【特集】ウクライナ危機の本質と背景

改めて検証するウクライナ問題の本質 :Ⅵ 忘れられたドンバスの苦悩(その3)

成澤宗男

CIAがウクライナ軍を訓練していた

米国からの「命令」や「プッシュ」が具体的に何を意味していたかは、これらからではわからない。しかし少なくとも、ウクライナ軍に対し水面下でCIAの関与があった事実は明らかになっている。Yahoo Newsのサイトに1月24日と3月16日に掲載された記事で内幕が明るみにされているが、大要を以下羅列する。

  • オバマ政権時代の2015年以降、CIAの軍事活動を担う「特殊作戦グループ」 (SOG)を構成する4つの集団の一つである「地上班」(Ground Branch)が、「銃火器やカムフラージュ、偵察、情報通信」等の技術について米国内の秘密基地あるいはウクライナ国内で、ウクライナ特殊部隊らに訓練を施した。
  • その技術にはCIAの「情報戦の支援」という公式的な説明に反し、「いかにロシア人を殺すか」も含まれ、ロシアの侵攻後に占領された地域で、抵抗のための不正規戦を展開するとの想定の下に訓練が実施された。
  • 東ウクライナのドンバス付近での訓練内容は極秘となっているが、そこでのウクライナ軍の「善戦」はこうした訓練の成果として現在、認識され始めている。(注8)

つまり米国は7年以上前からすでに「ロシアの侵攻」を前提とし、ウクライナの「防衛」のためというよりは想定される占領後にウクライナ軍を非正規戦で戦わせ、駐留するロシア軍に消耗戦を強いるという戦略を立てていたと思われる。

したがって米国は、自身の意図をどこまで反映させていたかは別にして、ウクライナ軍が2月16日以降ドンバスのロシア系住民を攻撃して挑発し、結果としてロシアの介入を引き出したのは好都合であったはずだ。

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成澤宗男 成澤宗男

1953年7月生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。政党機紙記者を経て、パリでジャーナリスト活動。帰国後、経済誌の副編集長等を歴任。著書に『統一協会の犯罪』(八月書館)、『ミッテランとロカール』(社会新報ブックレット)、『9・11の謎』(金曜日)、『オバマの危険』(同)など。共著に『見えざる日本の支配者フリーメーソン』(徳間書店)、『終わらない占領』(法律文化社)、『日本会議と神社本庁』(同)など多数。

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