【特集】9.11事件の再検証

必要な9.11の再検証―世界に遺族を増やさないために―

藤田幸久

5.ウクライナと9.11の共通点

9.11とロシアによるウクライナ侵攻には幾つかの共通点が見られます。

①第1の共通点は、北大西洋条約機構(NATO)による集団的自衛権です。NATO第5条は加盟国が1国でも攻撃を受けた場合、これを加盟国全体への攻撃とみなして反撃できる集団的自衛権行使の規定です。

2022年11月15日にロシア製ミサイルがポーランドに落下し緊張が高まりました。ロシアの攻撃ならば第5条の発動となり、米ロによる第3次世界大戦の可能性まで囁かれました。米国のバイデン大統領などがその否定に躍起となり、結局迎撃したウクライナ軍のミサイルであることが明らかになり事なきを得ました。

NATOが歴史上において第5条を発動したのは米国が攻撃されたとみなした9.11しかありません。NATO第5条が、多国籍軍によるアフガニスタンや大量破壊兵器が存在しないことが後に証明されたイラクへの攻撃のお墨付きを与えたのです。

9.11はウクライナ・ロシア戦争以上に軍事的意味が大きかったとも言えます。

②第2の共通点は、世界的な戦線と兵器の拡大のスタートとなったことです。9.11後「テロとの闘い」の大義名分のもとNATOが「悪の枢軸」と認定した国々やグループに対する戦線が拡大し、攻撃兵器の軍備拡大が続きました。

他方、ロシアによるウクライナ侵攻後は、戦争が攻撃兵器だけではなく食料、エネルギー、金融などによる戦争へと拡大しました。また、これまでの攻撃兵器から、宇宙、サイバー、無人機、AIやSNSなどの「兵器転用」へと拡大しています。

しかも、ロシアの民間軍事会社(PMC)の表舞台への登場に加えて、アメリカ企業によるウクライナのドローン活用支援や市民によるロシアへのサイバー攻撃支援なども出現しています。「軍」と「民」の境界を越えた戦争の始まりです。

③第3の共通点は、誰もが目撃者と発信者に同時になれることです。9.11記念博物館のチャニン氏は2022年9月、「9・11は、誰もが目撃者と発信者に同時になる最初の大事件だった」と東京新聞に語っています。

ウクライナでは、宇宙やドローンなどによって世界全体が目撃者となり、市民が「軍」と「民」の境界を越えて発信者となる時代に突入しました。今後、戦争犯罪の検証が、目撃者や映像などよって大きく進むと思います。

これに比べて、9.11の多くの物証の科学的検証はまだまだ不充分です。

6.必要な9.11の資料提出と科学的調査

真相究明運動の中心は米国の被害者家族です。遺族の皆さんが納得せずに運動を続けているのは、以下のように公開されていない情報があまりに多いからです。

①独立調査委員会のキーン委員長自身が「ホワイトハウスや中央情報局(CIA)などからの十分な情報開示が得られなかった」と述べた。

②ユナイテッド航空機が墜落したとされるペンシルベニア州の草地の現場は、8年経っても遺族以外は立ち入り禁止であると、2009年に共同通信の記者が伝えた。

③2004年の独立調査委員会報告は世界貿易センター第7ビルの崩壊の事実について一切言及せず、米国国立標準技術研究所(NIST)が2008年に報告を提出した。

しかし、2021年12月にワシントンDC地方裁判所は、NISTと連邦緊急事態管理庁(FEMA)に対して世界貿易センターの倒壊に関する建物性能調査に使用されたデータの開示を認める判決を下した。世界中の約3500人の建築家がNISTの報告書に疑問を呈している。

第7ビルは、飛行機が突入していないにもかかわらず、真空状態で物体が降下するようなスピード(6.5秒)で、ビル全体が原型のまま落とし穴に吸い込まれるように、ツインタワー崩壊数時間後に崩壊した。以下が映像です。

 

④2001年9月23日の『ワシントンポスト』紙は、欧州財務大臣・中央銀行総裁会議で「ドイツ連邦銀行のヴェルテケ総裁が9.11以前に航空会社や保険会社の株式や、金や原油市場の大規模な取引きがあり、これらはテロを事前に知っていて行われたことを示唆する疑わしいものであったと述べた。会議の議長であるベルギーのレインダース財務相はEU諸国が疑わしい取引を特定するために調査している」と報じた。

欧米のメディアによれば、9.11直前の数日間に、後にハイジャックされたユナイテッド航空とアメリカン航空などに対する大量の「プットオプション」が購入されていた。

株を借り、その後に安い価格で買って貸し手に返すという「空売り」で、株が暴落した分だけ儲かるインサイダー取引である。シカゴのオプション取引所を初め、ドイツ、イギリス、香港、日本などでの購入があったとされる。2つの航空会社の株価は9月17日に43%と39%と下落し、オプション購入者は150億ドルあまりの利益を上げたと報道された。

