【特集】ウクライナ危機の本質と背景

ロシア軍事行動の語られざる背景、米国による主権国家破壊戦略

木村三浩

・「米国例外規定」を外せ

現在、日本では9割5分が反ロシアである。プーチン憎しで、保守もリベラルも関係なく、人々の意識はまさに一色となっている。

岩田昌征・千葉大学名誉教授は、「ちきゅう座」のブログ(3月3日付)で、ロシアのウクライナ軍事行動と1999年の米国NATOのユーゴスラビア侵攻を比較し、以下のような興味深い指摘をしている。

〈権威主義国が侵略すると、侵略国は国際的経済制裁を受ける。民主主義国が侵略しても、侵略国は国際的経済制裁を受けない。権威主義国に侵略された国は、国際的経済支援を受ける。民主主義国に侵略された国は、国際的経済封鎖を受ける。権威主義国に侵略された犠牲者は、不幸中の幸いに、世界中の市民社会による感情移入的共感を得る。民主主義国に侵略された犠牲者は、不幸中の不幸に、世界中の市民社会から素気ない挨拶を受ける。世界中の常民社会は、誰に侵略されたかにかかわりなく、侵略された人々の痛みになみだする。〉

西側世界はウクライナを物理的・精神的に後押しし、ゼレンスキーの“善戦”を称揚して事態の長期化を目論んでいる。長期化すればするほど、ウクライナ国民に惨禍がふりかかる。それを止めるために、一刻も早い停戦を急ぐべきであることは言うまでもない。

そのうえで、いつになるかはわからないが、もう一度「ミンスク合意3」を実現するしかない。ロシアはウクライナ東部ドンバス地域の2つの国を承認した。ゼレンスキー大統領は「領土問題は国民投票で解決すべき」と言うが、2国はすでに人民共和国として承認された以上、まやかしにすぎない。

ロシアの平和維持部隊が駐留するだろうし、ドンバスの領事部が日本にも置かれるであろう。今後に向けて、どうやって平和的に折り合いをつけるかの交渉がなされなければ、ウクライナ側から、アゾフ大隊がドンバスを取り戻す闘いを始めるかもしれない。

Ukrainian infantry fighting vehicle

 

現在、世界中に米軍基地が置かれているのも米国のソフトパワー・ハードパワー戦略の結果といえる。しかし、すべての国がそれを心から受け入れているわけではない。

米国にも、国際的な枠組みの順守を求めなければならない。「米国例外規定」を取っ払わなければならない。米国も、「国際社会」の一構成国にすぎないのだ。そして、「米国例外規定」の下で行なわれてきた米国の罪過を清算しなければならない。

ロシアの解体があるかもしれないのと同様、米国も解体、あるいは自壊することがありうる。人種差別や貧困・格差問題をはじめ、国内にひずみはある。それを、経済的な利益共同体として治めているが、危うさを抱えていることは、ドナルド・トランプ前大統領の存在が示している。

「紙の爆弾」5月号で私は天木直人氏と「新大アジア主義」を提言した。突き詰めれば、ウクライナの次は台湾、ロシアの次は中国であり、一刻も早く、アジアにおいて中国・韓国・北朝鮮・日本が争わない仕組みをつくらなければならない、ということだ。

自らの覇権を脅かす主権国家に対して、遠方から第三国を利用し叩き潰す「オフショア・バランシング構想」も米国の基本的な戦略だ。いまはウクライナだが、次に東アジアが狙われたときに、「新大アジア主義」が唯一の現実的な対抗手段となる。

(月刊「紙の爆弾」2022年6月号より)

 

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木村三浩 木村三浩

民族派団体・一水会代表。月刊『レコンキスタ』発行人。慶應義塾大学法学部政治学科卒。「対米自立・戦後体制打破」を訴え、「国際的な公正、公平な法秩序は存在しない」と唱えている。著書に『対米自立』(花伝社)など。

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