【連載】安倍晋三の射殺と三代の腐れ縁(藤原肇)

第3回 安倍晋三の射殺と三代の腐れ縁②

藤原肇

日本では小泉と安倍のコンビが、新自由主義者の竹中の手で、米国のネオコンに引き回されれており、国富をファンドに売り渡して、売国路線に明け暮れていたから、国力は衰え国民は貧しくなった。この時期に日本のGNPは中国に追い抜かれ、かつて世界の80%の生産力を持つと共に、最先端技術を誇った電子産業は、凋落して世界の生産規模の一割を切っていた。

栄枯盛衰は世の常で「驕れる者、久しからず」だが、上に立つ者が愚かだと力は急速度で没落するし、破滅を防ぐ人が現れない限りは、腐敗と解体が進む中で、国民は亡国の悲哀を味わうことになる。この時期に君臨したのは小泉と安倍の長期政権で、それを「ゾンビ政治」と名付けて、私は数冊の著書を出したが、活字にする出版社は皆無に近く、その多くは電子版による出版だった。

しかも、この時期に繁殖力を増やし政界に蔓延したのが、「靖国カルト」という集団であり、「創価学会」「統一教会」「日本会議」は、自民党に深く食い込み、カルトが政治を席巻したのである。その生みの親だったのが、満州国を作り上げてから、東条内閣で軍需次官を勤め上げ、A級戦犯になった岸信介で、反共思想を見込まれて、CIAとの取引で戦後に首相になっている。

妖怪と呼ばれた岸信介の娘婿である、安倍晋太郎が外相を歴任し、病没した後を引き継いだ安倍晋三は、統一教会の強い支援を受け、岸の孫として首相になり、3代続く政治一家を確立している。この世襲首相の安倍晋三が、7年8か月も政権を維持し、日本最長の記録を作ったのは、靖国カルトの支援に基づいた、多数派工作の賜物であり、自公連立は創価学会が支えていた。

それに並ぶ政治貢献は統一教会の選挙協力で、無名な泡沫候補者でも当選する秘策が存在するが、それを鈴木エイト記者は、『自民党の統一教会汚染』に次のようにレポートしている。

「…知名度の劣る人物が、当選を果たすカラクリはこうだ。統一教会の組織票を投入する候補者の選定は、まず『官邸に近い人物』、そして『当落予想では当選ラインに届かないが、統一教会の組織票六万〜八万票の上積みで、当選ラインに届く人物』という基準で選ばれた。そして、この二つのファクターを満たす人物が、二回の参議院選で不可解な当選を果たした。・・・」

選挙での協力の他に統一教会が使う手口は、国会議員の秘書として信者を無償で提供することであり、議員の政策に影響を与え、ビラ貼りや電話係などの雑用にまで、二世信者を動員している。ヒトラー・ユーゲントや毛沢東の紅衛兵を模倣し、洗脳された青少年を動員することで、政治活動に従事させる、全体主義が良く利用した手口が、安倍の長期政権を支えたのである。

小泉政権時代については、『Japan’s Zombie Politics』に具体的に書いたので省くが、2人のサイコパス政治家は虚言と無責任な暴政により、日本の社会を大きく狂わせた。陽性で暴君的な小泉はワグナーを愛好したし、若い頃には強姦事件でロンドンに逃げたように、代議士時代に自民党を壊すと叫ぶほど、暴れん坊の役を演じ切った、ムッソリーニ型の扇動政治家である。

それに対し、安倍は母親が妖怪と呼ばれた岸信介の娘の洋子で、晋三は幼い頃から拗ね者として育って小さな嘘を吐き続け、責任を取らなかった上に癇癪持ちであった点では、ヒトラーの小型版の系統に属す。評論家の野上忠興は評伝の『沈黙の仮面 』に、次のように主人公を描き上げ、安倍晋三の性格を浮き彫りにして、精神的な不安定性を論じている。

「・・・反対意見に耳を傾けることなく、逆に耳を塞いでしまう。テレビの報道番組に生出演した時などは、『キレる安倍』の姿がしばしば全国に放映された。…自信のなさが安倍をして、力づくの舵取りをさせ、早晩国民から手痛いしっぺ返しを受けるのでは、という予感を感じさせた」と書き、本の表紙には「何でも自分の思う通りに運ばないと、気に食わない我がままな性格」という、養育係の久保うめの証言も付け足す。

