【特集】9.11事件の再検証

必要な9.11の再検証―世界に遺族を増やさないために―

藤田幸久

1.第2の9.11を起こさないためのアフガニスタン支援

私は2008年1月10日参議院外交防衛委員会で、9.11米国同時多発テロに関する疑問点について福田康夫首相ほかに質問しました。当時国会では、政府の「新テロ対策法案」に対して、野党民主党はいわゆる「アフガン支援法案(テロ根絶法案)」を提出していました。「真の和平実現のために、民生人道支援を行うことがアフガニスタンの真のテロ撲滅につながる」との主張でした。

福田康夫首相、高村正彦外相、石破茂防衛相、額賀福志郎財務相に質問

 

参議院外交防衛委員会における藤田幸久の質疑議事録 | 藤田幸久 | ふじた幸久|ウェブサイト (y-fujita.com)

 

またこの質問の画像が世界に流れたことから、2008年2月に欧州議会で講演しました。

ジュリエット・キエザEU議会議員、デヴィッド・グリフィン教授と講演(2008年2月26日EU議会議場で)

 

欧州議会で講演。9.11映画の試写会開催 | 藤田幸久 | ふじた幸久|ウェブサイト (y-fujita.com)

 

私の質問の原点は2002年9月11日に「明るい社会づくり運動」などを中心に東京の芸術劇場で開催された「9.11愛と希望のコンサート」でした。

小山宙丸実行委員長(元早稲田大学総長)は「アフガニスタンでは9.11の報復として戦争が開始されました。この国では度重なる戦乱によって数百万の人々が亡くなり、そして今も亡くなっています。平和に暮らす日本人が手を差し伸べる義務があります」と訴えました。私は同年6月にアフガニスタンを訪れ、コンサートの収入で現地のNPOに小学校を建設してもらうプロジェクトを決めていました。

 

その後、一人息子の敦さんを9.11で亡くした白鳥晴弘さんと出逢いました。息子を殺したビンラディンに会いたいとアフガニスタンを訪れたが会うことができず、彼あての手紙をカタールのTV局アルジャジーラの支局に手渡しました。

「私は米国が絶対の正義だとも思わない。しかし、息子はあなたが起こしたテロで殺された。あなたの本音を聞かせてほしい」という趣旨の文面です。

米国の「報復」を受けたアフガニスタンの子供たちは、「復讐」に燃えていました。爆弾で足を無くした男の子に「君の前に同じ年頃の米国人がいたらどうする?」と聞くと、「同じ目に遭わせてやる」と答えました。「憎しみの連鎖、第2の9.11を起こしてはならない」と、白鳥さんは毎年のように子供支援のプロジェクトを行ってきました。無償で提供を受けた土地での浄水場、図書館、職業訓練施設などです。

 

2.日本人犠牲者24名の遺族に冷たい日本政府

もう1人の日本人犠牲者、住山陽一さんのご両親、住山一貞さんご夫妻とも出逢いました。ご夫妻は毎年9.11の日に現地を訪問し、様々な企画を行っています。息子を失った米国人の詩に住山さんが曲をつけた歌のコンサートの開催や犠牲者家族が集めた「折り鶴」の追悼施設への寄贈などです。

日本人24名が犠牲になったご遺族の方々に対する日本政府の対応は冷たいものでした。ご遺族は、渡航費、ホテル代に加え補償請求書類などを翻訳する通訳も探さざるを得なかった。日本大使館は米国政府からの英語の膨大な資料を遺族に手渡すだけで、ご遺族に対する説明会も一度も開催しませんでした。

実際9.11直後の国会で小泉純一郎首相は、ご遺族に対する支援に対して「本件テロ事件について国家が補償する制度は、現在存在しておりません」と答弁しました。

私は「拉致問題では政治家が動いたが、9.11に関しては誰も動いていない。拉致問題は忘れられていないが、9.11被害者家族は無視されている」との声をご遺族の方から直接聞きました。

3.海外での日本人犯罪被害者に弔慰金支給の開始

そこで、私は2008年10月の参議院本会議で河村建夫官房長官と中曽根弘文外相に以下の質問をしました。

米国では9.11を契機に国際テロ被害者費用補償制度を設立、国外でテロの被害に遭った米国民は、死亡補償金、医療費、対物損害、葬儀埋葬代、精神面のケアなどの補償が受けられる。日本においても早急にテロ被害者を救済する制度を創設すべきではないか。

これに対し、河村官房長官は「遺族から要望があれば、可能な限り遺族の支援にあたりたい。海外でのテロ被害者については、特別措置法を迅速に制定する」と答弁し、同日午後の記者会見で「欧米諸国は既に制度を持っている。早急に検討に入るよう命じた」と決断してくれました。

しかし、その後政権交代などもあり、法律制定までには至りませんでした。そこで私は超党派の議員グループを結成して、9.11被害者家族の皆さんや、グアム島の無差別殺傷事件で死亡した茨城県潮来市の横田仁志さんの奥さま、チュニジアで被害に遭ったご家族からのヒアリングなどを国会で開催しました。

その結果2016年6月に「国外犯罪被害者弔慰金等の支給に関する法律」が成立しました。海外での犯罪被害者にも、死亡で200万円、重度障害者で100万円の支給が確定しました。まだまだ不充分ですが、大きな前進でした。

4.真相究明運動の中心は米国の被害者家族

9.11以後のブッシュ政権及び議会は、調査がテロとの闘いの妨げになるとして独立調査委員会の設置に反対しました。それを突破して、1年過ぎの2002年11月に独立調査委員会が設置されたのは、殉職したニューヨークの消防士の夫人たちなど多くの遺族の要請によるものでした。

その後も、ご遺族が様々な究明活動の柱となっています。そのきめ細かな活動を2021年11月に英国の国営放送BBCが紹介しました。①9.11で父親を亡くした子供たちの支援団体「Tuesday’s Children」(9.11は火曜日だった)で働く、殉職した消防士の息子さん、②父を亡くし「Since 9.11」という団体で、事件やその原因を子供たちに教えている男性、③飛行機が突入したグラウンド・ゼロのほこりの中で撤去・清掃をしていて肺を患った父を支援するコンサートを開催している女性などです。

この危険なほこりを吸い込みながら人命救助をしていて健康障害で苦しむ消防士や警察官の状況を、日経ビジネスが2019年9月に報告しています。

 

その数は7万人以上に膨らみ、うち700人以上が呼吸器や消化器の病で、600人以上ががんで亡くなっている。「ファーストリスポンダー」と呼ばれたこれら消防士や警察官は救済者であると同時に被災者である。トランプ大統領は同年7月にファーストリスポンダーへの賠償金の支払い期限を無期限とした。これら数百億ドルに、ジョージ・ブッシュ政権が始めた『対テロ戦争』の防衛費を加えると、テロが米国経済に及ぼしたマイナスの影響は数兆ドルに上ると言われる。

 

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藤田幸久 藤田幸久

水戸一高、慶大卒。初の国際NGO出身政治家。世界52カ国を訪問。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣として10年ぶりに医療・介護予算を増額。民進党次の外務大臣、民主党国際局長、横浜国立大非常勤講師、等歴任。現在国際IC日本協会会長、岐阜女子大特別客員教授

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