【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第31回 次第にテロ国家に移行しつつある ウクライナ「欧州最大の原発ザポリージャをロシア軍が攻撃」という報道の怪!!③

寺島隆吉

特に後者の報告は、たまたまそのホテルに宿泊していたエバ・バートレット記者が、自分の生々しい体験を語ったものです。

彼女については『ウクライナ問題の正体2』の最終章(232頁)でも紹介しましたが、キエフ政権の「暗殺者リスト」にも載せられるようになった有名なカナダ人ジャーナリストです。

彼女は若い女性でありながら、勇敢にも自ら戦場に赴き、ウクライナ軍の非道な攻撃ぶりを詳細に報道してきました。このような事実に基づく報道を、いかにキエフ政権が恐れているかを
逆に証明しているように思います。

ドンバスに移住して、戦場からキエフ軍の非道な攻撃ぶりを報道し続ける、エバ・バートレット

https://youtu.be/tVZXiDcqFuo

このウクライナ軍の非道ぶりは、この戦争で戦死したドネツク軍司令官オルガ・カチュラの葬儀が行われていたドネツク国立オペラ・バレエ劇場を砲撃したことにも現れています。

*Moment of deadly Donetsk shelling caught on video(ドネツクでの破壊的砲撃の瞬間がビデオに収められた)

爆撃されて炎上するドネツクの市場(ショッピングモール)。これは「戦争犯罪」です。

 

(副題)
DPR officials say attack took place during the funeral of a military commander (ドネツク政府の高官によれば、この攻撃は軍司令官の葬儀の最中に行われていた)
https://www.rt.com/news/560207-ukraine-shelling-donetsk-funeral/ 4 Aug, 2022

ドネツク軍大佐であり、 ロケット砲兵師団の指揮官であった。

アメリカ軍はアフガンでもシリアでも葬儀や結婚式がおこなわれている会場を兵器で爆撃してきましたが、その指導を受けているウクライナ軍が、いかにもやりそうな攻撃の仕方です。

イラクでは、 民間人やジャーナリストの乗った車を米軍ヘリコプターが攻撃し、多くの死傷者を出しましたが、このような非道ぶり= 「戦争犯罪」に目を塞ぐことができなくなったブラドリー・マニング上等兵が、それを内部告発しました。

その内部告発を全世界に発信・報道したのが独立報道機関ウィキリークスでした。

ところがアメリカは、このような戦争犯罪を反省するどころか、マニング上等兵やウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジを牢屋に入れるという行動に出ました。いまアサンジはイギリスの超過酷な刑務所に閉じ込められたままです。

そしてアメリカは「一刻も早くアサンジを米国に移送しろ」と英国政府に圧力をかけ続けています。これが欧米が支配する世界の現実なのです。

このようなアメリカの指導でゼレンスキー大統領は現在の戦闘を継続しているわけですが、キエフ政権は病院 ・ 学校 ・ 劇場 ・ 市場などの公共施設を爆撃するどころか、最近はドローン(無人爆撃機)を使って butterfly mines「蝶型地雷」と呼ばれる地雷を、民間の居住地域にばら撒くという行動にまで出るようになりました。

次のエバ・バートレット記者による報道は、この「国際法で禁止されている駆虫散布式の対人地雷(PFM-1)による攻撃」の惨状を、つぶさに伝えています。他方、 欧米の報道機関は、このような実態に全く口をつぐんだままです。

The West is silent as Ukraine targets civilians in Donetsk using banned ‘butterfly’ mines(ウクライナがドネツクの市民を標的に、禁止されている 「バタフライ」 地雷を使用しても、西側諸国は沈黙を守っている。 )

(副題)
The use of PFM-1 explosives against civilians is prohibited by the Geneva Conventions–but this evidently isn’t stopping Ukraine(PFM-1 爆薬の民間人への使用はジュネーブ条約で禁止されているが、この条約は明らかにウクライナの行動にストップをかけていない。 )
https://www.rt.com/russia/560020-donetsk-butterfly-mines-geneva-conventions/ Aug 7, 2022、Eva Bartlett

この地雷の恐ろしさについてエバ・バートレット記者は次のように説明しています。

7月30日(土)午後9時過ぎ、ドネツク中心部を雷鳴のような爆発音が揺るがした。 その直後、「バタフライ(蝶)」 または 「ペタル(花びら)」 地雷を搭載したウクライナの発射したミサイルを、防空隊が撃墜したとの発表があった。

ウクライナ製のロケット弾には300個以上の地雷が仕込まれており、着弾に成功すればドネツク中心部は文字どおり地雷源と化す可能性があった。

ソーシャルメディアやテレグラムは、住民に屋内にとどまり、救急隊が道路や歩道を清掃するのを待つよう警告した。

この撤去作業は夜の間に始まった。しかし、夜が明けても、この小さな地雷はまだ何十個も残っていた。

「足を失うくらいなら仕事に遅刻したほうがいい」と、自宅待機の警告がさらに出された。(和訳は寺島、 以下同)

バートレット記者によると、この砲撃があった後も、ウクライナ軍は砲撃を続けています。どうしても外に出なければならない住民は、足元に注意し、草むらを避け、非常に慎重に歩くようにと勧告されている。