この証言に加え久保うめは養育係だから、幼児時代の安倍に関し興味深い習性を報告しており、甘えと我がまま振りが赤裸々に示されていて、性格分析の参考に使える。また、著者の野上の筆致は冴えて、「安倍は理論的裏付けなしに、プロパガンダとパフォーマンスで、突っ走る悪い癖がある」と書き、本の表紙の腰帯を使い、「愛に飢えた少年は『独裁者』になった」と決めつけている。

実際問題として安倍は未熟者で、閣僚経験もない状態だったが、小姓として小泉に可愛がられて、幹事長や官房長官の要職に抜擢され出世しており、自民党の総裁を手に入れた。この三段跳びの出世は奇妙だと言われたが、安倍が暗殺されたお陰で統一教会との関係が分かり、その謎が解けたことは「瓢箪から駒」の譬え通りで、奇跡的な成果であると形容できる。

実は日本の警察当局は、悪辣な霊感商法を使って信者に高い商品を売りつけ、収奪していた統一教会に対し手入れをしようとした時に、官房長官だった安倍が捜査を中止させ妨害をしていた。その傍証になる物としては、安倍が統一教会に祝電を送った記録が残っており、緊密さを示す証拠を提供するが、官房長官の安倍は祝電を送り足跡を残していた。

『東京新聞』の記事は2006年6月20日付けで、「統一教会系集会に祝電」と題した記事が存在しており、この時点での安倍晋三が官房長官だった事実は、腐れ縁の証拠として十分である。しかも『情報の裏を読む』に著者の有田芳生は、「…有力な総裁候補である安倍氏が、自らの判断であえてこの時期に統一教会系の集会に、祝電を打つことはないだろう」と書いている。

それを恩に着た統一教会は自民党総裁選挙の時に、信者を自民党員に仕立て上げ、安倍を総裁に当選させた上で、自動的に首相にするマジックを使い、安倍は首相になったのである。この関係は更に強まり、再起不能と言われたのに、2012年の総裁選では、安倍は石破茂(元防衛相)の強敵を破り、自民党の総裁になっているが、1回目の投票では2位だった者で、決戦で勝った例は56年ぶりだった。

しかも、前例は石橋湛山であり、破れたのが岸信介で、祖父のケースの逆だったし、1回目の党員投票の時に有力視された石原伸晃を破って、安倍が2位になれたのは、統一教会の策謀だと言われた。統一教会員の信者たちが党費を払い、自民党員になって安倍を2位にしたという話は、当時は都市伝説とされ葬られていたが、安倍の射殺で統一教会との癒着が露呈し、可能性が否定できなくなった。

長期政権を維持した小泉は後継者に安倍晋三を選び、未熟な安倍は閣僚経験がなかったのに、ゾンビ政体の継続を目指し、狼藉で乱れた宴席を引き受け、安倍は取りあえず総裁の椅子に坐った。その経過は『さらば暴政』の第2章に、「安倍の総裁選挙用に作った【美しい国へ】」と題し、そのお粗末さ加減を見破り、そのことを書いたので以下に引用する。

 

経験と指導性の上でも未知数の安倍晋三が、ドサクサ紛れに首相の椅子に座った理由は、自民党議員の人材が枯渇していた事実と共に、巧妙な宣伝工作を展開 したことが重要である。総裁選挙の2カ月前に安倍の政権構想とされる、『美しい国へ』と題した新書本を文藝春秋が発行した。そして、全国の本屋の店頭に平積みになったが、カバーに巻いた帯には安倍の顔写真がカラーで印刷されており、選挙ポスターとしての宣伝効果を狙っていた。メディアの注目を集めた作戦の採用で、安倍は顔写真の主として話題を集めたが、それを人気に転じたことにより総裁選挙に勝利したが、その辺を『ウィキペディア』は次のように紹介する。

