【連載】鑑定漂流ーDNA型鑑定独占は冤罪の罠ー(梶山天)

第13回 録音テープで学ぶ無実の人の「無知の暴露」

梶山天

一連の取り調べが録音されたカセットテープを全て起こして分析を行った足利事件弁護団の佐藤博史弁護士は「万弥ちゃんの死体は、紐で手足を縛られ、ビニール袋に入れ、さらにリュックに詰められ松田真実ちゃんが発見された渡良瀬川の河川敷の対岸で発見された。このことは、当時新聞報道され、菅家氏も知っていた」と強調する。そのことをテープの続きから確認しよう。

橋本:「……その後は」。
(中略)
菅家:「……あの、紐ですか」。
橋本:「紐」。
菅家:「はい。紐は、あのー、紐とかビニールですか」。
橋本:「うん」。
(中略)
橋本:「いや、ビニールだの紐は何、何かやちったんか、この、あのー、真実ちゃん(注・万弥ちゃんの間違い)を」。
(中略)
菅家:「そのー、何ていうんですか、そのー、ままですと」。
橋本:「ここに置きっぱなしだと」。
菅家:「はい」。
(中略)
橋本:「なんだ、まずいんか。ここに置いたんじゃ」。
菅家:「はい。それで、あのー」
橋本:「どっかへ運ぶっちゅうことか」。
菅家:「はい」。
(中略)
菅家:「それで、紐とかそういうあれを、あのー……取りに」。
橋本:「取りに行ったんか」。
(中略)
菅家:「あのー……貸家の方に行きまして」。
(中略)
橋本:「うん。取りに行って、何もってきたの」。
菅家:「それで、ひ、紐と、ビー、ビニールですか」。
(中略)
橋本「うん。紐取って自転車で戻ってきたの」。
菅家:「はい」。
橋本:「それで」。
菅家:「それで、あのー……来まして、あのー……何ていうんですか……ビニールと……あのー……何ていうんですか……鞄、鞄とかなんとか言ってましたけど」。
橋本・吉村:「ビニールと何」。
菅家:「鞄ですか」。
橋本:「鞄」。
菅家:「ん、あのー……ビニールと……あのー、そのー、……身体を、中に入れるために、ビニールに入れまして」。
橋本:「うん」。
菅家:「で、あの、紐ですか、紐であのー、ちょっと……くる、くるむようにですか」。
橋本:「うん」。
菅家:「……そう風に、包みまして……」。
橋本:「うん、その真実ちゃん(注・万弥ちゃんの間違い)の遺体を」。
芳村:「万弥、万弥ちゃん」。
橋本:「ま、万弥ちゃんの死体を、おー、何したっけ。何で、ビニールで何」。
菅家:「あのー……」。
橋本:「紐は何に使ったんだい」。
菅家:「紐は、あのー……」。
橋本:「紐は何に。万弥ちゃんの死体にどうしたんだい。紐を」。
菅家:「……くるむようにですか」。
橋本:「紐をくるむって、紐は何か、くるむっつったて、紐は縛るだんべ」。
(中略)
橋本:「万弥ちゃん、万弥ちゃんの身体を紐で縛って小さくしたと。それはわかった。その後どうしたの」。
(中略)
菅家:「……ビニールは、あの……身体ですか」。
橋本:「うん」。
菅家:「入れるようにしまして」。
橋本:「ビニールの中に身体を入れた。真実ちゃん(注・万弥ちゃんの間違い)の」。
(中略)

栃木県警の捜査本部が足利事件とは別の未解決事件である福島万弥ちゃん殺害を供述させた場面を録音テープに取っていたものを足利事件弁護団がテープ起こしたものを文書にした一部。

福島万弥ちゃんの取り調べ録音内容の拡大とダウンロードはこちら

 

この日午後2時10分から30分間録音が中断され、その後録音は再開された。

芳村:「菅家さ、あのー話は分かったんだけど、そうすると、神社の後ろで万弥ちゃんを殺したことは間違いないな」。
菅家:「はい」。
芳村:「な。そうすっと、その日は、休みの日じゃなくって普通の日なんだな」。
菅家:「普通の日です」。
芳村:「んじゃ飯は、お昼休みは家で」。
菅家:「食べて」。
芳村:「本城で食ったことはねえんか」。
菅家:「ありますよ。それは、あのー□□□ですか、入った時は家へ行きまして、それから後ー、□□……。はい。そうです。はい。はい」。
芳村:「そうすると、その時は飯を食った後なんだな」。
菅家:「はい」。
芳村:「そうすると、向こうに万弥ちゃんを捨てたのは、夜なんだな」。
菅家:「夜……」。
芳村:「ん。暗かったげ」。
菅家:「暗かった……ですね」。

 

連載「鑑定漂流-DNA型鑑定独占は冤罪の罠-」(毎週火曜日掲載)

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(梶山天)

 

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梶山天 梶山天

独立言論フォーラム(ISF)副編集長(国内問題担当)。1956年、長崎県五島市生まれ。1978年朝日新聞社入社。西部本社報道センター次長、鹿児島総局長、東京本社特別報道部長代理などを経て2021年に退職。鹿児島総局長時代の「鹿児島県警による03年県議選公職選挙法違反『でっちあげ事件』をめぐるスクープと一連のキャンペーン」で鹿児島総局が2007年11月に石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞などを受賞。著書に『「違法」捜査 志布志事件「でっちあげ」の真実』(角川学芸出版)などがある。

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