【連載】塩原俊彦の国際情勢を読む

ノルドストリーム爆破は「親ウクライナ派」の仕業か、あるいは、目くらましか

塩原俊彦

キューバをめぐる大嘘

米国政府はハーシュ氏の主張を「強く否定」した。だが、政府の主張がまったくの嘘であったことが過去に何度もある。もちろん、米国政府だけでなく、日本政府も何度も嘘をついてきた。何しろときの首相が国会答弁だけで100回以上も虚偽答弁を繰り返してきたのだから。この過去の事実を読者も思い出してほしい。

スノーデン氏は自分のツイートに、UPI通信の1961年4月17日付のワシントン電を添付している。そこに何が書かれているかというと、つぎのような内容である。

「ディーン・ラスク国務長官は本日、反カストロ派のキューバ侵攻はアメリカ国内から行われたものではないが、アメリカは参加者の目的に同情的であると述べた。ラスクは、キューバの問題はキューバ人自身が解決すべきものであるが、米国はこの半球における共産主義者の専制政治の拡大に無関心でないと述べた」。

ラスク国務長官は明らかに嘘をついていた。2012年4月17日付の「ニューヨーク・タイムズ」は、つぎのように書いている。

「1959年1月に政権を握ったマルクス主義革命家フィデル・カストロの政権転覆を狙ったピッグス湾事件は、1961年4月17日、約1500人のCIA訓練生がキューバへの侵攻を開始し、失敗した」。

Cancelled Stamp From Cuba Commemorating The Anniversary Of The Victory At The Bay Of Pigs.

 

これが後に分かった真実であり、米国政府はこの事件に関与していたのである。ゆえに、この記事では、つぎのように記されている。

「ニューヨーク・タイムズ紙は、ディーン・ラスク国務長官が、米国がこの事態に関与することを否定したことにもふれている。しかし、米国は攻撃を組織していた。ドワイト・アイゼンハワー大統領時代の1960年にCIAが侵攻計画を策定し、1960年11月に当選したジョン・F・ケネディ大統領にその計画を提示したのである。選挙中、キューバに強硬な態度をとっていたケネディ大統領は、この計画を承認した」。

Havana, Cuba – December 17, 2014: A missile is on display on the grounds of the Parque Historico Militar Morro-Cabana in Havana, Cuba. Located on a grassy hillside and viewable from a public road, it is part of a commemoration of the 1962 October Crisis.

 

このように、米国政府高官であるラスク国務長官は公然と嘘をついていた。同じように、いまの政権の高官はみな大嘘をついている可能性があるとだけ書いておこう。

マスメディアの報道に注意

問題は、この問題に対する報道姿勢にある。欧米各国および日本のマスメディアの報道は総じて及び腰である。要するに、バイデン政権の「悪」を糾弾しようとする姿勢に欠ける。

2013年から2014年にかけてバイデン副大統領とヴィクトリア・ヌーランド国務省次官補がウクライナにおいて行ったクーデター支援、さらに、2021年1月にバイデン大統領が誕生し、5月にヌーランド氏が国務省次官に就任して以降、ゼレンスキー大統領がクリミア奪還を公然と主張するようになったことなどについて、多くのマスメディアがネグっている。

今回、少なくとも「親ウクライナ派」がノルドストリーム爆破にかかわったと主張せざるをえなくなったことで、こうしたマスメディアはどう報道するのだろうか。読者は注意深く見守る必要がある。

 

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塩原俊彦 塩原俊彦

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士。評論家。 著書:(2023年9~10月に社会評論社から『知られざる地政学』(上下巻)を刊行する) 【ウクライナ】 『ウクライナ戦争をどうみるか』(花伝社、2023)、『復讐としてのウクライナ戦争』(社会評論社、2022)『ウクライナ3.0』(同、2022)、『ウクライナ2.0』(同、2015)、『ウクライナ・ゲート』(同、2014) 【ロシア】 『プーチン3.0』(社会評論社、2022)、『プーチン露大統領とその仲間たち』(同、2016)、『プーチン2.0』(東洋書店、2012)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店、2009)、『ネオ KGB 帝国:ロシアの闇に迫る』(東洋書店、2008)、『ロシア経済の真実』(東洋経済新報社、2005)、『現代ロシアの経済構造』(慶應義塾大学出版会、2004)、『ロシアの軍需産業』(岩波新書、2003)などがある。 【エネルギー】 『核なき世界論』(東洋書店、2010)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局、2007)などがある。 【権力】 『なぜ「官僚」は腐敗するのか』(潮出版社、2018)、『官僚の世界史:腐敗の構造』(社会評論社、2016)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた:官僚支配の民主主義』(ポプラ社、2016)、Anti-Corruption Policies(Maruzen Planet、2013)などがある。 【サイバー空間】 『サイバー空間における覇権争奪:個人・国家・産業・法規制のゆくえ』(社会評論社、2019)がある。

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