「……2006年7月、小泉純一郎内閣の官房長官を務めていた安倍は、同年9月2日に予定されていた、自由民主党総裁選への準備運動として、自らの政権構想を記した 『美しい国へ』 を出版した。政治家による国民向けの、政権構想書としては異例の事として、この本は文藝春秋から新書版で出版され、日本全国の書店で平積みにされたため、多くの国民は『美しい国』 という言葉を眼にする事になった。

また、安倍は9月1日に総裁選挙への出馬で、正式に立候補する際にも『美しい国、日本』と題した政権構想のパンフレットを発表し、同党所属の国会議員に配布すると共に、一般国民に対しても広く公開した。安倍は党員の支持を集めていたため、事前の予測通りに総裁へ当選し、9月26日には小泉の後を継ぎ、内閣総理大臣に指名された。

以後、安倍は『美しい国』の創造を常に訴え、自らの政権の基本理念を指す用語として使用し続けているため、日本国民の間では『美しい国』が、安倍政権そのものを象徴的に示す言葉としても浸透している」。

・・・ 本のカバーや帯を著者の顔写真で飾ることで、選挙の宣伝効果を高めるというやり方は、アメリカ人が発明した選挙宣伝の一種で、マジソン街の広告会社が活用しており、選挙が近づくとこの手の本が大量に現れる。そして、ベストセラーということでテレビ番組が取り上げ、全国的な規模で話題が広まることにより、選挙結果に決定的な影響を与えるために、メディァ・ミックスの新しい選挙手法になっている。

しかも、選挙ポスターと同じように大量に印刷され、日本中にばら撒かれたことは疑いの余地がなく、この本の出版に政府の機密費が使われたかは、ジャーナリストが調べる必要がありそうだ。なぜなら、この本は大量に刷られてゾッキ本になり、アマゾンでは一冊一円で売りに出ているし、新古本特価のブックオフにも大量に流れていた。

現に、ロスのブックオフでも一ドルで山積みだったので、資料として使うために私も1冊買ったが、中身はゴースト・ライターが書いたと一目瞭然で、もっとマシな人物に執筆させることが必要であり、こんな幼稚で中身が空虚な本の著者が、一国のトップに立つとは悲劇だと痛感させられた。

それだけに、理性の片鱗も感じさせない内容であり、幼稚な所感を書き連ねている 『美しい国へ』 を読んで、私は思わずゲーテの言葉を思い出した。それはエッカーマンとの1827年4月18日の対話であり、『・・・理性的なものは常に美しいというわけには行かない。けれども、美しいものはいつも理性的か、あるいは、少なくともそうでなければならない.…』に全く反していたからである」。

しかし、これは導入に過ぎなくて、核心に当たる部分は次のような記述で、安倍が如何にパクり屋であり、統一教会の原理にかぶれた、軽薄な盲信者だと明白である。

「統一教会で活躍した経験を持ち、今では無関係に生きる人から聞いた話によると、統一教会を知るには太平天国を研究すれば、戦略について分かるというヒントを教わって、なるほどと納得したことがある。それは勝共連合の久保木会長の秘話であり、このヒントを手引きにして統一教会の教義を調べれば、安倍の本の背後に潜む意図が分かるのである。

安倍の本は題名からして実にいかがわしく、勝共連合の久保木会長の本から借用しただけでなく、それを下敷きにした事実が読み取れるが、その点を2006年9月14日号の『週刊現代』は、次のような記事として指摘している。

「 …… 安倍内閣が掲げた環境政策、『美しい国』もこれに由来している。なお、『美しい国』という題名は、世界基督教統一神霊教会(統一教会)の初代日本支部長を務めた、久保木修己の遺稿集として2004年に世界日報社から出版された、『美しい国 ・日本の使命』に使用されている。久保木は反共主義を唱える国際勝共連合の初代会長としても活動し、安倍晋三の祖父である岸信介や父の安倍晋太郎との関係もあった。

その事から、両者の本の関連性を指摘する声も上がっている。また、『美しい国』それ自体は、河野洋平が自由民主党総裁時代に、小沢一郎の『普通の国』構想への対抗として打ち出した、『美しい国』論を換骨奪胎したものに過ぎず、パクリであるという指摘が松田賢弥によってなされている。……」