私は2008年2月にイギリスのロンドンでドイツ中央銀行のヴェルテケ総裁と2人で会いましたが、プットオプションは誰が購入したかを銀行の調査部が確認しているので間違いないとの答えでした。

ドイツ中央銀行ヴェルテケ総裁(右)

 

2001年9月のドイツの週刊誌『シュピーゲル』は「アメリカ証券取引委員会に加えて、日本の証券取引監視委員会がビンラディンの異常な取引行為を調査すると発表した」と報道しました。しかし、示し合わせたように以後各国からの情報開示はされていません。

7.「陰謀論」のレッテルを超えて必要な情報開示と検証

これ以外にも、遺族などが望む情報を各国の政府機関などが開示していないものが多数存在します。開示を阻む背景の一つが「陰謀論」です。情報開示進めようとすると、この人(達)は陰謀論者だとレッテルを貼って、動きを牽制してしまうのです。

私自身も幾つかのメディアから陰謀論者だとレッテルを貼られました。2010年4月にワシントンポスト紙の社説に実名入りで「反米的な議員」とまで書かれました。

正式な取材後の懇談の内容を歪めて書いた悪質な社説です。しかも、私の肩書の間違いを初め事実誤認も甚だしく、私は同紙に反論を送りました。

すると私の反論と、私を擁護してくれた米軍元捕虜テニ―氏の投書とを同じ日の投書欄に掲載してくれました。しかも同紙は「日本のステーツマンに関する、扇動的で、不公平な見方」という見出しまで付けてくれたのです!

フォード元欧州議会議員もワシントンポストに私を擁護する投書を送り、テニ―氏はさらに長い文を英字紙ジャパンタイムズに寄稿してくれました。これら私を擁護する投書などについては米国の「週刊NY生活」と雑誌「イミグランツ」が紹介してくれました。

しかし、国内の大手各紙は、私を批判した社説のみを報じ、私の反論などは報じなかったために陰謀論者というレッテルが印象操作として残りました。

【週刊NY生活】藤田議員が反論 ワシントンポスト紙社説に | 藤田幸久 | ふじた幸久|ウェブサイト (y-fujita.com)

【多文化情報誌『イミグランツ』編集長日記】違和感覚えるワシントンポストの社説 | 藤田幸久 | ふじた幸久|ウェブサイト (y-fujita.com)

私の9.11に関する国会質問以来14年が経ちますが、私に批判や反論をしてきた与党の国会議員は誰もいません。会議の席で私の質問を揶揄した議員が1人いるだけです。私の著書も当時の閣僚を含む国会議員の方々が読んで下さいました。

また、当時の自民党政権も様々な疑惑を察知して米国に国会議員を派遣して調査を行っていたのです。何より、その後も私は度々アメリカを訪問し、米国政府関係者はその都度私と会談してくれています。ワシントンポストの社説にも拘わらず!

 

東北学院大学の風斗博之准教授は「人間情報学研究」に2016年から2018年にかけて3回にわたり「真相究明運動と報道機関」という論文を寄稿しました。

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no05_05

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その第1回で風斗准教授は以下のように述べています。

 

9.11に関する米国政府の公式見解に対し、9.11真相究明運動と総称されるグループから多くの疑問・反論が提起されている。その中には合衆国政府機関が関与していたとする内部犯行説を主張するものもある。一方、これらの疑問や主張が新聞・テレビで報道されることはほとんどない。実証に欠ける「陰謀論」の一種として無視されているのが現状である。

報道機関として、「陰謀論」という言葉をそもそも使うべきではないだろう。「陰謀論」という表現は、真摯な議論に値しないと暗に示してはねつけるために使われる用語である。「陰謀論者」と呼ぶことでその人を非理性的で被害 妄想の変わり者という印象を与える。

報道機関として、「陰謀論」とまで彼らが呼ぶ、9.11真相究明運動でなされている疑問や主張を否定するのなら、その根拠をきちんと示すべきである。

タイム誌は2006年3月に「陰謀論は少数が唱える迷信ではない。明白な政治的事実なのだ」と述べている。

 

 

今後、ウクライナでの戦争犯罪の検証が、物証によって確実に進むと思います。9.11の物証の検証も、その意味からもますます重要です。戦争やテロを起こさせないこと、長引かせずに和平に持ち込むことが重要ですが、そのためにも、後で検証可能であることを知らしめることが抑止力となるからです。

テロや戦争で罪無く苦しむご遺族や子供たちを増やさないために。

関連動画:9.11事件の再検証がいまこそ必要!(藤田幸久元参議院議員、木村朗ISF(独立言論フォーラム)編集長)

 

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藤田幸久 藤田幸久

水戸一高、慶大卒。初の国際NGO出身政治家。世界52カ国を訪問。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣として10年ぶりに医療・介護予算を増額。民進党次の外務大臣、民主党国際局長、横浜国立大非常勤講師、等歴任。現在国際IC日本協会会長、岐阜女子大特別客員教授

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