【連載】インタヴュー:時代を紡ぐ人々(前田朗)

第4回 幼稚園児まで差別するのですかー幼保無償化問題で差別のない施策を求める宋恵淑さんに聞くー

前田朗

・朝鮮幼稚園除外の幼保無償化

――朝鮮幼稚園など各種学校の認可を得た外国人学校幼稚園が除外されたまま幼保無償化制度が実施されて2年を経過しました。幼稚園児まで差別する制度が堂々と実施されています。

宋――今時、わざわざ差別的な制度を導入するなんてと、不思議に思います。

――文部科学省は制度の対象外となった幼児教育施設に対する調査事業をしました。そこで改めて幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外について、その問題点を伺います。最初に幼保無償化制度を説明していただけますか。

宋――幼保無償化制度は2019年10月にスタートしました。その前の2018年12月28日に幼保無償化の運用について関係閣僚会議が開かれて、「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」という閣議決定がなされました。

そこでは、各種学校の認可を得ている外国人学校は対象とならないと確認されました。理由は、①各種学校は多種多様であること、②外国人学校の幼児教育施設が「認可外」保育施設にもあたらない、とのことでした。2019年5月、適用対象外のまま、幼保無償化の措置法である改正子ども子育て支援法が成立しました。ですから各種学校の幼児教育施設が幼保無償化制度の対象となるためには、今後の法改正を待たなければならない状況です。

私たちの運動としては、高校無償化除外のように完全に排除されることは阻止したい。幼保無償化からの完全除外を防ぐための「次善の策」を練って取り組んでいるところです。

――高校無償化問題は、学校教育法1条のいわゆる「1条校」である高等学校生徒だけでなく、同じ年代の子どもたち全体への支援策としての無償化でした。「非1条校」も含めて、つまり朝鮮高級学校も含めてすべての子どもに支給されるはずだった。ところが、政治家の不当介入のため、朝鮮高級学校だけ強引に排除しました。

宋――2010年になってから朝鮮高級学校排除の動きが出ました。法律では適用対象なのに、規則を突然書き換えて、無理やり適用対象外にしました。

――朝鮮学校を差別することだけを目的とする「改正」でした。これほど露骨な差別も珍しく、人種差別撤廃委員会から次々と改善勧告が出ました。ところが、政治的理由から朝鮮学校差別が推進され、裁判所もこれにお墨付きを与えてしまいました。

宋――大変残念でした。幼保無償化問題で同じことを繰り返されたくないので、「次善の策」で、なんとか完全に排除されないようにと取り組んでいます。

・すべての子どもの幼児教育

――そもそも幼保無償化とは何なのかを確認しましょう。文部科学省の説明では「幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、すべての子供に質の高い幼児教育を保障するため、幼児教育に係る保護者負担を軽減し、無償化に段階的に取り組む」となっています。子育て世帯の保護者負担軽減の拡充として、21億円が計上されました。年収約360万円未満相当世帯の保護者負担の軽減とされています。

宋――文科省の説明資料では「子育て世帯を応援し、社会保障を全世代型へ抜本的に変えるため、幼児教育の無償化を一気に加速することとされました。幼児教育の無償化は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性や、幼児教育の負担軽減を図る少子化対策の観点などから取り組まれるものです」となっています。

――対象は「幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳の全ての子供たちの利用料が無償化されます」。「0歳から2歳児の子供たちの利用料については、住民税非課税世帯を対象として無償化されます」とされていて、ここには国籍差別も民族差別もありません。

宋――幼保無償化の理念のひとつに、「すべての子どもたちの健やかな成長を支援するもの」とあります。自己のルーツにつながる言語や文化に触れながら自己のアイデンティティを肯定的に育み、健やかに成長できる外国人学校幼児教育施設は、日本に住む多種多様なルーツをもつマイノリティの子どもたちにとってかけがえのない施設で、そのような施設を幼保無償化から除外することは理念にも反することです。


にもかかわらず日本政府は、幼保無償化の対象施設として「幼稚園、保育所、認定こども園に加え、地域型保育(小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育)、企業主導型保育事業(標準的な利用料)」をあげていて、ここに入るかどうかで決まります。

――認可外保育施設はダメということですか。

宋――そうではありません。文科省によると「一般的な認可外保育施設、地方自治体独自の認証保育施設、ベビーホテル、ベビーシッター、認可外の事業所内保育等」の認可外保育施設であっても、「保育の必要性があると認定された3歳から5歳の子供たちを対象として、認可保育所における保育料の全国平均額(月額3.7万円)までの利用料が無償化されます」となっています。

さらに「無償化の対象となる認可外保育施設等は、都道府県等に届出を行い、国が定める認可外保育施設の指導監督基準を満たすことが必要です。ただし、経過措置として、指導監督基準を満たしていない場合でも無償化の対象とする5年間の猶予期間を設けます」とされました。

――すべての子どもを差別なく対象とするのなら、家庭ごとに支給すれば良いのではないでしょうか。

宋――はい。ただ、法律上は家庭ごとではなく、施設ごとにまとめて判断して手続きを進めることになっています。ですから、対象施設をどのような基準と手続きで決定するかが重要になります。

 

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前田朗 前田朗

(一社)独立言論フォーラム・理事。東京造形大学名誉教授、日本民主法律家協会理事、救援連絡センター運営委員。著書『メディアと市民』『旅する平和学』(以上彩流社)『軍隊のない国家』(日本評論社)非国民シリーズ『非国民がやってきた!』『国民を殺す国家』『パロディのパロディ――井上ひさし再入門』(以上耕文社)『ヘイト・スピーチ法研究要綱』『憲法9条再入門』(以上三一書房)『500冊の死刑』(インパクト出版会)等。

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