そこで礼拝に集まった人々はすぐに防空壕に避難したようですが、この攻撃による残酷さは、バートレットによって次のように説明されています。

ウクライナは数ヵ月前からドンバスでこの地雷(通称 「花びら」 )を使用していたが、 ここ数日、近隣に集中的に地雷を投下している。

当初は、 北部のキエフスキー、南西部のキーロフスキー、西部のクイビシェフキーといった、被害が大きい地区がターゲットとなった。

しかし、土曜日の夜には、ウクライナは遂にドネツクの中心部にも地雷を撃ち込むに至った。

中心部の道路や歩道、アパートの近く、公園など、地雷がいかに広範囲にわたっているかを記録するために、私は苦痛な作業に耐えなければならなかった。

この地雷が散乱している様子は、 次の写真を見てください。これは彼女が撮影してツイッターに載せたものの一部です。

この地雷の形容しようもない残酷さと、除去するにあたっての苦労は、気の遠くなるようなものです。少し長くなりますが、それを説明するために、もう少しバートレット記者からの引用をお許しください。

このような攻撃の結果、この「花びら」は広く分布しているだけでなく、たとえすぐそばに注意書きがあったとしても、見つけるのが非常に困難な場合が多いことが分かった。

その小さな形とくすんだ色は周囲に溶け込み、 注意してその場所を見なければ、 簡単に見逃してしまうからだ。

歩くときは、地雷を覆っている可能性のあるものを避け、草に覆われていない道路や歩道しか踏まないことを学ばねばならない。

最初に見た地雷の束には、チョークで丸が付けられていて、その前に警告の看板があり、車がその上を通らないように、人が踏まないようにと配慮されていた。

しかし、ここはドネツクの中心街で、近くにはお店や公園もある住宅地だった。この地域全体に「花びら」が散乱していた。

民主共和国軍の兵士たちは整然と作業し、地区ごとに撤去していった。しかし、数百個の地雷が街中に投下されたことを考えると、これは骨の折れる仕事である。

ドネツクの中心街だけでも、これだけの作業が必要なのですから、共和国全体では、どれだけの撤去作業になるでしょうか。なにしろキエフ軍は先述のとおり、北部のキエフスキー、南西部のキーロフスキー、西部のクイビシェフキーでも同じような攻撃を繰り返し、被害を大きくしてきたからです。

しかし、このような卑劣な手段を使っても戦況を好転させることができないので、原発攻撃という非常手段をとったのでしょう。

ところが調べてみると、このような地雷攻撃から原発攻撃に至る前に、化学工場を爆破して、ロシア軍に﹁化学兵器﹂を使ったと同じ効果を上げていることが分かりました。

というのは、 戦闘に参加していたロシア軍兵士に、 重度の化学物質に犯されて入院する患者が続出するようになったからです。それを調べてみると、猛毒のB型ボツリヌス菌が発見されたのです。

前著『ウクライナ問題の正体1・2』で明らかにしたように、ウクライナには46カ所にも及ぶ生物兵器研究所がありますから(しかもそのことを上院公聴会で、ヌーランド国務次官が認めているのですから、)ここで行われた研究が、 今回の戦闘で活用された可能性が十分あるわけです。

Russian soldiers in Ukraine hospitalized with severe chemical poisoning(ウクライナのロシア兵、重度の化学物質中毒で入院)

(副題)Traces of the toxin Botulinum toxin Type B have been discovered, the Defense Ministry says(国防省によると、 猛毒のB型ボツリヌス菌の痕跡が発見された)
https://www.rt.com/russia/561214-ukraine-chemical-poisoning-moscow/ Aug 20, 2022

しかし、このような細菌兵器による攻撃が暴露されたからでしょうか。今度はクラスター爆弾を積載したロケットで化学工場を爆撃し始めました。

こうすれば化学兵器を使ったのと同じ効果が得られるからです。しかも、このような攻撃は、これで2度目だというのですから恐ろしいことです。

*Ukraine strikes chemical plant – DPR(ウクライナは化学工場をロケットで攻撃)
https://www.rt.com/russia/561567-gorlovka-donetsk-chemical-attack/ Aug 25, 2022

そもそもアメリカがイラクを攻撃したときは、「フセイン大統領がWMD(Weapon of Mass
Destruction:大量破壊兵器)をもっているから」というのが、その理由でしたが、そのことが嘘だったことは、すぐにバレてしまいました。

しかし、もし化学兵器をもっていることが攻撃理由になるとすれば、キエフ政権も同じ理由で攻撃されても仕方がないことになります。

また、それが化学工場への攻撃に切り替えられたとしても、同じことです。

なぜなら、化学工場への攻撃は原発への攻撃と同じく、有害物質(細菌や死の灰)を周辺にばら撒くことになり、国際法に違反した「戦争犯罪」になるからです。

それはともかくとしても、ゼレンスキー大統領がこのような手段に訴えなければならないほど追い詰められていることだけは確かでしょう。

なぜなら、アメリカで開発された「狂人理論」「狂犬戦術」をさらに強化したのが、化学工場を爆破したり原発基地を砲撃する戦術だと考えられるからです。

ところが、この「狂人理論」「狂犬戦術」をさらに強化したのが、個人の暗殺です。これは既にウクライナ国内では頻々として起きていますが、今ではそれが国外でも実行されるようになりました。その典型例が、 「有名な哲学者」の娘を自家用車に乗ったまま爆破する事件でした。

これについても書きたいことは多々あるのですが、もう十分に長くなりすぎていますので、今回は、ここで断念します。どうかお許しを。

(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体3—8年後にやっと叶えられたドンバス住民の願い—』の第5章から転載)

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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