【特集】統一教会と国葬問題

安倍国葬に法的根拠は絶対にない、「国葬令」はなぜ廃止されたか

足立昌勝

・国葬に法的根拠はない

話を現代に戻そう。岸田首相は7月14日の記者会見で、国葬の実施について、内閣府設置法で内閣府の所掌事務として定められている「国の儀式」として閣議決定をすれば実施可能との見解を示した。法的根拠を事前に内閣法制局と検討したとも強調した。

Chiyoda, Tokyo, Japan-September 2, 2019: Cabinet Office Japan: The Cabinet Office is an agency of the Cabinet of Japan.

 

たしかに内閣府設置法には、所掌事務を定めた第4条第3項第33号に「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)」との規定がある。この「国の儀式」が国葬実施の根拠となるのであろうか。

まず第4条第3項は、「前二項に定めるもののほか、内閣府は、前条第2項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる」と規定し、無条件に国の儀式を内閣府の事務としているわけではない。そして、33号で「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)」と規定されている。

前提である第3条第2項の任務とはどのようなものか。それは次のように規定されている。

〈内閣府は、内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。

2 前項に定めるもののほか、内閣府は、皇室、栄典及び公式制度に関する事務その他の国として行うべき事務の適切な遂行、男女共同参画社会の形成の促進、市民活動の促進、沖縄の振興及び開発、北方領土問題の解決の促進、災害からの国民の保護、事業者間の公正かつ自由な競争の促進、国の治安の確保、個人情報の適正な取扱いの確保、カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保、金融の適切な機能の確保、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けた施策の推進、政府の施策の実施を支援するための基盤の整備並びに経済その他の広範な分野に関係する施策に関する政府全体の見地からの関係行政機関の連携の確保を図るとともに、内閣総理大臣が政府全体の見地から管理することがふさわしい行政事務の円滑な遂行を図ることを任務とする〉。

このうち、「男女共同参画社会の形成の促進」以降の事務については、「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること」とは無関係である。したがって、安倍国葬の根拠と考えられるのは、最初に規定されている「皇室、栄典及び公式制度に関する事務その他の国として行うべき事務の適切な遂行」となる。

しかし国葬が、「皇室、栄典及び公式制度に関する事務」に該当しないことは明白である。そこで、残るは「その他の国として行うべき事務」に該当するか否かである。

国葬が「国として行うべき事務」に該当するのであろうか。「国として行うべき事務」には、法令の根拠がなければならない。このことは、国としての義務である。法律に規定のない国葬は、国が行なわなければならない事務ではない。

そのように考えれば、内閣府設置法第4条第3項第33号を根拠に国葬を実施することはできない。

すでに述べたように、国葬令は失効し、それに代わるものは存在しない。いくら岸田首相が強弁しようが、安倍国葬についての法的根拠はなく、そのための予算支出も違法そのものである。

ところで、仮に国葬令が現在も存続していたとして、つまり法的根拠があったとして、安倍元首相は国葬令が規定する、民間人が国葬の対象とされるべき要件「国家ニ偉勳アル者」に該当するのであろうか。これは、国家に立派な業績を残したものを意味している。

安倍元首相は在任中に「立法府の長」「私は森羅万象を担当している」とまで語るなど、自己を大統領のような権限を有する者として振舞い(立法府の無視)、モリカケ桜で行政を私物化し、自衛隊の海外派兵や、大企業優位な新自由主義政策の推進等々を続けた。国家にとって非常に大きな足跡を残した者とは絶対に認めることはできない。

 

(月刊「紙の爆弾」2022年10月号より)

 

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足立昌勝 足立昌勝

「ブッ飛ばせ!共謀罪」百人委員会代表。救援連絡センター代表。法学者。関東学院大学名誉教授。専攻は近代刑法成立史。

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