ジャーナリストは全て「アメリカのスパイ?」と疑われるので、「護衛」という名の監視がつくのだ。

空港を出て国道を行く。明らかに通行人が減っている。昨年8月のカブール陥落で、米軍の協力者や復興予算で街を再建していた建設業者など、富裕層が国外に亡命した。その後の経済制裁で多数の失業者が出ている。だから人々は外へ出てこない。そして明らかに女性の姿が激減している。

タリバンと最後まで戦ったマスード将軍の肖像画が描かれた交差点に差し掛かる。なんと肖像画が消えて、代わりにタリバン旗が林立している。権力の移行を実感する。その先は、かつてのアメリカ大使館だ。コンクリート壁には中村哲さんの肖像画が描かれていたが、残念ながらタリバン政権になって消されてしまった。偶像崇拝は厳禁というイスラム主義に基づいているのだが、中村さんは今でもアフガニスタンのヒーローである。「もう少し融通、利かせろよな」、日本語でつぶやく。車内にはタリバンの「護衛」がいる。下手なことは言えない。

中村さんが消されて桜だけになった壁画を通り過ぎると、「俺たちはアメリカをやっつけたぞ」。星条旗が崩れ落ちていく大壁画が新たに描かれている。車内からこの壁画を撮影していると「お金ちょうだい」。少女が手を伸ばしてくる。以前から物乞いの少年少女は確かにいたが、その数が飛躍的に増えている。

「俺たちはアメリカをやっつけたぞ」とタリバンの勝利宣言が大書されている。

 

アブドラが予約してくれていた「スターホテル」へ。玄関は二重の門になっている。さて本日から何度も停電し、外出厳禁の夜が始まる。

・なぜ罪亡き少女は殺されてしまったのか

2月13日、カブール中心部から車で西へ30分、ダシテ・バルチー地区へ。ここは主にハザラ人が住んでいる。地区内には約6千人の小中高生が通うサイド・シャハダー女子校がある。2021年5月8日に同校で大規模なテロが起きて、67名の生徒、9名の通行人が殺されてしまった。

爆発現場の校門を撮影。爆発は3カ所、10分以内に連続で起きた。爆弾を積んだ自動車が下校する女子学生を狙い撃ちにした。慌てて別の門から逃げようとした彼女たちを、別の車が襲った。なぜ罪亡き少女が殺されてしまったのか?

ハックリー校長(女性)によると、それは①私たちがハザラ人だから②インテリジェントな人材を抹消したかったから③女性だったから。

犯行に及んだのはIS(イスラム国)かISに洗脳されたグループとされている。ハザラ人はモンゴル系のシーア派で、多数派のパシュトン人から差別されている。そしてスンニ派のISは、シーア派は殺害してもいいと考えている。2012年10月、隣国パキスタンでスクールバスに乗っていたマララ・ユスフザイさんを銃撃したのはパキスタン・タリバン(TPP)だった。

4名の父親が遺族を代表してインタビューに応じてくれた。ラジヤーブさんは14歳と18歳の2人の娘を失った。4人のうち彼だけがスマホを持っていたので、スマホに残った遺影を撮影。日本からの支援金で学用品を購入して父親たちに配る。学校は冬休みだったので生徒たちの姿はなかった。

女性校長も男性教師も私のカメラを嫌がった。私の後ろにはタリバンの「護衛」がいる。インタビューになれば「タリバン政権下で女子校の授業は再開されるのか」という質問が飛んでくるだろう。下手に答えたら、後で査問されるかもしれない。映像がネットにアップされれば過激派に狙われるかもしれない。まぁそんなところだろう。

この原稿を書いている3月27日、タリバンはやはり女子校の再開を認めなかった。女性はずっと家にいて男に尽くせ、ということなのだろう。

・米軍無人機が空爆した民間人

2月14日、街へ出る。風船売りがいて、 その風船には「I LOVE YOU」と書いてある。「今日はバレンタインデー。でも街は男性ばかり。誰が買うんだろうね」と、アブドラが笑っている。

カブール郊外のホジャ・ボゴラ地区へ。この15番街区にゼマリ・アフマディさんの自宅があった。2021年8月29日、米軍の無人空爆機がこの家のガレージに滑り込んで来た白のトヨタ・カローラを爆撃。その3日前にカブール空港で大規模な自爆テロと銃撃戦があり、アフガン人169名、米兵13名が殺されていた。

米軍無人機の誤爆で亡くなった人々の写真

 

当時、カブールから逃げ出そうとする人々で空港は大パニックになっていた。亡命しようとする人々を狙った卑劣な犯行。すぐにIS-K(イスラム国・ホラサン州)が犯行声明を出した。米バイデン政権は血眼になってIS-Kのメンバーを探していた。

「次のテロを防ぐため」という名目と「何としても復讐してやる」という焦り。「テロリストは白のカローラに乗っている」。この情報をもとに標的を絞り込んだ。しかし無人機に追跡されたのはテロリストではなくゼマリさんだった。

「IS-Kがこの家で爆弾を積み込み、空港を狙いに行くに違いない」。カローラが駐車場に入った時、ミサイルが発射された。周りに7名の子どもが遊んでいた。「お父さんが帰ってきた」と家から出てきた子もいただろう。カローラの隣にはトヨタの4WD車が停まっていた。ミサイルの破片がカローラを爆破し、その破片がこの4WD車を貫き、炎上。車内には燃え残った子ども用のサンダルが散乱している。

その後、白のカローラは撤去され、この4WD車だけが当時の証拠として残っている。殺害されたゼマリさんは、なんと米国系の慈善団体職員だった。米軍は「アメリカに助けを求めている協力者」まで殺してしまったのだ。ずさんな情報に基づく完全な誤爆。1カ月後に米軍は誤爆を認めた。玄関に殺された10名の写真が飾られている。遺族はすでにカブールを去り、今は別の住民が家を修理して住む。残ったのは4WD車と10人の写真だけ。

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西谷文和 西谷文和

大阪府吹田市役所勤務を経て、フリージャーナリスト。NGOイラクの子どもを救う会代表。新刊『自公の罪 維新の毒』(日本機関紙出版センター)。

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