【特集】ウクライナ危機の本質と背景

改めて検証するウクライナ問題の本質 :Ⅵ 忘れられたドンバスの苦悩(その3)

成澤宗男

疑われる米国の関与

繰り返すようにウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーが21年3月に署名した「大統領指令117号」には「一時的に占領されている領土であるクリミア自治共和国とセヴァストポリ市の占領回復と再統合戦略」を実行せよと命じているが、この「一時的に占領されている領土」として、ドネツクとルガンスクも言及されている。

当然、この二つの共和国も「占領回復と再統合」の対象にされても不思議ではない。

またバスリンは2月19日、「ドネツクの諜報機関がウクライナ軍の侵攻計画を入手した」と発表。それによると目的は「ドンバスからのロシア系住民のロシアへの追放と、ドンバスの完全支配」とされ、三方面から侵攻し、5日間で作戦を完了させる予定であった(注5)というから、ウクライナ版「嵐作戦」とでも呼べよう。

しかしウクライナは2014年以降、何度か実行した制圧作戦に失敗した以上、単独だけでは荷が重いのは明白だ。そこで、最大の支援国となった米国との何らかの協議があっても不自然ではなく、ドンバスへの攻撃計画もウクライナの一存で決定したとは考えにくい。

実際、1月18日の段階で、「ドネツク・ルガンスク両共和国の代表は、ウクライナ政府の米国の命令による挑発を非難しており、両共和国に対する敵対的な作戦に対して準備していると述べた」(注6)と報じられている。

旧ソビエト連邦のKGB第一総局(対外諜報担当)の後継機関であるロシア対外情報庁(SVR)長官のセルゲイ・ナルイシキンも昨年11月30日、ロシアのテレビ局ロシア1のニュース番組で「米国はウクライナに東ウクライナでの紛争を煽り立てようとプッシュしている」(注7)と発言している。

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成澤宗男 成澤宗男

1953年7月生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。政党機紙記者を経て、パリでジャーナリスト活動。帰国後、経済誌の副編集長等を歴任。著書に『統一協会の犯罪』(八月書館)、『ミッテランとロカール』(社会新報ブックレット)、『9・11の謎』(金曜日)、『オバマの危険』(同)など。共著に『見えざる日本の支配者フリーメーソン』(徳間書店)、『終わらない占領』(法律文化社)、『日本会議と神社本庁』(同)など多数。

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