このような形で安倍が首相になる工作として、情報操作が関与していたし、統一教会の強い支援もあったから、それが威力を発揮したお陰で、安倍晋三は天下人になった。また、ずいぶん古い話になるが、こんな体験をしたので紹介するが、幾ら新自由主義を語るにしても、安倍晋三の考えが付け焼刃であり、パクリであることを証明している。

「安倍の『美しい国へ』 は古本で一ドルだったから、買って損したという気にはならなかったが、内容がスカスカだから簡単に読み終えた。一つの発見はドーク先生の発言の引用であり、妙な再会に不思議な感じがしたが、1990年に娘と一緒にカレッジ訪問をした旅で、東部の大学めぐりを車でした時のことだ。

プリンストン大とジョンズ・ホプキンス大に続いて南下し、デューク大とノースカロライナ大のチャペルヒル校を訪れる途中で、甥がいたウェーク・フオレスト大に立ち寄って、私は偶然ドーク先生に出会い議論をした。日本文化の授業に使う必読文献としては、資料として何を読ませているかと聞いたら、高坂正尭などの京都学派の学者の名前を挙げた。

その後で『これから日本の近代について、一時間の授業をする予定だが、貴方に任せるから代わりにやってほしい』 とドーク先生に言われた。そこで明治維新から大正リベラリズムまでということで、日本の文明開化というテーマについて喋った。

『…… アメリカ人には理解が困難だろうが、日本の歴史の流れを知るための資料としては、丸山真男の本を読むことを勧めたい。それに対し、一見すると読みやすいが、高坂教授は典型的な御用学者で権力の走狗であり、私は彼をインテレクチュアル・プロスティチュートと考えている。京大には内藤湖南という世界に誇る学者がいて、内藤先生から学べるなら京都に留学を薦めたいが、既に亡くなって久しいので残念だ……』 と講義の中で喋ったら、生徒たちの目がらんらんと輝いたのを思い出す。

その後ウェーク・フォレスト大は東海大と提携したので、ドーク先生は日本に赴任して、国家主義の研究をしてから帰米し、イエズス会系のジョージタウン大の教授になった。彼はシカゴ大学で日本語と日本学を習得して、日本の超国家主義を研究テーマにしていたが、国家主義やロマン主義は危険な研究テーマであり、『ミイラ取りがミイラになる』ことが多い。

日本の狂信的な国粋主義に免疫力のない外国人は、それにかぶれる可能性が非常に高いし、ドーク先生の大学とヴァチカンとの関係だろうが、靖国カルトが嬉しがる発言を月刊『正論』に発表していたから、安倍は喜んでその記事を引用したのである。

安倍政権が日本の未来について論じる時に、決まり文句のように『美しい国』が登場して、新聞や雑誌に氾濫する『美しい』という形容詞が、いつの間にかビ(美)シイの響きを伴うので、ヴィシー政権の歴史が二重写しになる。

ヴィシー政権はフランスを占領したドイツが、第一次大戦の英雄ペタン将軍を首班にして、温泉地のヴィシーに親ナチスの政権を作り、エリート主義と位階制国家を掲げるとともに、この政権はヒトラー総統に対して忠誠を捧げた歴史がある。ヴィシー政権のモットーは『 国家・家族・労働』であり、正規の立法手続きの代わりに政令が日常的に使われ、『祖国の美しさ、偉大さ、継続性』を強調したが、ここに安倍と同じ『美しい』という言葉がある。

そして、ナチスと組んだヴィシー政府は愛国主義を掲げ、国家への忠誠と奉仕を煽ったが、ネオコン思想にかぶれた安倍政権は、『美しい』を『ビ(美)シイ』と響かせて繰り返し、日本に満州レジームを築こうと画策したのである」。

それにしても、統一教会がその後改名して「統一家庭連合」に変え、安倍を広告塔に使ったことが、安倍射殺の原因だったと警察発表で知ったが、自民党のヴィシー政権化は歴史の相似象の典型である。

(藤原肇著『安倍晋三の射殺と三代の腐れ縁』の第一部より転載 )

 

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藤原肇 藤原肇

フリーランス・ジャーナリスト。『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』『日本に巣食う疫病神たちの正体』など著書多数。海外を舞台に活躍する。

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