「現状変更」を肯定せよ、反戦志向への告発

昼間たかし

・戸締まりの確認から始まる世界革命への旅立ち

いま、世界を見渡すとあちらこちらで閉塞感を感じずにはいられない。道行く人の視線は下を向き、顔色は常に悪い。社会のあらゆる分野で歯車が少しずつ狂い始めている。

Urban Life.

 

「終わりなき日常」も過去のものになってしまったというが、現実を見れば、ずっと世界は変わらなかった。世界の歴史を変えた事件は、教科書の中だけのものだと思っていた。

1990年代以降だけに限定しても、1.17とオウムがあり、ノストラダムスは来なかったが、9.11があり、3.11もあった。それでも日常は終わらなかった。それぞれの事件で個人の日常は激変したかもしれないが、世界は変わることなく続いている。

こと2010年代後半からはSEALDsのような、いささか政府に反対しているようなフリをして体制メンテナンスにいそしむ詐欺師がなんらかの希望のように語られる絶望的な状況が続いてきた。

そこに、新型コロナウイルスの世界的流行、そしてロシア・ウクライナ戦争である。決して変わることはなくメンテナンスされながら、あと何百年かは続いていくのではないかと思っていた世界が、わずかの期間に音を立てて崩れ落ちている。

1960年代後半、とくに1968年段階の全世界の叛乱状況の中で生まれた多くの戦略論も予期しなかった激変が、教科書中の存在にすぎなかった戦争と疫病によって起こっている。ここに改めて貴賤都鄙(きせんとひ)にこだわらず、あらゆる個が歴史のうねりの中に存在しているのだと、初めて実感している。

そんな時代だからこそ、いま先んじて語り合いたいのは、これからの世界をどう決定づけていくかに尽きる。長らく世界革命とはいかなるものなのかを考えてきた。民衆が蜂起して支配者を吊すのが、それなのだと考えていたこともあった。今となってはあまりにも貧困な発想だったと思う。

これからも、そうした光景はあちこちで起こりうるだろうが、そんなものは世界革命ではない。誰もが想像することのできない圧倒的な運命による歴史の転換、それこそが世界革命なのだろうと思っている。いま世界を揺るがせて、理非を問わない現状の変更を巻き起こしている戦争と疫病こそが世界革命の実態だったようだ。

ここに、世界革命とは大多数の人にとっての圧倒的な不幸でしかないことを認める。だから、逃れることのできない不幸の中に、いかに活路を見いだすかを学ばねばならぬ。いつぞや、外山恒一と話した時に「いざ、朝起きて世界革命が始まっていたらどうするか」を話し合った。

一致したのは「まずは情勢を見極める」ことであった。慌てて玄関から飛び出しては怪我をする。まずは戸締まりを確認して、世界と自分の置かれた立場を熟慮するところから戦いは始まる。

コロナ禍の数年は、まさに情勢を見極める期間だったろう。いくら戸締まりを厳重にしても、いま例外なく追い込まれているのは心理戦である。

各陣営が熱心に取り組んでいるプロパガンダ戦略=情報戦のことではない。戦争で人が無残な死を強いられているなかで、それでも、既成の支配秩序を動揺させる機会を肯定できるかをめぐる内的な戦闘である。

国家同士の争いで小市民的な生活が破壊されることは、許しがたい。できれば人が傷ついたり死んだりすることは避けたい。この間、テレビをつけても、SNSを見ていても、そうした話が土足で踏み込んでくる。それでも、これは決して崩壊はしないと思っていた体制を変革させるものなのだと、冷静に対処する戦いは辛い。

さらに、この先にはもっと多くの死が待っているのだと納得しなくては、話は始まらない。毛沢東の説で3分の1、太田竜の説で半分……世界革命では世界人口のそれくらいは死から逃れることはできない。きっと、私も無残に死ぬだろうから、せめてなにか小さなことでもやり遂げた感を持って死にたいものだと思って、今日を生きる。

だから、パフォーマンスにまみれたゼレンスキーを賛美し、感情を消費するヤツらには、相まみえたくない。あらかじめ死刑が約束された運命の中で、それはあまりにも不毛である。それに費やされる時間を、せめて自分が納得する死のために使いたいのだ。

支配秩序によって強制される、ウクライナを推すのが当然という風潮。それに抗うために、あえて親露派の旗を立ててやろう。変わる世界を、この目で見たいのだ。

(月刊「紙の爆弾」2022年6月号より)

 

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ルポライター。SNSではなにかと怒っている人ばかりなのに疲弊しブロック効率化ツールを導入。セクシーな画像しか表示されなくなった。平和だ。

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